第35回 気軽に読めるサスペンスとコジーミステリをご紹介

★訳文記載について
・訳文は応募順に記載しています。
・赤字…最優秀訳文、ピンク字…敢闘賞受賞訳文です。

1.
ジョーは、その悪臭から逃れようとしたが、もがきながら雪をかき分けて進む間も悪臭はまとわりついて離れなかった。そして、自分の足跡に目をやると、自分のではないもう一つ別の足跡が残っていた。くそっ、誰かいやがる。ジョーは、慌てて無理な体勢から振り向くと、バランスを崩して銃を落とした。

(「悪臭」を二度繰り返したくないですね。「そして」を入れることでちょっと流れが切れています。「くそっ、誰かいやがる」は悪くないと思うんですが、「くそっ」というよりは、そのあとの反応からいうともう少しパニクった感じですね。「いったい誰の」とか、もう少し慌てた感じがいいかな。「無理な体勢」もちょっと足し込み過ぎかも。このあたりが難しいよね。
<余談>平凡というよりも、今回は足し込みすぎてかえってリズムを崩したかなあ。毎年ハワイに行っていますが、唯一の休暇(盆暮れは帰省しますが、仕事はしているので)なんですね。ハワイでも仕事していますが、時期的なものもあって、今年の場合トータルで1週間くらい休めたような気がします。JALのコナ便がなくなったので、ちょっと離島に行くのが大変になりました。)

2.
一旦体についた臭いは、ジョー・シビドーの体に染み付き、どんなに雪の中でもがいても消えることはなかった。ふと、足元を見ると、自分の足跡の横にもう一人の足跡がついている。「ああ、もう終わりだ、殺られる」その刹那、彼の体はバランスを崩しながら大きく回転し、手にした銃が落ちていった。

(「体についた」「体に染み付き」がまず同じような表現で冗長に感じられます。前を向いて歩いているというか、もがいている(正確にはstruggled acrossですから、もがくようにして雪の中を進んでいます)わけですから、視界は前方にあるわけです。足元を見て、自分の足跡の横に足跡がつくようなら、その相手が脇を歩いていることになります。そうではなくて、自分が来た時の足跡(雪の中では当然残りますよね)の脇に、もう一組あるということですから、誰か(犯人)がいるとパニック状態になって、こけてしまいます。(で、このあとぐさぐさと……。)
<余談>ライトノベルの英訳は難しそうですねえ。西尾維新とかは不可能のように思えるんですが、はて。Joe Thibideauは、話がカナダが舞台なので、ティビドーでしょうね。英語読みならシビドーかな。eauはオーと発音します。たとえばbureauがビューローとなるのと一緒。フランス語ではthの発音はトになります。がんばってね。)

3.
その臭いは鼻から離れそうになく、雪に足をとられながら進んでいても、体にまとわりついていた。シビデューはその時、自分が残した足跡を見つけたが、側に自分のものではない、別の足跡があるのを目にして愕然とした。そして、慌てて振り返った瞬間にバランスを失い、手に持っていた銃を落としてしまった

(意味はそれほどはずれていないんですが、何かスピード感がかけているように思います。死体の山を見つけたら、もう少しパニクるんじゃないかなあ。たとえば、「見つけた」よりは「目に入る」としたほうが動きが出てくるんですね。そのあたりを工夫してみてください。)

4.
その匂いはジョーに染みついていた。雪を掻き分けながら必死に進んでいる間も、ずっとまとわりついて来た。ふと、ジョーは自分が残した足跡に気付いた。そこに一つ、その後ろにも一つ。ジョーは足跡を消そうと、激しく動き回ったせいで、バランスを失い銃を落としてしまった。

(「匂」という字はもともと「よいかおりがする。香気。」という意味なので、臭い(におい。いやなにおい。くさい。)の方を使いましょう。leaveは体に染み付くというより、「鼻から離れない」くらいですね。後ろかどうかは分からないです。英文からはもう一組あると書いてあるだけ。「足跡を消そう」としても無理です(^-^; 普通は逃げます。あるいは敵をさがそうとします。
<余談>どうぞよろしくお願いします。継続は力なりです。)

