第35回 気軽に読めるサスペンスとコジーミステリをご紹介

■第34回ウルトラショート翻訳課題の講評

<課題文>

The smell would not leave him, it followed him as he struggled across the snow, and then he saw his tracks and there were another pair; oh Christ, another pair, and he spun around wildly, losing his balance and dropping his gun.

<解説>

「におい」に関する単語はいくつかあってa smell、an odor、a scent、an aroma、a stench、a stinkといった単語が浮かびます。こういうのは機会があったら「英語類語使い分け辞典」のような本を手元に置いてチェックするといいです。この辞書から引用すると、「smell: よいにおいにも、悪いにおいにも用いられる。最も一般的な用語。scent:かすかなにおい、良いにおいにも、悪いにおいにも用いられる。 odor:強いにおい、悪いにおいに多く用いられる格式張った語。 perfume:花や香水などの強くてよいにおい。 fragrance:花やお香などのかすかでよいにおい。」とあります。stenchやstinkは悪いにおいですね(悪臭)。上のthe smellは死体とかの臭いですから、悪臭とかでも構わないんですが、むしろ「臭い(におい)」としておいた方がいいかも。異臭というのもありますね。「would not leave him」は「体から離れそうもなく」くらいの感じ。「followed him as he struggled across the snow」ですから、屋外に出てもあとからついてくる感じ。ですから雪の中をもがくように進んでもそのあとを追ってくる感じ。こういうニュアンスが出ればいいかと。それで不意に「he saw his tracks and there were another pair」なんですね。ですから雪の中をこけつまろびつしていると、自分の来た時の足跡が目に入る。そしてその脇にもう一組の足跡「another pair」があるという感じ。この辺は視覚的にとらえるといいですよ。自分が映画監督にでもなったつもりで。そうすると臨場感のある訳文ができると思います。それで「he spun around wildly」ですからこのwildlyは「激しく」くらいの意味。「あわてて」とか「急いで」とかでも良さそう。「慌てて振り返り、バランスを崩して、銃を落としてしまった」わけですね。ここで大切なのは、訳文にリズムがあること。特に地の文ですから、読みにくいととてもつらいです。

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