
第5回 テキストエディタ ー 「秀丸」を使いこなす
産業翻訳の仕事をされている方で、「秀丸(ひでまる)エディタ」(税込み4,320円)を知らない方はいないでしょう。テキストエディタはワープロソフトとは異なり、テキスト(文字列)だけを入力、編集、保存できるソフトウェアですが、文章を入力するだけなら実はこれで十分なのです。数百ページのデータでも壊れることはまずありません。
私の場合、原文をPDFやWordで支給されることが多いのですが、PDFはレイアウトなしの「ベタうち」納品が多いので、テキストに保存し直し、秀丸で翻訳前や後の処理、入力ミスをチェックを行っています。レイアウト付きのWord上書きの場合、データが壊れるのが怖いのでCATツールで翻訳していますが、その時も秀丸で資料や用語、既訳を全文検索するのに活用しています。
ワープロとして使う
紙の原文とディスプレイのWordを左右に並べて、あるいはデュアルディスプレイで左右に原文と訳文を開いて翻訳されている方も多いと思います。大部の論文や書籍などで章別にファイルを作成したりすると、一括置換も1ファイルずつ別々の作業になって不便です。秀丸なら何万字でも驚くほどデータが小さく、勝手に文頭が大文字になる、インデントがかかるなどの余計な機能もなく、その軽さとシンプルさが実感できると思います。
行数も表示できますし(メニューの[表示]>[行番号])、画面の色も選べます(設定方法はこちら)。私は白のままですが、目が疲れにくいよう暗い色にして作業している方も多いです。
下は左に行数を入れ(緑の楕円)、カーソル行の文字を赤色(オレンジの楕円)に設定したファイルです。
アウトライン解析機能
それほど複雑なものではありませんが、秀丸にはアウトライン解析機能があります。
(1)メニューの[表示]から[アウトライン解析枠の表示]を選ぶと、右側にアウトライン解析枠が表示されます。
(2)アウトライン解析枠の右上にある小さい下向き三角をクリックすると、設定ウィンドウ(上の図で右側)が開きます。
(3)設定ウィンドウでタイトルや見出しにそれぞれ記号を割り当てます。この例ではタイトルに★、見出し1に○、見出し2に●を割り当てました。
(4)設定を保存すると、アウトライン解析枠にアウトラインが表示されます。希望のタイトル/見出しをクリックするだけで本文のタイトル/見出しに飛びます。
(5)翻訳ではなく記事などを書く場合、最初にタイトル/見出しを入力して構成を考えることもできます。
検索
Grep検索
翻訳作業中、客先から支給された資料や用語集、スタイルガイドなどは、すべてテキストに落として1つのファイルにまとめ、検索をかけています。ファイル数が多いときはGrep検索をかけています。
Grep検索とは、文字列を複数ファイルから検索する機能です([検索]>[Grepの実行])。下記設定画面では、検索する文字列とフォルダを指定します。
また原文と翻訳文を併記したデータをテキストファイルで保存しておくと(私はCATツールの機能で作成)、自分が過去にどんな訳語を選んだのか、どのように訳したのかもGrep検索で確認できます(検索用フォルダを作ってまとめています)。また、作業中に調べたことは1つのファイルに毎日メモしています(年1回新ファイルを作成)。すっかり忘れてしまって何年か後にGrep検索でヒットすることもよくあります。次の図は検索結果です。これだけで訳語がわかりますし、文脈が見たい場合は希望のファイルをクリックすると開きます。
また[Grepして置換]なら複数ファイルを横断して一括置換できます。
正規表現を使った検索
「正規表現(regular expression)」と聞いてもぴんときませんが、要は「意味づけされた記号」です。Wordの「ワイルドカード」に相当します。ちょっと知っていると検索や置換時に便利です。
例えば「エネルギー」と「エネルギ」が混在していて「エネルギー」に統一したいとき、普通なら
「エネルギ」->「エネルギー」と一括置換してから
「ーー(音引き2つ)」を「ー(音引き1つ)」に一括置換する
というやり方が多いと思うのですが、
正規表現の「|」(縦棒、andを意味する)を使うと、
「エネルギー|エネルギ」>「エネルギー」の一括置換1回ですみます。
ただし、置換ウィンドウの「正規表現」にチェックマークを入れてください。
正規表現について、秀丸サイトの説明はこちら。