Vol.22 ちゃんぽんハーフ女子たち
/通訳者 根本佳代子さん

「Mummy、look! このhouseに入ってjumping up and downしちゃった~」
どこかの芸人かと思うようなちゃんぽん発言の長女。娘たちの日本語教育をどうしようかと思っていた矢先、いきなり東京で単独子育てをすることになった2010年末。当時長女4歳、次女2歳、インターナショナルスクールでは2学年差、日本の学年では年子になるハーフ娘たちと、10年暮らした大阪からベルギーに引越し、たったの半年で帰国した。
それまでは元夫の意向もあり、インターナショナルスクールに通うものと考えていた。当然、日本語をどうやって学年相当レベルに高めていくかということに関心があった

日本語教育をどうしようかと思っていた頃

中途半端な「無言語-alingual-」はさけたい

東京のアフタースクールにて

教えていたインターナショナルスクールの生徒たちは、日本人でも(いわゆる)ハーフでも、英語でしか本を読まない子どもたちが多かった。第一言語が英語なのだ。しかしその英語力も深い思考ができるレベルまでは高められていない生徒もいた。そんな状況を目の当たりにし、日本語を習得することの難しさは身に染みて感じていたし、最悪のケースとして何語も中途半端な「無言語-alingual-」に育ってしまう危機感も感じていた。
一方で、完璧なバイリンガル-ambilingual-に育った成功例も多く見た。ambilingualに育てるには親の粘り強い日々の教育が必要不可欠であり、発育過程ではどの言語もネイティブと比べ、遅れがちになりやすい。しかし複数言語を真の意味でマスターすることは可能なのである。
複数言語マスター法の一つとして、多くの欧州・北欧諸国では教科教育と言語教育の統合的学習 CLIL (Content and Language Integrated Learning)が取り入れられている。
CLILの定義は、「教科教育を中心とした学習に言語学習を統合させ、二言語使用に焦点を当てた教育的アプローチ」であり、「内容言語統合型学習」と訳されているようだ。柔軟な脳を持つ子どもは7カ国語までくらいなら無理なく習得できるとも聞いたことがある。言語の習得に関しては、陸続きでありながら異言語を話す異民族が暮らす欧州・北欧諸国に学ぶ点が多そうだ。

 

とりあえずはインプットするしかない

教育学的には前述の通りであるが、さて我が娘たちに話を戻そう。
環境がガラリと変わり、シングルマザーとなった私の元で日本の公立小学校へ進学することになった娘たち。
状況が変わった今、日本語力ではなくどう英語力を維持し発展させて行くかが課題となった。幸いなことに長女の小学校進学と時を同じくしてインターナショナルスクールの運営するアフタースクールが自宅の目と鼻の先に開校した。公立の学童保育ではお迎えの時間に間に合わないという裏事情もあり週5日、19:00まで通わせることにした。夕食付きで21:00までの延長も可能だ。これぞまさに渡りに船。
普段ネイティブの英語に触れる機会がめっきり減ってしまった娘たちには最良の環境。とりあえずは英語を引き続き習得-acquire-する環境が整った。アクティビティにも積極的に参加しShow and Tellなどの活動を通して人前でプレゼンすることも学んだ。

 

「Uh-Huh! 今まで何を勉強してきたんだろ」

3年生と4年生の頃

しかし時と共に圧倒的に日本語が優勢になった娘たちは英語をネイティブの先生から習得-acquire-するだけでは不十分になった。学習-learn-しなければならない時期が来たことを小学校4年生くらいから感じ始めた。
そこで通訳者でもある日本人の先生にマンツーマンで系統立てて英語を教授していただく方針に転換した。
今までは半ネイティブ的な感覚で話せていたところに文法的な解説が加わったことで「なるほど~、そういうことか~」という瞬間を沢山経験し、さらにスペリングや語彙力も強化していただくことで、小学校卒業までに長女は英検2級、次女は準2級を取得。中学受験では帰国生枠の適応はないものの、英検保持者枠で思わぬ恩恵に浴することとなった。

 

見た目とのギャップ

なんだか順風満帆に聞こえるかもしれないが、実際どれくらいの英語力かと言うと哀しいもので、映画やドラマは字幕なしでは厳しいレベル、突然外国人に話しかけられればとりあえず笑顔でごまかすレベルと言えばわかりやすいだろうか。ハーフの顔してちょっと残念。しかしいまだになぜか英語から直訳したような変な日本語を話すことがある。「ママは最近愛情を示してくれない。最後に私をハグしたのはいつ?」などという。普通の日本人の子は言わないだろうな、と思う。

 

あとは自分たちでよろしく

パソコンを通じて通訳することが夢だった頃の長女の作品

モデルとしての活動も始めた長女は、改めて英語の必要性を感じている。今の時代、撮影クルーが英語話者という現場もあるのだとか。インスタ発信も英語が必要。2人とも中学生で短期留学、高校では長期留学させようと思っている。ここまで英語の素地は整えたのだから、単身で英語圏に出てしまえばなんとかなるだろうと楽観的に構えている。自分たちが何者なのかアイデンティティも探しておいで。ママはここまでできることはやったからね、あとは自分たちでなんとか努力してよねと言いたい。そして「ママ、Englishで話さないで!」と言ったことを後悔する日が来るだろう。
娘たちは、ハワイに行けば英語を話せない日本人を「ダサい」と感じ、アジアのリゾートでホテルのスタッフに英語でクレームをまくし立てる母に唖然とし、パリでは東京から来たと言ってもお前は日本人じゃなかろうと言われ、日本人英語「Japlish」には拒否反応を示すようだ。Ambilingualにはなれないかもしれないが、ツールとして英語を使いこなし、それぞれの夢に向かって未来へと羽ばたいてもらいたい。