第9回 すべての人にノマドを!~主婦やお母さんはどうすればいいか

主婦が実現した「デュアルライフ」

カフェノマドや車ノマドができたとしても、このコラムで書いてきたような旅をしながらの仕事、あるいはマルチハビテーション(複数拠点で仕事する)からはほど遠い。主婦やお母さんでそういうライフスタイルを実践している例はないだろうか。そう思ってサーチしてみると、東京の自宅で旦那さんやお子さんたちと生活しながら、週の半分ほどは逗子で暮らして仕事もしているという方がいた。『ここのつブログ』の運営者、河本ここのさんだ。

もともと河本さんのご家庭は「昭和的」で(我が家もです)、旦那さんも家事には積極的でなかったそうだ。そんな中で、数年前まで独り暮らしの経験さえなかったという河本さんは「湘南で暮らす」という長年の夢を実現させるべく、ご家族と相談。理解を得るとすぐ行動に移し、東京のご自宅と湘南のシェアハウスというマルチハビテーション(河本さんの言葉では「デュアルライフ」)を開始。今では拠点を逗子へ移して逆にシェアハウスのオーナーとなり、現地で築いたネットワークを生かしながらVision Questというコミュニティを主宰し、交流会や勉強会などのイベントを開催している。

その一方で、ご家族はどうなったのか?ほとんど家事ができなかった旦那さんやお子さんたちは、試行錯誤を重ねながらも、今では炊事、掃除、洗濯の当番を毎月の家族会議で決め、翌月の会議で振り返りというサイクルが当たり前になっているという。デュアルライフがひとりひとりの自立を促したというわけだ。それにしても、ご本人の行動力もさることながら、ご家族の理解と協力、特に旦那さんの器の大きさには驚かされる。
09-05                   (河本さんのご家族が自主的に作った家事分担表 ©ここのつブログ)

しかし、これは男目線の見方なのかもしれない。考えてみれば、亭主が自宅外に拠点を設けるのはよくても主婦はダメ、という道理はない。そしてご夫妻が赤裸々なトークバトルを繰り広げたイベント「『わたし、あのとき離婚を考えていたの』と夫に伝えてみたら」のログを読むと、「ワガママな妻とそれを許す夫」という単純な構図ではないことが分かる。お二人は決して特殊例ではなく、「仕事ばかりで家庭を顧みない夫 vs 社会に出て自分の能力を生かしたい妻」というありがちな関係から生じる、ありがちな問題を抱えていた夫婦だった。危機にまで発展したその問題と向き合いながらたどり着いたスタイルが、妻の「デュアルライフ」だったのだ。

詳しくはブログのほか、河本さんが取材を受けたSUUMOジャーナルの記事に費用の話なども書かれているので、興味のある方は参考にしてほしい。

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