第35回 気軽に読めるサスペンスとコジーミステリをご紹介

19.
その匂いは消えることなく、雪の上を苦労して進む間も、彼にしつこく付きまとった。やがて彼は自分の足跡を見つけたが、そこには自分のとは違う足跡があった。くそっ、誰の足跡だ。半狂乱で振り返ると、彼はバランスを崩して銃を落としてしまった。

(「匂い」はよいにおい。「やがて」にするとスピード感がなくなっちゃうんですよね。保安官補だから「半狂乱」にはならないんじゃないかなあ。
<余談>いろいろあったんですよ。ホテルの火事が最大のイベントだったかなあ。)

20.
臭いがまとわりついていた。雪の中をなんとか進むあいだもその臭いはジョーを追ってきた。自分の足跡を見やると、別の足跡が目に入った。なんてこった、別の足跡だと。ジョーはもんどりうち、バランスを失ったその手から銃が落ちた。

(「なんとか進む」がちょっと気になります。spin aroundだから回るんだよねえ。もんどりうつのもんどりは「とび上がって空中で一回転すること。宙返り。とんぼ返り。)という意味です。
<余談>もう少し丁寧に。入り方は嫌いじゃないので。)

21.
鼻についた臭いは離れず、雪道をもがきながら進んでもついてきた。それから、自分の足跡以外に、もう一つ足跡があることに気付いた。「うわぁ、マジかよ。誰かいる」そして辺りを激しく見回していると、バランスを崩し、銃を落とした。

(地の文は悪くないです。「激しく見回している」がちょっとニュアンス違うかな。自分が来た時の足跡の隣に別の足跡があるということは、自分よりあとからきた相手がいるわけで、あとからきたということは、自分の前にいるのではなく、自分の背後にいる、よってあわててふりかえるんです。あと会話がちょっと若すぎ。「マジかよ」はさすがにちょっと。
<余談>こちらこそどうぞよろしく。がんばってください。)

22.
このにおいは消えないだろう。積雪の上を進もうともがいている今も、このにおいはまとわりついて離れない。ジョーは自分の足跡を見た。そこにはもう一組、足跡があった。まさか、これは・・・・・・慌てて辺りを見回す。バランスを崩すと、銃が落ちた。

(多少色気にはかけますが、さらっと訳せていてこれはこれでいいかと思います。)

23.
ジョーはそのニオイから逃れることができずにいた。今までずっと雪の上で格闘してきた時と同じように、そのニオイは彼にまとわりついてきた。そして彼が、自分がきた方向に目をやると・・・そこには別のペアがいた。あぁ、何ということだ。また別のペアだ。ひどいめまいで彼はバランスを崩し、手から銃が離れ落ちた。

(「雪の上で格闘」だと、もう犯人と出会っちゃってます。ペアは足跡のこと。もう一組ですね。めまいがしたのではなくて、急に振り向いた(振り返った)のです。
<余談>今回はちょっとちゃんと読めていなかったですね。もっと情景をよく頭に浮かべてから訳すように心がけてください。)

24.
鼻についた臭いは消えそうになく、必死に雪の上を進むジョーにまとわりついてくる。その時、ジョーは自分の足跡の他にもう一つ、別の足跡を見つけた。ちくしょう、足跡がありやがる。ジョーは勢いよく周囲を見渡し、よろめいて銃を取り落とした。

(「勢いよく見渡し」だと弱いです。あわてて振り返ったので、雪の上でバランスが崩れて、という流れ。ジョーの心の中の言葉ですね。足跡のところは、「まずい、どこにいるんだ?」みたいにして処理することもできると思います。)

25.
その匂いはいつまでもしみついていた。雪の上を苦労して進んでいるときも、匂いがまとわりついて離れなかった。そして、ジョーは自分の足跡を見つけた。それに、別の足跡も。なんてことだ。自分のものとは違う足跡。ジョーはあわてて振り返り、バランスを崩して、銃を落としてしまった。

(「匂い」は、良い方ね。「見つける」だと、ちょっと流れが悪いんですね。自分の足跡が「目に入る」んです。で、その脇にもう一組あるのに気付くんです。「自分のものとは違う足跡」は、頭の中でとっさに浮かぶ言葉ではないと思います。
<余談>読書の時間は、トイレ、風呂、移動中の電車、信号待ち、ラーメンが煮えるまで、など。細かな時間の積み重ねです。(トイレ本はトイレ専用です。念のため。)和書と洋書の割合は、時期によって違います。集中して英語を読んだこともありますし、日本語に集中したこともあります。要はその時点で自分にどちらが必要かということです。内容は量をこなすならとにかく自分が楽しめるもの。質を追求するなら、自分が専門にしたい分野のものです。)

26.
死臭が身体について離れなかった。雪の中を苦労して進んでる間もついてきた。さらに、自分が来た道を振り返ると、もう1組足跡があった。なんてこった、誰かいるぞ。ジョーは勢いよく向き直ったので、バランスを崩して、銃を落とした。

