
Vol.21 まずは日本語を徹底的にインプット
/翻訳者 裏地良子さん
夫は翻訳書の編集者を20年ほどやっていますが留学経験はなく、私のほうは大学時代に1年ほど英国に留学していた程度です。息子たちは現在6歳と3歳です。まだ教育方針と言っても手探りではありますが、ここまでの経過を書かせていただきたく思います。
まずは日本語で
論理的思考ができる土台を
これまで翻訳の仕事をしてきて痛感したのが、基本的な日本語力の必要性です。英語を小さい頃から教えないのは、私たちに教える技量がないからという消極的理由もあるものの、まずは外国語習得の基礎となる母語の能力を磨くほうがよいという考えでいるからです。
そこで息子たちには、まず日本語で論理的思考ができる土台作りと、行間やニュアンスまで深く理解する力、何かを語れるだけの知識をつけることを第一に教育をしています。英語を話せるかどうかより、英語をどう使うかのほうが大事だと考えるからです。よい発音は二の次だと思っていますし、自分の経験上中学生くらいからでもある程度の発音は身につけられるとも思っています。私は中高6年間NHKラジオの英語講座を聴いてリスニングとスピーキングを身につけ、発音の面である程度の効果を得ました。
子どもたちの日本語習得にあたっては、とにかくたくさんのインプットを心がけました。インプットには各種テレビ番組や親が選んだYouTube動画も含みます。また、自分で字を読めるようになればインプット量が増えると思い、長男は1歳くらいから、当時フリーランスで在宅だった夫と私とで必死でひらがなを教えました。初めて五十音表を与えたのは生後6か月の頃でした。浴室に貼るひらがな・カタカナ表を利用し、お風呂につかっているときも教えました。それくらい親のほうは気合いが入っていました。結果、長男
は2歳半でひらがなカタカナを読めるようになり、教えればできるんだと確信しました。何事も「まだ早すぎる」などと思わず、知らないことでも教えたらできるかもしれないという信念のもとで日々子どもと接しています。
話し言葉に関しては、言い間違いや「てにをは」の間違いもその都度きちんと言い直しさせます。言い間違いは幼児らしくてかわいいのですが、そこは心を鬼にして(でもかわいいところの動画を撮ってから!)訂正します。私が7歳から祖母に俳句を習っていたこともあり、長男は3歳くらいから気が向いた時に俳句を詠ませています。

調べ物をしながら本を読む
絵本なども多数買いそろえましたが、結局息子たちが一番熱心に読んだのは『ウルトラマン大図鑑』でした。しかし、ルビつき漢字ありの大図鑑をボロボロになるまで読んだのが、結果的にとてもよかったです。
読み聞かせはそれほど多くしてやれたわけではないですが、逆に長男が6歳になって朗読をしてくれるようになりました。ここでも、理解していないらしい単語や表現はその都度確認します。その場で意味を教えてしまうことも多いですが、可能な限り辞書を引かせるようにもしています。出てきたトピックになじみがない場合は、図鑑や子ども用百科事典で調べさせます。長男は寸暇を惜しんで本を読むようになったので、小学校低学年向けくらいでルビ入りの本や漫画を通して、漢字力も少しずつついてきています。
3歳半の次男は、ちょうど夫が会社員になって平日に教えられるのが私だけになった時期に育ったこともあり、今ようやくひらがなを習得。ただ、第二子なのでインプットされている量は多く、同時期の長男より高度な会話まで理解し発話できます。映画を見たときにあらすじを聞くと、つたないながら説明できるくらいです。「門前の小僧」効果でこれからも伸びていってほしいなと思いつつ、今後の教育方針を模索する日々です。
英語の本も辞書も家にあるので、英語にはそのうち興味をもってくれればと思います。