5.
あの臭いはまだジョーの鼻先に残っている。雪に足を取られまいと必死になっている間も、その臭いはたえず彼にまとわりついていた。足元を見ると、彼の足跡の他にもうひとつの足跡があった。そう、誰かの足跡が!慌てふためいて身を翻したその時、よろめいて拳銃を落としてしまった。

(「足を取られまいと必死になっている」というと逃げることに主体がないような気がします。自分が今来た足跡は振り返らないと見えないですよね。だから足元ということはないと思います。「そう」はちょっと弱いかな。最後の行はいい感じ。
<余談>文章自体はうまいんですけど、実際の情景とフィットしないのかな。頭の中でもっと映像化すると、イメージが湧きやすくなると思います。)

6.
その悪臭がジョーの身体からどうにも離れずつきまとうのは、彼が雪の中にもがき出てからも同じだった。そうして逃げてから雪に残された自分の足跡を見ると、そこにはもうひとつの足跡が。何てことだ。足跡がもうひとつ。そして彼は大きく揺れながらくるくる回ってよろめき、バランスを失い、自分の銃を落としたのだった。

(「もがき出て」がちょっと違う感じがします。「そうして」はリズムを崩しているかなあ。「もうひとつの足跡」と「足跡がもうひとつ」は表現が似すぎている感じ。もう一工夫。「大きく揺れながらくるくる回ってよろめく」ってどういうイメージなんだろう。
<余談>いや、普通に流れで訳していけばいいんですよ。無理して訳出する必要はないんです。順番にイベントが起こっていくのが分かれば良いかと。)

7.
臭いはシビドゥにまとわりついて一向に消える気配がなく、それは彼が雪をかいて進む間中もずっと続いていた。そんな折、彼の目は自分のトラックと――あろうことかもう一台のトラックを認めた。そしてそちらに気を取られた拍子にバランスを崩して盛大にこけ、銃は彼の手を離れて雪の上に落ちた。

(このスペルだとシビドゥにはならないと思います。フランス人なら「-」と伸ばします。オードトワレだとeau de toiletで、ウドトワレにはならないでしょ。雪をかいて進むというと、相当深いですよ。それだけ深いと足跡残らないです。体ごとが沈んでしまうから。トラックじゃなくて、足跡がもう一組あったんですね。「盛大にこけ」は間違いではないでしょうが、スリリングじゃなくなっちゃいますね。)

8.
匂いはいつまでも離れようとせず、雪の上を必死で進むあとまでついてくる。そのとき、自分のではない別の足跡が目に入った。なんてことだ、誰かいる。ジョーは勢いよく体を回転させたので、バランスを失って銃を落としてしまった。

(全体に悪くはないんですが、「雪の上を必死に進むあとまで」がちょっとピンとこないかな。「誰かいる」はいいですね。あと「勢いよく体を回転させる」はちょっと流れに合わないかな。もう一工夫。
<余談>ハワイはだいたい3週間くらいです。仕事もしているから完全なオフは1週間ないですね。いまは僕とひめぽん(嫁)のどちらの両親も元気なので、長く出させてもらっています。ありがたいことです。オアフだとコンドがあるのがワイキキ中心(アラモアナは高い)のがネックかなあ。インターネットつなぎ放題が条件なんですよ。)

9.
その臭いはとても消えそうになく、雪の中を必死に進む彼についてまわった。ふと、彼は自分の足跡に目をやった。するとそこに、もう一対の足跡があった。何てことだ、別の足跡が。彼は慌てて向きを変え、バランスを失って、銃を落とした。

(けっこういい感じなんだけど、細かいところにもう少し目が届くと敢闘賞かな。「目をやった」よりは、「目に入った」なんですよね。あと「足跡」が三連発となるのはやっぱりくどい感じ。ちょっと工夫をしたいところ。「向きを変える」だと動きが弱いんですね。「振り返る」でしょう。
<余談>結構血まみれですが(^-^; ロマンスは好きな人は好きですが、僕は苦手。吸血鬼とかが絡むと楽しいんですが。)

