第4回 オレってクール? 猛暑対策用品あれこれ

暑すぎる日本の夏

4_01以前、8月の東京に“来てしまった”外国人観光客が激しい後悔の念をあらわに言い放ちました。

「東京の夏は地獄だ」

ま、確かにそうです。長年住んでいる私でさえ、特に近年は炎天下の都心を歩いているとフライパンの上の目玉焼きの気持ちがわかるような気さえします。ましてや、真夏が北海道よりも涼しい北欧からお越しのバイキングの末裔の皆さんにとっては、来なきゃ良かった季節と言っても過言ではありません。

すると次に彼らからよく聞かれるのは「じゃ、こんな暑いなか、仕事に行くときどうしてるわけ?」という質問。ごもっともな疑問です。50年も前ならただひたすら汗をかいてはハンカチやタオルで拭き拭き…の繰り返しですが、今の日本には科学とものぐさ精神のもたらした秘密兵器の数々があります。

涼を求めてドラッグストアへ

ある時、真夏の観光一団の中にSPのごとく、ひときわ眼光鋭いお客様がいて、地下鉄でとあることに気づかれました。

「電車で目の前に座っている家族がみんな首に何か巻いているが、あれは何だ?」
「おまけにさっきホームで電車に乗る前にスプレーをかけていたけど、あれも何だ?」

なるほど、寒くて乾いた土地の人には不要なものだしねぇ、疑問に思うのもわかります。日本人なら、特に外出する機会の多い方なら使ったことのある方も多いと思いますが、これら謎のアイテムは、首に巻くとひんやり感が得られるクーラー、そして制汗スプレーです。

と説明するやいなや、今すぐオレ達も欲しい欲しい病が始まってしまったので、一緒にドラッグストアに寄ることにしました。

4_02店内は時節柄ところ狭しと暑さ対策グッズが絶賛展開中。早速、一団は首巻きタイプのひんやりアイテムを多数購入。ある人は「私は首が太いので」という理由で、ダブルで装着しています。「どうだ? クールかね?」と聞かれたのですが、一応、「正直営業、ノーお世辞」がモットーの私は返答に窮し、「クール感は出てると思いますよ」といった不可解な回答をしてしまいました。ごめんなさい。

別の御仁は携帯式のミストが出る扇風機を買ったりしています。

でもこのミニ扇風機、自分に向けると、ひんやりミストを放ちながら送風するというシロモノなのですが、実際に街でつけている人を見たことはありません。体格の良い外国人の皆さんが極小の扇風機を装着したまま街を歩くと、コントになりかねません。うーーん、ちょっと不審なので、外出時は使用を控えることをおすすめしました。

POCARI SWEATって誰の汗?

一方、外国人観光客が目にしたとたんギョッとしていたのが、青いラベルでおなじみのスポーツ飲料「ポカリスエット」。発売以来、私たちは大して疑問も持たずに飲んできたかと思いますが、英語圏の皆さんが読むとそれは「汗(sweat)」。

わりとおいしいですよ、と私が笑顔ですすめても、口をへの字に曲げて信じてくれません。
「だってS、W、E、A、T、汗だよ? 汗を飲むのかい?(苦笑い)」
名前はそうですけど、実際は清涼飲料ですから大丈夫、といくら説明しても名前から想像すると口にする気にならないそうで。

そのうち、汗だからしょっぱいんじゃないかとか当たらずとも遠からずな議論になり、結局これは購入却下になることが多い品なのです。でも、いつか罰ゲームの機会でもあれば、試していただこうと密かに目論んでいます。

外国人が箱買いする人気商品

4_03そのほか、これまでのツアー中のお役立ちアイテムで、なおかつお土産としてもとても好評だったのが「熱さまシート」。自分も経験があるのでわかるのですが、疲れた状態で旅立つと、旅先に着いたとたんに風邪を引いて熱を出すこともままあります。それでも旅行者の皆さんにとっては貴重な日本の日々。余程ひどい場合以外は、熱をおしてツアーを強行します。

そこで登場となるのが、おでこにピタッと貼り付けるあのシート。実は外国にはあまり無いらしく、何箱も買っていく方もいます。なかには日本文化に精通していて、「シートに何かおまじないを書いて貼ったほうが効くんじゃないの? ほら、東京のどこかのシュラインかテンプルで、体の具合の悪いところにタブレットを貼り付けると、そこが良くなるっていうのを何かで読んだよ」と言い出す人もいました。

それは巣鴨のとげ抜き地蔵。一体どこでそんなマイナー情報を調べたんだろう…。インターネット恐るべし。

そして、もちろん本来は熱を冷ますためのものですが、ただ単に暑いからという理由で貼ってしまう人もたまにいます…。特に害はないからいいんですけど、おでこに青いシートがべったり貼り付いているのに、すまして電車に乗ってるのは…、大分面白い感じになっています。これはいくらなんでも注意をせねば。

隣に座っている私が妙に変な汗をかいているのは暑さのせいではありません。駅員さん、東京の夏は彼らには暑すぎるのでどうか見逃してあげてください。