
訳者・村井理子さん『イントゥ・ザ・プラネット―ありえないほど美しく、とてつもなく恐ろしい水中洞窟への旅―』
『イントゥ・ザ・プラネット―ありえないほど美しく、とてつもなく恐ろしい水中洞窟への旅―』
ジル・ハイナース 著
村井理子 訳 新潮社
出版社HP Amazon
本書は洞窟ダイバーで水中探検家、作家、写真家、映画監督のカナダ人女性、ジル・ハイナースの生涯を描いた一冊だ。カナダのトロント生まれのジルは、幼少期から探検が大好きな少女だった。大柄で運動神経が良く、学業成績も優秀だったが、その恵まれた体格ゆえ、いじめの標的となった。彼女が最も自由になれたのが水中で、両親はそんな彼女に探検が出来る自由な環境を与え、のびのびと育てた。
大学への進学をきっかけに親元を離れたジルは、幾多の困難に見舞われながらもグラフィック・デザイナーとして成功を収める。しかし、誰もがうらやむ生活を送りながらも、心が満たされなかった。どうしても水の世界への憧れを捨てきれなかったのだ。そこでジルは、築きあげたキャリアをすべて投げ打って、ダイビングの世界へ足を踏み入れていく。
師であり、後に夫となる洞窟ダイバーのポール・ハイナースとの出会いを経て、ジルは水中洞窟の世界に魅了されていく。最新の技術を用いて海底洞窟に潜り、地上に映像を送るという危険な使命に、彼女は人生を賭けることとなる。
様々な出会い、別れ、完全なる男社会で唯一の女性ダイバーとしての葛藤。何度も命を落としかけてもなお、潜り続けるジル・ハイナースの強靱な肉体に秘められた大いなる野望を目撃してほしい。
☆通訳・翻訳ジャーナル2022年春号より転載☆