10.
その臭いは失せる様子もなく、雪の中を必死になって逃げるジョーの後をついて来た。ジョーが思わず逃げて来た道を振り返えると、そこには彼のものではない、別の足跡もあった。しかも新しい足跡が。慌てふためき辺りを見回した彼は、バランスを崩し、持っていた銃を落としてしまった。

(実際問題として考えると、あとの方で振り返って転ぶわけですから、足跡を見つけた時点ではまだ前を向いているわけですよね。逃げ出したら、来た時の自分の足跡が見えたと。で、その側にもう一組足跡があったと。だから「思わず……振り返る」というのはおかしいわけです。ただ「新しい足跡があった」というのはアイデアとして良いので、もう一工夫かな。「自分の足跡が目に入った。側に新しい足跡がある。」みたいな。
<余談>ロジカルに何が起こっているのかを考えるようにしないと、なかなか正確な意味をつかむことはできないですね。自分でその場面を映画化するつもりで想像して読んでみると良いですよ。)

11.
死臭は染み付き、雪をかき分け進むジョーの体にまとわりついてきた。そして足跡を見ると、もう一つ―何てこった、何だあの足跡は!?ジョーはバランスを失い、銃を落とし、そこら中を転げ回った。

(足跡があるから、「かき分ける」のはちょっと意味が合いません。「死臭」とはっきりするよりは「臭い」でいいんじゃないかなあ。「死臭」だけじゃないと思うんで。「そして足跡を~何だあの足跡は」の部分は読み手にはピンと来ないはず。もっと丁寧に。「転げ回って」はいないですね。
<余談>もっと場面をきちんと交通整理してください。話自体はけっこうグロいですが、最近のアメリカ映画「ソウ」とか「キューブ」からかなりひどい描写が多いようですね。(怖くて見られない。)

12.
臭いはどうしても消えず、雪に足をとられながら必死に進むジョーにつきまとう。さらに、彼が自分の通ってきた跡を見ると、そこには別の足跡があった。ああ、イエス様、他にも足跡が・・・。彼は激しい勢いでぐるりと向きを変えた。バランスを失い銃が落ちる。

(うーん、通ってきた跡を見るには振り返らないと見えないでしょ。そうじゃなくて、自分が来た時の足跡が目に入ったんですね。そこにもう一組足跡があるということは、自分のあとから誰か(犯人)が来たということ。それで振り返るわけです。「ああ、イエス様」という意味ではないですね。「oh my god」と同じ意味です。「激しい勢いでぐるり」はちょっと荒いかな。「慌てて振り返り」くらいで十分でしょう。
<余談>セミコロンは、基本的に弱いピリオドと考えてください。あと、接続副詞で文章をつなぐときにも使用します。訳す時には、ピリオドと同じように訳しても良いですし、またはカンマみたいな扱いで処理することもできます。)

13.
必死に雪原を走る間も、血の臭いは消えずについてくる。そして雪の上に続く自分の足跡に目をやった時、もう一組、別の足跡もあることに気がついた。なんてこった、足跡がもう一組あるなんて――そう思った拍子に激しく転倒し、バランスを失って拳銃を落としてしまった。

(「雪原を走る」というと、だだっ広い中を何かけっこういいペースの感じを受けるんですね。そうではなくて、死体を見つけて、とにかくこんなところにいたくないと外に飛び出す。扉の中から臭いがついてくる感じです。それで必死に逃げ出している時に、視界に自分がその建物にくるときに付けた足跡が見える。その隣にもう一組足跡が見える。俺の跡から来た奴(で、死体を見つけたはずなのに騒がない奴=犯人)がいる、前にはいないわけですから、慌てて、振り返る、よろめく、銃を落とす。(殺される)という典型的なパターン。それをうまく訳すのが難しいんですが。ですから「思った拍子に」転んだのではなく、雪の中であわてて体を回したので足元がおぼつかなくなったんですね。
<余談>休養できたのは1週間弱かなあ。本はたっぷり仕入れてきました。今回の本文に選んだ2冊もその中で買ったものです。血まみれ目当てで選んだんじゃなくて、ちゃんと論理の流れが終えて訳せているかなあと思って出したんですよう。)

