「トライアル合格」を最大の目標とする実務翻訳スクール
需要の高い専門分野別の講座でプロの実務翻訳者を養成

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1968年創立のILC国際語学センターは、仕事で使える英語コミュニケーション力の養成を目的として、証券金融翻訳やメディカル翻訳など、翻訳需要の高い専門分野に特化した英語教育を提供。各分野の第一線で活躍するプロの実務翻訳者が講義を行い、受講生一人ひとりの理解度に合わせた指導を行っている。コース終了後はワークショップを開催するなど、真の実務翻訳者の育成に力を入れている。

訪問クラス 証券金融翻訳コース

意見交換からお互いのスキルアップを図り、
よりよい成果物を生み出すことができるグループワークを実践

「証券金融翻訳コース」は、証券金融の基礎知識を身につける「概論パート」と、実務、あるいはそれに近いレベルの課題に取り組む「実践パート」に分かれており、証券金融の用語や概念をなぞるだけでなく、自分の頭で考えるためのフレームワークや、商品としての翻訳を仕上げるための基本動作を身につけることを目的としている。

「ここで学んで欲しいのは翻訳のプロセスです。翻訳に正解はありません。皆さんが正しい理解をした上で、自分のベストを尽くしてわかりやすい翻訳をしたものが、皆さんにとっての正解です。そこにたどり着くプロセスを、毎回しつこくやっています」

この日の授業は、最近のIPOに関する英文の新聞記事を日本語に翻訳していく演習の第2回目。手元にはA4に1枚半程度の英文と、受講生が分担して訳した日本語訳が配られる。おもしろいのは、受講生が事前にお互いの訳文について疑問や意見を提示し合い、それらをすり合わせた最終形を講師に「納品」することだ。受講生の意見はそのまま日本語訳の欄外に履歴として残してあり、その日本語訳に至った経緯も一目でわかる。こうして受講生同士の意見交換からお互いのスキルアップを図り、「集合知」としてよりよい成果物を生み出すことができるグループワークは、本講座の特徴の一つでもある。

いかに早く正しい情報に辿り着くか、という勘を養う

「今日のポイントは裏を取る、です」と菅原先生が宣言するように、授業ではとことん課題である英文の分析と、受講生の作った日本語訳の裏取りを実践しながら、より正確な日本語訳への道筋をつけていく。「mobile subscribersは『携帯加入者(契約者)』、marketは『(携帯)市場』と訳文にカッコが使われていますが、このカッコをつけた意味は?」

気になるワードは一つひとつ、「どうしてこう訳出したのか」を確認し、そこにたどり着くまでのプロセスの重要性に気づかせる。受講生は、「読んでいる方によっては、携帯の加入者より契約者という言い方のほうがしっくりくると思ったのと、市場のカッコは、携帯市場と書いた方がより親切だと考えたが、何の市場かはほぼ明らかなので、(入れても入れなくても)どちらでもいい、という意味でカッコに入れました」

菅原先生は、「訳す際に『もしかして』というのは常に考えるべきことで、読み手の立場になって考えることは重要ですが、よほどのことがない限りどちらか選んだほうがいい」とアドバイス。

「では、携帯『加入者』にすべきか、『契約者』にすべきか、迷った時には自分の主観で決めるのではなく、世の中ではどのように言われているのか、裏を取る必要がありますね。今からこれをやっていきましょう」

この「加入者か契約者か」問題と共にもう一つ、裏取りの俎上に上がったのが「Trailing KDDI and NTT docomo」というフレーズだ。受講生の訳文には「KDDI、NTTドコモに次いで」となっているところに、菅原先生が注目する。

「Trailing だけなら『両者が上にある』という意味なのでKDDIとNTTドコモをどの順番で並べても構いませんが、これを日本語で『○○に次いで』と訳すと、順位を意味することになります。では本当にKDDI、NTTドコモの順番でいいのか。これも裏取りの案件になりますね」

裏を取る、という作業で重要なのが、「いかに早く正しい情報に辿り着くか」で、そうした勘を養うことも証券金融翻訳者にとって大事な素養なのだという。裏取りのポイントは、「どのキーワードで検索するかを考える」、「どのデータが信頼できるかを見極める」、「元データがどこにあるかを探す」ことだ。そうして検索を進めた結果、今回の裏付けとなる総務省のホームページで「電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表」という元データの最新版を探し当てた。

「演習は、『こう訳した方がいいですね、なぜなら…』と状況証拠を見つけるような作業です。次にその反証を出して議論を重ねることで、より真実に近い文があぶり出されてくるんです」

ところどころでユーモアも交える菅原先生の説明は頭に入りやすく、2時間15分の授業はあっという間に過ぎていった。

講師コメント

「証券金融翻訳コース」 菅原栄先生 すがはら・さかえ  大阪大学経済学部修士課程修了、経済学修士。ニューヨークにてシェアソン・リーマン・ハットンに入社し、外国株式のセールス/プロダクト・マネジャーとして、ニューヨーク、東京の両拠点にて勤務。その後、元ゴールドマンサックスに転じ、米国株式の営業に従事、同社東京支店の外国株式部長を務めた経験を持つ。30年以上フリーランスの証券金融翻訳者として第一線で活躍する一方、現在は資産運用会社の最高投資責任者も務める。

「証券金融翻訳コース」
菅原栄先生
すがはら・さかえ

大阪大学経済学部修士課程修了、経済学修士。ニューヨークにてシェアソン・リーマン・ハットンに入社し、外国株式のセールス/プロダクト・マネジャーとして、ニューヨーク、東京の両拠点にて勤務。その後、元ゴールドマンサックスに転じ、米国株式の営業に従事、同社東京支店の外国株式部長を務めた経験を持つ。30年以上フリーランスの証券金融翻訳者として第一線で活躍する一方、現在は資産運用会社の最高投資責任者も務める。

延ばすべき長所と補うべき短所を意識させる
知識の共有化と翻訳品質の向上を図っています

本コースは、基礎と実践の大きく二つに分かれています。「概論パート」では米証券外務員資格(Series7)テキストを教材に、知識を暗記するだけでなく、有機的に関連付けて“体系”として理解することを重視しています。

一方の「実践パート」は、商品説明書、運用報告書、投資関連ホームページから経済論説、新聞記事などを使いながら、受講生が協働して課題に取り組むグループワーク方式を取り入れています。そうして徹底した議論と推敲を重ね、グループ全員の知能が集結した成果物を仕上げることで、知識の共有化と翻訳品質の向上を図っています。

授業を行う上で心がけているのは、個人に応じた指導でしょうか。各受講生に延ばすべき長所と補うべき短所を意識してもらうことに腐心しています。ほかのメンバーの強みを目の当たりにする一方、自分の力を奮うことが要求されるグループワークは、まさにそうした気付きの場でもあるのです。

証券金融翻訳のやりがいは、広く投資家の理解を深め、将来性のある産業への資金提供を助け、現在から将来世代の生活の安心や豊かさに資することによる社会貢献です。また、難解な内容を読み解き、それを読者に分かりやすい形で表現できたときの喜びは、翻訳の醍醐味と言えるでしょう。

証券金融はお金持ちの専有物ではありません。私たちの生活に密着した産業であり、その市場は、私たちの子孫の生活を豊かにするものを皆で考える公器です。その機能の一部を担うことに、皆さんも生きがいを見出してみませんか。