実務・出版・映像のすべてが学べる翻訳専門スクール
独自に築き上げたネットワークにより、高い就業率を誇る

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翻訳の専門校フェロー・アカデミーでは、翻訳の3大分野を学べる全日制の「総合翻訳科」と分野別の「単科」を併設している。各分野において、入門から上級までレベル別に講座を開講。現役プロによる指導とさまざまな翻訳関連企業とのネットワークにより、多数のプロを送り出している。総合翻訳科「カレッジコース」でもさまざまな就業サポートを実施し、多くの修了生が翻訳業界に羽ばたいている。

総合翻訳科カレッジコース「映画・ドラマ」

1つの長尺作品を教材に実践的な演習に取り組む

総合翻訳科カレッジコースは、実務・出版・映像という3大分野の翻訳をバランスよく学ぶ1年間の全日制コース。オールラウンドな基礎力を築いた上で、各自が選んだ専門性を実践レベルに高めていくカリキュラムとなっている。コースは前期と後期に分かれ、後期は興味に合わせて自由に選べる9つの選択科目が用意されている。今回はその1つ、「映画・ドラマ」を見学した。

このクラスでは長編映画を教材に、前半に吹替演習、後半に字幕演習を行う。講師を務めるのは、さまざまな映像作品の吹替・字幕翻訳を手がける井村千瑞先生。授業では毎回当番制で複数の受講生の訳文を取り上げ、じっくり検討していくという。

教材はサスペンス映画の名作で、この日の課題はホームパーティのシーンの吹替翻訳。訳文を検討する際、井村先生は翻訳した当人ではなくほかの受講生に役を割り振り、映像に合わせて台詞を読んでもらう。これには「自分が訳した台詞を人に読んでもらうことで、台詞が長すぎたり短すぎたりしないか、言いにくくないかなど、改善点に気づいてもらう」という狙いがあるそうだ。

読み上げが終わると、井村先生は1行1行丁寧にチェックしていく。まず取り上げたのは、キャラクターの口調。かつて師弟関係にあった2人の紳士が久しぶりに再会したシーンのやり取りで、教え子にあたるキャラの口調がタメ口になっていた。
「後半にこの2人が揉めるシーンがあり、そこはタメ口にしたほうがいいのですが、この時点では軽い敬語にしておくのが適切です」
ドラマの展開を考え、演出的な視点からなされた助言であり、とても説得力がある。

その後もさまざまな指導がなされていく中、興味深かったのは次の2つのコメントだ。
「『カッソーネ』と固有名詞を言われてもピンとこないので、『イタリア製の収納箱』としたほうがいいです」「spring lockを『バネ錠』と正確に訳されていますが、『ばねじょう』と聞いても何のことかよくわからない。たんに『カギ』でいいと思います」

「聞いてわかりやすいか」という視点は吹替特有のもの。実務翻訳などには通常存在しない。しかもこのケースでは、正確に訳すことより物のイメージを伝えることを優先している。吹替のポイントを知るとともに、他分野との違いにも気づかされ、翻訳の奥深さやおもしろさを感じずにはいられなかった。

台本の書き方を含め吹替の要点を丁寧に指導

台詞として自然でわかりやすいか。かけ合いはスムーズか。不快語を使っていないか。同じ言葉を繰り返したり、語尾が単調になっていたりしないか。そんな指導も目立つ。小説の会話の翻訳にも通じるものであり、出版翻訳の学習にも役立ちそうだ。

登場人物たちが映画話に興じるシーンでは、「話題にのぼっている俳優はみな実在しますので、allcinemaなどの映画サイトで日本語表記を確認してください」と井村先生。翻訳ではリサーチが重要と言われるが、素材が映画であっても、その鉄則に変わりはないようだ。

とはいえ、やはり吹替翻訳は独自性が強い。ただ訳すだけでなく台本の体裁に仕上げる必要がある。その点を踏まえ、井村先生は台本の書き方についても丁寧に解説。「ここは台詞がかぶっているので、かぶりマークをつけてください」「ここはしぐさと台詞がリンクしているので、『ジェスチャー合わせ』とト書きに入れます」などとアドバイスした。

印象的だったのは、何かあると映像に立ち返り、状況を確認しながら指導していた点だ。those first editionsを「そこの初版本を」と訳した受講生に対し、「映像では指を差したり顔を向けたりしていないので、『そこの』があると不自然です」と伝えていたが、これは「映像をもっとよく見ましょう」という先生のメッセージに思えた。

吹替翻訳について学びに満ちた2時間となったが、こうした専門性の高い授業を、カレッジコースの受講生たちはいくつも並行して受けている。本コースを通じて習得した翻訳の基礎体力と分野別の専門スキルがあれば、映像翻訳であれ、ほかの分野であれ、自信をもって歩んでいけるに違いない。

講師コメント

総合翻訳科カレッジコース 「映画・ドラマ」 井村千瑞先生 いむら・ちず 映像翻訳家。映画・ドラマなどの英日・仏日翻訳を幅広く手がける。主な作品に、映画『ムーンライト』『ビッグ・アイズ』『神様メール』(吹替)、ドラマ『NCIS:LA ~極秘潜入捜査班』(字幕)『スリーピー・ホロウ』(吹替)など。

総合翻訳科カレッジコース
「映画・ドラマ」
井村千瑞先生
いむら・ちず

映像翻訳家。映画・ドラマなどの英日・仏日翻訳を幅広く手がける。主な作品に、映画『ムーンライト』『ビッグ・アイズ』『神様メール』(吹替)、ドラマ『NCIS:LA ~極秘潜入捜査班』(字幕)『スリーピー・ホロウ』(吹替)など。

学校で出会った仲間とともにプロになった後も学び続けてください

このクラスでは、コース前半の必修科目で学んだ映像翻訳の基本ルールを確認しつつ、実践的なポイントを幅広くお伝えしています。プロの声優に受講生の訳を読んでもらうアフレコ演習も行いますが、毎年大好評です。

吹替では外国人があたかも日本語で話しているかのような自然な台詞が、字幕では情報を簡潔にまとめることが求められます。そういった翻訳をするには、話し言葉から四字熟語まで、幅広い日本語の引き出しを用意しておくことが必要です。尺合わせやリップシンク、字数制限という決まりごとを守りながら、いい台詞や字幕に仕上げるのは容易ではありません。でも、外国語がわからない人に外国の作品を楽しんでいただくお手伝いができるのは、とても嬉しく、やりがいを感じます。

映像翻訳に必要な日本語力を磨くいちばんの方法は、大ベテランのプロの方の字幕を書き写すことです。言葉のストックを増やせるだけでなく、使える言葉(差別語・不快語に該当しない言葉)を知ることもできます。

映像翻訳の現場では、当たり前のように翻訳の修正を求められます。それを素直に受け入れられないと、プロとしてやっていくのは難しい。その点、講師に訳文をチェックされたり、ほかの人と自分の訳を比較したりしていれば、独りよがりに陥らずに済みます。授業での経験は、柔軟な姿勢を育む意味でも役立つのではないかと思います。

プロになることが、ゴールではありません。キャリア15年の私でさえ、今なお日々勉強。デビューした後も、学校で出会った仲間と切磋琢磨し情報交換をしながら、ずっと学び続けていってほしいと思います。