第4回 守りの派遣翻訳、攻めの映像翻訳

挑戦の土台作り

通訳ガイド業で収入源を分散するのはいいが、一家の大黒柱として総収入を減らすわけにいかないどころか、ライフステージ上、増やしていかなければならない。攻めの一手が必要だ。それには、まず守備固め。安心して攻撃に出るための土台を築かなければならない。

そこで考えたのが、派遣社員として給与所得を確保すること。フリーランスから派遣社員というとカッコ悪い気もするが、久しぶりに会社で働くのもおもしろそうだ。この際、フリーランス、法人(合同会社)代表、派遣社員と、翻訳者としての働き方もコンプリートしてしまおう。そう思って探し始めてみるも、希望に合う仕事はなかなか見つからなかった。

週2、3日で遅めに出勤、早めに帰りたいのに、そういう募集は非常に少ない。「同一労働同一賃金」なんて実現しなくていいから、正社員みたいな働き方を求めないでほしいものだ。世の中、正社員になりたい人ばかりではない。短時間しか働けない人、働きたくない人もいるわけで、そういう人材を活用できるような勤務条件にして、量的に不十分なら募集人数を増やせばいいのに。

ようやく見つけたマッチする仕事の紹介元は、通訳・翻訳専門の派遣会社だった。その前に、大手派遣会社に1件問い合わせていたが、既に決まっていると言われて登録だけさせられた。どうもインチキくさい。一方、こちらの仕事は実際に募集中だった。大手に登録した際は翻訳力チェックみたいなものはなかったが、ちゃんとトライアルもあった。何だか安心できた。3カ月限定で週3日、海辺のビルの高層階で10時から16時まで勤務することになった。

カフェテリアから(天気が…)

 

そうやっていろんな企業を渡り歩いてみたらおもしろそうだと思っていたが、かれこれ1年、週1日に減らしながらも居座り続けている。派遣翻訳ならではのやりがいも見つけた。周囲の社員さんから次々と仕事を頼まれ、納得のパフォーマンスで応えなければならない。英語力の高い人も多い。社内用語を含め、すぐそばのエンドユーザーに不明点を聞けるので、真に役立つ文書を作れているという実感が持てる。エージェント経由だと、これが難しいこともままある。専門性の蓄積という意味でも良さそうだ。

ただし、通勤は大変だ。眠たい時に寝られないのもつらい。出勤をさらに30分遅くしてもらったり、好きな時に昼休みを取って仮眠できたりと、自由にさせていただけて助かっているが、そうでなければ続かなかったかもしれない。

反撃開始

さて、守備を固めたところで新規開拓を。せっかく新しいことを始めるならおもしろい仕事がいい。なおかつ、機械翻訳の影響が及びにくそうな方向へシフトしたい。そう思っていた矢先、某翻訳者募集情報サイトでネット配信系の字幕翻訳の仕事を見つけた。

映像翻訳への参入障壁である、高価な専用ソフトは不要だと言う。応募上のネックである「経験」も、サッカー番組の翻訳をしていたため辛うじてクリア。トライアルを無事通り、クラウドタイプの字幕ソフトの使い方や、字幕翻訳の細かいルールを覚えて初仕事をもらった。もらうというか、自分で選ぶことができる。僕が選んだのはスタンダップコメディアン(ピン芸人)のライブショー。難しい…けどおもしろい!そのライブ自体、最初は「どこが笑えるんだろう?」と冷めた目で見ていたが、だんだんおもしろさがわかってきて、ぜひそれを届けたいという気持ちで訳した。

その後、B級(C級?)映画、ドキュメンタリー、下ネタだらけのアニメ、アメリカのほかフィリピンや台湾のドラマ(もちろん英語経由)などなど、あえていろんなジャンルに挑戦している。日本のアニメの英訳も。今のところお笑いライブが一番好きかもしれない。映像翻訳を学んだ経験がないだけに、勉強させていただこうとチェッカーを務めることも。のちに触れるつもりだが、通訳と一番相性がいい翻訳の仕事(つまり通訳者に一番適した翻訳の仕事)は映像翻訳ではないかと思う。

派遣翻訳がディフェンダーなら、映像翻訳はストライカー。柱の仕事を失って追い詰められたが、ピンチを耐え抜いていよいよ反撃開始だ。この勢いで今度は出版翻訳へ、という話はまた後日。その前に、現在悪戦苦闘している通訳への挑戦について次回語りたい。