(厳密には死臭だけではないんですけどね。「ついて」が繰り返しになっているので、そこは工夫したいところ。振り返ったとは書いてないですから、前方に見えたのだと思います。小説なので「一組」の方がいいですね。「勢いよく向き直る」というとちょっとポジティブな感じを受けます。
<余談>翻訳業界は末端ですから、景気後退の影響を受けるのも遅めでしたが、回復の影響を受けるのもまた遅めです。必要最低限のものしか発注されない感じですね。特に広告業界については、僕のところに関する限り、ここ1年以上発注自体がないです。)

27.
臭いはなかなか消え去らず、雪の中を苦労して進んでいるあいだもずっとジョーにつきまとっていた。足元を見ると、そこにはもう一組他の誰かの足跡が残されていた。何てことだ、まったく。ジョーは勢いよく振り返ると、バランスを崩して拳銃を落とした。

(「足元」じゃあないと思うんですよ。それまで目に入ってなかったのが、ある場所まで来たら見えたんだと思います。「勢いよく振り返る」だとちょっとwildlyとは違う感じがします。
<余談>CD版でもつなげられるのですが、コストがすごいので、それよりも、電子辞書(種類は限定されますが)を買うのが今はお得だと思います。iPadには対応しないでしょうね。(現行のMacにも対応していないので。)ただ売れたら分かりませんが。電子書籍、老眼が出てきたら対応するはめになると思いますよ。(その理由でiPad検討中)

28.
臭いは離れようとせず、吹雪と格闘しているかのように彼につきまとった。そして彼は自分の足跡に気がついた。もう1つあった。なんてことだ!彼は無茶苦茶に体を回し、バランスを崩し、銃を落とした。

(吹雪じゃないんですね。throughだったらそうなんだろうけど、この場合acrossだから雪の上を横切っているんだと思います。足跡の部分は、自分の足跡が二つある(往復なら当たり前)のように読めてしまうのでもっと工夫を。「むちゃくちゃに体を回す」もちょっとイメージが湧きにくいですね。
<余談>情景は浮かぶんでしょうが、それを表現するのが大変です。でもそこで頭をひねるのが良い訓練になるんですよ。)

29.
その臭いは雪の中をもがき歩く彼にしつこく付きまとい逃がさなかった。そしてふと自分の辿ったルートを見た時、自分以外の足跡があることに気が付いた。なんてこった、と動揺した彼は勢い余ってバランスを失い拳銃を落としてしまった。

(「もがき歩く」とは言わないでしょうね。「もがきながら」とか「もがくようにして」かな。「逃がさなかった」なら「逃がそうとはしなかった」かな。たどるは開いた方がいいです。ただ、それだと振り返っていることになりますから、論理が合わない。「なんてこった」はやっぱりちょっと浮いてます。
<余談>「アメリカから<自由>が消える」、それに「貧困大国アメリカ」も読むとさらにびっくりです。もうかつての自由と希望の国ではなくなっていると思います。オバマ大統領が、大統領令でアメリカ国内でも議会の承認なしで軍を動かせるようにしたんですが、これって州の独立とか、内戦のリスクを視野に入れているんじゃないかとちょっと思いました。)

30.
まとわりつく臭いから逃れるように必死で雪を蹴った。地面を見ると自分のものとは別の足跡があった。まずい見つかった、ばっと振り向くと同時にバランスを崩し、手から銃が落ちた。

(「雪を蹴る」というのはちょっと違うかなあ。最初のところはすこしはしょりすぎかも。「見つかった」というよりは「もう一人(つまり犯人)がきている!」という感じだよね。
<余談>難しいんですよ、こういうのが。実は。でも文芸に限らず産業でも同じことがいえますよね。)

31.
そのにおいはどうしても離れなかった。雪の中をなんとか歩いている間もつきまとってくる。自分の足跡が見えた。別の足跡も。くそっ、だれかいるんだ。焦ってぐるりと振り返った拍子に、バランスをくずし銃を落とした。

(「雪の中を歩く」よりもうちょっとニュアンス違うです。雪を横切って何とか前に進んでいる感じですよね。「雪の上を」かなあ。でもそれ以外はいいですよ。
<余談>Jammingを相当検討したのかソフトとしてはかなり完成度が高いですし、辞書をこれから揃えるのだったらとても良いと思います。ただ、もう一世代くらい待っても良いかも知れませんね。)

32.
体についた臭いは、どうしても消えなかった。雪の中を必死にもがき進んでも、相変わらずまとわりついていた。その時、雪についた自分の足跡がふと目に付いたが、そこにはもう一つ別の足跡があった。なんてことだ。足跡がもう一つある。ジョーは大きく振り返ると、バランスを失い銃が手からこぼれ落ちた。

