第6回 海外のエージェントについて その2

10.ランク付けについて

ランク付けは、日本ではSクラス、Aクラス、Bクラス……のようにされているのが一般的でしょうか。欧州のベテラン同業者、先輩格の人たちに訊いてみたところ、日本にはそんなものがあるの??と逆に興味津々に訊き返されました。エージェントも、何か統一されたランク分けのようなものがあるわけではなく、それぞれの会社の中で、一人ひとりの通訳者に評価(仕事を振る優先順位)しているが、あくまで自分たちの業務のサポート、内部情報だとのことでした。

通訳していても出くわすことがよくあるのですが、日本では客観的で絶対的な尺度を求める傾向が強く、欧州では絶対的ではなく、いささか主観的であらざるを得ないものの、横断的な尺度はそれほど重視していない、重視していないというより、その必要性を感じていないのではないかと思います。確かに、プロマネが「この人には任せられる」「頼みやすい」「扱いやすい」と閻魔帳を持っていればいいのであって、それがどれだけ客観的かと言われても、自分の経験からどう思ったか、感じたかのほうがおそらく重要なので、絶対的な尺度は必要ないのかもしれません。

11.テレカンやリモート通訳

「テレカンやリモート通訳が発達・普及していそうな気がするけれど、実際はどうですか」―これは、海外のエージェントでも、それなりに需要があると思います。ただ、分単位のレートになるので(ビデオ会議の場合は時間当たりなど)半日と全日の二項でレートを立てているのとはかなり条件に違いがあり、まず手続きが煩雑になります。些末なこと(請求手続き)に延々と時間がかかる。それでも、現場に出向くことが困難な場合(育児中など)もあるでしょう。在宅で通訳の仕事が続けられる、そのチャンネルがあることはいいことだと思います。

ただ、私が以前から納得がいかないのは、イギリスの警察署の取り調べなどでは、電話通訳サービスを使っているのですが、日本語であろうとスペイン語であろうと、アメリカにいる通訳者が電話口に出たりします。イギリスの法律や法律用語・用法は思った以上にアメリカのそれとは異なります。ですから、アメリカの法律(これも州によってなど、違うでしょうが)の下で普段通訳している人がそのままイギリス(この場合England & Wales)の案件の通訳をするのは危険です。それなのに、この傾向は変わりそうもありません。通訳という仕事に対する誤解がここでも生じたままなのです。これについては一朝一夕にとはいかずとも、意識して、状況を改善するべく、できることから取り組んで行こうと思っています。

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