14.
匂いが消えない。雪に足をとられてなかなか前に進めない彼を執拗に追ってくる。来た道を振り返った彼は驚愕した。自分の足跡以外に、あろうことかもう一組の足跡を見つけたのである。彼は取り乱して周囲を見回し、体の均衡を失って銃を取り落とした。

(「匂い」は良い匂いなんですね。その次の行は少し足し込みすぎ。「振り返ったら」おかしいんですよ。普通そういう時ってとにかく前に進みたいわけじゃないですか。自分が来た時の足跡が目に入ったんです。「取り乱す」というか「パニクった」感じなので、あせるとかあわてるがいいんじゃないかなあ。
<余談>あらま、それは残念でした。「1週間から10日」が数時間になると、ペースがあがりますよ。とりあえず一晩かな。最後はこつこつと重ねた努力がものをいいます。)

15.
その臭いはジョーから離れず、雪をかき分けて渡る時もその臭いはジョーに付きまとった。そしてジョーはそこに彼の足跡と他に足跡があるのを視た。「オーマイ ゴット、他にも足跡!!」 ジョーは荒々しくぐるぐる回り、バランスを崩して拳銃を落とした。

(雪をかき分けて「何を」渡るんでしょう? 「視」という字は「注意してよく見る」という意味なので、seeの訳語には向かないです。そうじゃなくて目に入ったのね。「オーマイゴット」は訳文としてはおすすめできないですが、「ゴッド」ですね。「荒々しくくるくる回る」理由が分からないです。もっと丁寧に。)

16.
においがどうしても取れなかった。まるで雪の中でもがいているかのように彼につきまとった。その時ふと足元に目をやると、そこにはもうひとつ別の足跡があった。なに、ほかに誰かいたのか。ジョーは、ぐるっと体をひねった拍子にバランスを崩し、銃を落とした。

(「雪の中をもがいている」のはジョーです。足元じゃないと思いますよ。もう少し前じゃないかなあ。足元なら見えるんです。「体をひねる」というより、「あわてて振り返る」感じです。
<余談>この接続詞は、原文でリズムを作っているんです。次々とイベントが起こっていく場面展開みたいな。ですから、訳さないで流れが作れればそれでいいんですよ。)

17.
匂いがジョーを捉えて離さず、雪の中を必死に進む身体にまとわりついてきた。ほどなく自分の足跡を見つけたが、そこにはもうひとつ別の足跡があった。ちくしょう。誰だ。ジョーは狂ったように体を回してあたりを窺い、バランスを崩して銃をとり落とした。

(「匂い」は良いにおいね。「ほどなく」としちゃうと、流れが切れます。「あたりをうかがう」ほどの余裕はないです。細かいところが惜しいんだなあ。
<余談>僕は4時半起きです。11時には眠くなります。隙間時間はないようでまだあります。トイレ、風呂、信号待ち。がんばりましょう。でも時間ができると意外と勉強しないんですよ。)

18.
悪臭は消えることなく、雪の上を必死で逃げようとする彼にまとわりついてきた。自分の足跡を見ると、そこにはもう一組、そう、なんともう一組、足跡があった。彼は勢いよく振り返り、バランスを崩して銃を落としてしまった。

(細かい点で工夫の余地はありますが、流れができていて良いです。意味もきちんと取れている(ように見える)ので、とりあえず敢闘賞。「見る」というと意識している気がするので「目に入る」の方がいいんですけどね。
<余談>今の学生さんは大変だなあと思います。僕の頃は就職協定というのがあって、(まあ30年前の話ですが)4年生の10月1日までは内定を出すのが禁止だったんです。(その前に、企業が学校にくる会社説明会や先輩訪問は可。)ですから、4年の夏休みまではみんな勉強できたんですね。このあたりはもう一度きちんと見直すか、4月に一斉就職じゃなくて、随時にする必要があるでしょうね。がんばってください。)

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