訳者・小川敏子さん『デタラメ データ社会の嘘を見抜く』

『デタラメ データ社会の嘘を見抜く』
カール・T・バーグストローム、ジェビン・D・ウエスト 著
小川敏子 訳 日本経済新聞出版
出版社HP Amazon

ネットを通じて怪情報が拡散するのは、あっという間。もとはまっとうであったはずのものが、報道の過程のどこで偽情報や誤情報に変わってしまうのか、デマが入り込む余地がどこにあるのかを本書では丁寧にひも解いていきます。デジタル化が進み情報化社会に生きる限り、私たちを惑わせる怪情報がなくなることは、残念ながらなさそうです。ゼロになるなどといったら、それこそデタラメになる。本書の最初に登場するシャコはパンチ力をちらつかせて相手を惑わすくらいのテクニックですが、人間は……。

本書の狙いは、情報に数値をからめてこちらを納得させようとする相手に立ち向かうスキルを身につけること。長年大学でデータサイエンスや統計学などを教えてきた著者は豊富な例を挙げ、「データ」や「エビデンス」の背後にあるしくみを解き明かしていきます。理系の話が多いけれど、どこかほのぼのとしたムードがあって、とっつきやすい。

統計学や計量経済学にくわしくなくても、データサイエンティストでなくても、詳細なデータセットがなくても、情報の目利きになるためのすぐれたツールとしてお勧めします。

 

☆通訳・翻訳ジャーナル2021年秋号より転載☆