
訳者・田中亜希子さん『詩人になりたいわたしX』
『詩人になりたいわたしX』
エリザベス・アセヴェド 著 田中亜希子 訳 小学館
出版社HP Amazon
詩が米大統領就任式での朗読で注目を集める今、絶好のタイミングで、詩でつづられたYA作品をお届けします。
主人公は十五歳の女の子、シオマラ。NYのハーレムでラティーノが多いブロックに住んでいます。生まれも育ちもアメリカのシオマラは、ドミニカ移民の両親をもつ二世。父をパピ、母をマミとスペイン語で呼ぶなど、その暮らしにはドミニカ文化が入りこんでいます。
無口なシオマラが、心のなかを吐き出す唯一の場所が、ノートでした。気持ちを詩にして書いていたのです。そんなシオマラがスポークンワードポエトリー(詩を覚えて人前で語るというパフォーマンス・アート)に出合います。自分の詩を語るなんてムリ! すぐにそう思ったシオマラですが、新しい世界にどんどんひかれ……!
物語はシオマラの詩という形をとって時系列に進んでいきます。ときには、それは俳句になったり、ノートを縦・横・斜めに自由に動いたり、詩対詩のバトルになったり! 翻訳ではそうした形にも気を遣いましたが、何より、YA世代から楽しめる詩の本を目指して試行錯誤しました。
家族との確執、スポークンワード、恋などなど、YAらしい苦さやきらめきがつまったすてきな本です。ぜひ!