訳者・布施由紀子さん『魔術師と予言者 2050年の世界像をめぐる科学者たちの闘い』

『魔術師と予言者 2050年の世界像をめぐる科学者たちの闘い』
チャールズ・C. マン 著
布施由紀子 訳 紀伊國屋書店
出版社HP Amazon

国連の推計では、2050 年の世界人口は100億人近くに達すると見込まれています。天然資源の減少、食料不足、温暖化など懸念材料が山積みのなか、果たして地球は持ちこたえられるのでしょうか。

もっとも、人類がこうした不安に直面するのははじめてではなく、すでに産業革命の時代から多くの科学者が問題解決に取り組んできました。本書の著者チャールズ・C. マンによれば、これらの科学者の立場は、地球環境の限界を予測してその範囲内で生きる道をさぐる「予言者」派と、科学の力で限界を乗り越えようとする「魔術師」派の二派に分かれるそうです。本書では、それぞれを象徴するふたりの米国人科学者を取り上げ、その生涯と思想の軌跡をたどりつつ、古今、両派の科学者が地球の未来のために苦闘を重ねた歴史を描き出します。そして魔術師派にも予言者派にも加担することなく、食料、水、エネルギー、気候変動の四つのテーマごとに両者の主張を吟味し、資源と環境をめぐる問題の本質を明らかにしていくのです。

わたしたちは子や孫の世代のために何をなすべきか。それを考える手がかりをくれる一冊です。

 

通訳・翻訳ジャーナル2022年夏号より転載☆