Vol.2 アメリカ・カリフォルニア州 ブラッドリー純子さん〈コロナ禍の影響編〉

大型の会議では深夜・早朝の通訳も

遠隔通訳案件の種類は、少人数の商談から千人単位のグローバル会議までさまざまです。割合的に一番多いのは、50名程度が参加する業界別のウェビナーです。4~5名の少人数の商談や交渉は、逐次通訳で対応しています。

秋になって増えたグローバル企業や団体が開くオンラインの大型カンファレンスは、数百名から数千人の規模まで、北米、ヨーロッパ、アジア太平洋、各地域の時差を考慮して時間帯を分けて開催されます。時差に合わせてなるべくその地域に住む通訳者を起用しますが、どうしても早朝や深夜に同時通訳することも多くなっています。他州や海外への出張はなくなったものの、通訳者と時差との闘いは永久に続いています。

弊社では現場通訳と同じく、リモート通訳も逐次だと1名、同時だと2名で対応しています。ただ、1時間程度の会議であれば内容によっては1名で同時通訳をすることもあります。

自宅のマイオフィスに、コロナ禍で日の目を見なくなった卓上ブースを設置。防音効果だけでなく、ブースの中だと集中できる。

遠隔通訳のシステムは、余分なコストがかからないということもあり、Zoomの使用を希望するクライアントがダントツで多いのですが、Zoomの同通機能には交代ボタンやタイマーもなく、パートナー通訳の声も聞こえないようになっています。なので、さらに複数のアプリやツールを使わないと2名以上の同時通訳はできません。チャットアプリを併用して、カメラをオンにして手で合図を送ったり、クラウドタイマーを使用しています。RSI専用プラットフォームの場合は、インターフェイスにタイマー機能や交代ボタン、さらに他の通訳者とやりとりできるチャットルームが付いているので、交代もしやすいです。今年5月にローンチした日本生まれのRSIプラットフォーム、InterpreteXには、開発中に個人的に協力させていただいた「ブラッドリータイマー」がついています。他のプラットフォームより断然使いやすい通訳タイマーなので、ぜひ試してみてください。

遠隔通訳で一番大事なのは、想定外のハプニングが起きた場合も焦らず冷静に対応することだと思います。あとは完璧を求めすぎないこと。テクノロジーに頼った環境で仕事をするわけですから、ネットがダウンしたり、音が突然聞こえなくなるなど、様々なことが起こり得ます。もちろん通訳のパフォーマンスは常にベストをつくすべきですが、それ以外の自分でコントロールできない部分は、8割うまくいったら充分くらいの気持ちで臨むほうがよいと思います。

動き続けることで道が見えてくる

カリフォルニアでは感染者数の増加をうけて学校が閉鎖され、まだ完全に再開されていません。ハイスクールの子どもたちの学校は、少なくとも今年いっぱいはオンライン授業になりました。私も外での仕事や出張がなくなったので、家に居る時間が増えました。バックヤードで家庭菜園をしたり、娘とパンや料理を作ったり、一緒に絵を描いたり、普段は時間がなくてできないことを家族で楽しむ時間ができたのはよかったです。

夏の週末は避暑地のレイクタホでプチ休暇。

サクラメント郊外に住んでいますが、自然が多い街なのでコロナ禍でも特にストレスなく過ごせています。夏の間は週末に避暑地に遊びに行ったくらいで都会に出向くこともなく、レストランでの感染も多いようなのであまり外食もせず、活動範囲がめっぽう狭くなりました。毎朝20分のランニングと星を眺めながら入る庭の露天ジャグジー、そして労働後の一杯のビールがリフレッシュ方法です。

コロナ禍で学んだことのひとつが「どんなことがあっても仕事の流れを止めない、停滞させない」ということ。誰でも仕事が入ってこなくなると不安になるし、世の中の状況が一向に悪くなる中で気持ちが沈むこともると思います。でも落ち込んだ時こそ、あえて身体を忙しくして何かに取り組んでみると、前に進むことができると感じています。あとは、通訳者の協会やコミュニティに入って仲間をつくることが大切だと思います。弊社でも「EJ Café」という受講生対象のコミュニティを立ち上げています。

コロナによって通訳者にもリモートという新しい働き方が広がり、需要も高まっています。ピンチはチャンスと捉え、お互い走り続けていきましょう!

 

(『通訳・翻訳ジャーナル』2020年秋号より転載)

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