(体に付くというのはないと思うんですね。そうじゃなくて、体にまとわりついてくる感じ。だから後半はそれでいいんだけど、体に付くだったら、むしろ「鼻につく」かなあ。「ふと目に入る」でしょうね。「大きく」よりはもっと強いかな。
<余談>ワイコロアで結婚というのは素敵ですね。日本化というよりも、ワイキキの観光地化がさらに進んだという感じかなあ。ハワイ島は変わらないですが、ワイコロアはKing’s ShopsのほかにQueen’s Marketplace(だったか?)というのができて、食事やショッピングがだいぶ楽になりました。お子さんと一緒ならワイコロアとコナあたりだと天気も良いし、良いと思いますよ。)

33.
死臭はしつこくつきまとい、必死で雪上を歩いているときも鼻から離れなかった。少ししてジョーは、先ほど自分がつけた足跡を目にした。すぐ近くに、もうひとつ、別の足跡もある。ヤバイ、誰かいるぞと思った瞬間、バランスを崩してぐらりと大きく体が回転し、雪上に銃が落ちた。

(厳密には死臭だけではないんですが、それはよしとして、「少しして」だとちょっとリズム崩れるかな。最後の部分は、あわてて振り返ろうとして、バランスが崩れて、銃を落としちゃうんですね。
<余談>ツイッター確かに危険かも(^-^; でも情報自体はマスコミよりもはるかに幅広く取ることができますよ。正直、今のマスコミの報道は媚米という感じでどうかと思います。もっとリアリスティックに考えないと。)

34.
臭いは決して消えず、雪の中をかきわけて進む間にもつきまとった。そのとき彼は自分の足跡の他にも別の足跡があるのに気づいた。なんてこった、別の足跡とは。彼は激しくぐるりと回転すると、バランスを崩して銃を取り落とした。

(「かきわける」だと、「じゃまなものを左右に押しやる。かきのける。」という意味になります。でもacrossだし、逆にかき分けるほどの雪だと足跡にならないんですよ。「なんてこった、別な足跡とは」とは台詞として言わないでしょう。「激しくぐるりと回転」するということは、あわてて振り返るということですよね。)

35.
臭いはいつまでも消えず、雪の上を懸命に進む彼のあとを追ってきた。ふと彼は自分の足跡を見た。そこにはもう一つ別の足跡があった。くそ、だれかいるのか。ジョー・ティビドゥーは慌ててまわりを見回し、バランスを崩したひょうしに銃を落とした。

(「懸命に進む」だと何か目的地がある感じを受けるんですね。実際には、凄惨な場所から逃れたいという感じですからもう一工夫。自分の足跡を見ただとちょっと分かりにくい。「目に入った」が良いと思います。deauはドーとなります。
<余談>学費は大変ですねえ。でも、書いて頂いた勉強のがんばりはきっと役に立ちますから、どうぞがんばってください。)

36.
匂いはチボドーから消えず、まるで雪の中を苦労しながら進んだときの雪のように彼についてきた。そしてチボドーは自分の足跡を見ると、そこには彼のものとは違う足跡が。 なんてことだ。別の足跡があるなんて。彼は激しいめまいでバランスを崩し、銃を落とした。

(いや、実際に雪の中を進んでいるんですよ。「別の足跡があるなんて」とは台詞として言わないと思います。犯人が背後にいるかも知れないと思ってあわてて振り返った感じです。)
<全体コメント>

匂いと臭いの区別がついてない例が多かったです。死臭(だけじゃないんですが)を良い匂いと思ったらやばいです(^-^; 同様に「見える」、「見る」、「観る」といった漢字は厳密にはニュアンスが違います。このあたりは当用漢字の弊害なのかなあ。あと、全体の流れをきちんと訳せていない訳文も散見されました。これ映像的に書かれていて、すごくわかりやすいと思ったんですが、そうでもなかったのかなあ。あまり血のでないサスペンス映画とかを良く観ると良いですよ。順番はこうです。

1.ジョーが雪の中を死体のある建物へ向かい、入る。(この時点で足跡があれば気付きます。) (足あと1本)
2.犯人が雪の中を死体のある建物へ向かいます(入ったか、外で待ち伏せかは分からない)(足あと2本)
3.ジョーが雪の中を建物から離れた方向へ向かう。前方に2本の足跡を見つける。
4.従って、後ろにいると判断したジョーが振り向く。

今月の敢闘賞は、18さん、24さん、31さん、MVPは福山 渚さんです。精進してください。

<次回の課題文>

“They’re all dead.”

“What?” Meg Corey dragged her gaze from the orderly rows of apple trees that marched over the hill. Almost all were past bloom now, and some of them had what even a novice farmer like Meg could identify as apples. Small, maybe, but it was a start. She turned her attention to Carl Frederickson, her beekeeper. Until this morning, Meg hadn’t even known she had a beekeeper, but it seemed like every day since she’d inherited the orchard, something — or someone — new she hadn’t known about turned up. “Who’s dead?”

赤字の部分を訳してください。地の文は常体(だである調)で、主人公のメグは30前の女性ということで。

ではまた来月。感想やコメントもお待ちしています。マハロ。

★★訳文の応募は締め切りました★★

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