通訳業界で約50年の実績を誇るサイマル・グループの通訳者・翻訳者養成校
優秀な受講生にチャンスを提供するキャリアサポートも万全

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通訳者養成で実績あるサイマル・アカデミーでは、段階的に「通訳コース」と「会議通訳コース」を設置している。ともに経験豊かな一線級の通訳者が講師を務め、現場の経験に基づいた実践的ノウハウを徹底指導。グループ力を生かしたさまざまなキャリアサポートにより、実力ある通訳者を多数、国際舞台に送り出している。

訪問クラス 通訳者養成コース「会議通訳Ⅰ」

同通ブースに入り本番さながらの訓練に挑む

サイマル・アカデミーの会議通訳コースは「実践」を重視したカリキュラムを特徴としている。レベルの異なる2つのクラスがあり、この日は見学するのは「会議通訳Ⅰ」。通訳コース「通訳Ⅳ」修了レベルを受講対象としており、同時通訳主体のトレーニングが行われる。すでに社内通訳などの仕事をしている人も受講する、レベルの高いクラスだ。

始業直後、講師の池内尚郎先生はまず、この日の演習メニューを紹介する。「一度音声を聞いてからブースに入って同時通訳をしてもらい、さらに初見での同時通訳にも挑戦していただきます」。全体が見えていれば、一つひとつのトレーニングに落ち着いて臨める。実力を出し切ってほしいという、池内先生のちょっとした気遣いだろう。

教材は、同時通訳者の草分けであり、長年サイマルで後進の育成にあたった小松達也氏と、アメリカ人ジャーナリストによる、戦後の日本社会をめぐる対談。池内先生は「同時通訳は『先読み』が大事。その点、対談は話の展開が読みやすく、教材として最適です」と補足する。この一言のおかげで、受講生たちは納得感と目的意識を持って、訓練に取り組むことができる。「わからない単語や意味の取れない箇所はメモしても構いませんが、原則、聞くだけにしてください」。池内先生はそう注意点を伝え、音声を流した。

日本語と英語のやり取りが13~14分続いたところで、音声を停止。そして、わからなかった箇所を簡単に確認させた後、池内先生は「アウトプットのクオリティは二の次。遅れることなくメッセージを出し続けることを心がけてください」とアドバイスして、受講生たちを教室後方の同通ブースへ送り出した。

6人の受講生が2人1組となり、3つあるブースにそれぞれ陣取る。先ほどと同じ音声が流され、各ペアの1人目が同時通訳を開始。その間、池内先生はヘッドセットを通してパフォーマンスをチェックする。そして、6~7分が過ぎたあたりで「交代してください」と指示。各ペアとも2人目が引き継ぎ、最後まで訳し終えると、今度は前後半の担当を入れ替え、また最初から同時通訳していく。

良かった点と改善点を講師が的確にフィードバック

「お疲れさまでした」。池内先生は座席に戻った受講生たちにねぎらいの言葉をかけ、一人ひとりに対して、丁寧にフィードバックしていく。

「短く切って積み上げていくことで、遅れずについていけたのが良かったです。ただ、発話がはっきりせず、ご自分で何を話しているか把握しながら発信できているのかなと感じました」「遅れまいとする姿勢が素晴らしかった。ただ、英語をそのままカタカナで出しているところがあったので、『ドラフトされて』ではなく『徴兵されて』にするなど、日本語で出せるものは出すようにしましょう」

どこが良くて、どこが問題だったか。池内先生は必ず両方をセットにしてコメントしていく。ほかに問題点として挙がったのは、「用語や表現が適切でない」「要約あるいは作文になっている」「テンポがいまひとつ」など。こうした客観的な指摘が、スキルを伸ばす上で大事な指針となっていく。

訓練は続く。冒頭の予告通り、訳し終えた先を音声を聞かずに初見で同時通訳するという。ふたたび同通ブースに入り、ハードルの上がったトレーニングに挑む受講生たち。訳し終え、安堵した様子で席に戻った受講生たちに、池内先生は感想を求めた。「アタマがフル回転」「英語のスピーチが速くて、ついていくのがやっと」「同じことの繰り返しが多く、逆に何が言いたいのかわからなくなった」などなど。高揚感と安堵感がそうさせるのか、同意する声や「自分はこうだった」といった発言があちこちから上がる。クラスメートと共感しあうこんな時間も、厳しい訓練を続ける上では大切なことなのかもしれない。

興奮が収まると、池内先生は先ほど同様、丁寧にフィードバック。そして「デモをお見せします」と同通ブースに移り、通訳を披露した。話す速度は一定で、情報が整理されていてわかりやすく、とても聞きやすい。ベテラン通訳者の訳出と自分の訳出はどこがどう違うのか。受講生たちには、非常に参考になったに違いない。

実践につぐ実践の2時間だったが、受講生たちは挑戦することを楽しんでいるようにも感じられた。この雰囲気なら、そう遠くない将来、それぞれの目標をきっと達成できるだろう。

講師コメント

通訳者養成コース 「会議通訳Ⅰ」 池内尚郎先生 いけうち・ひさお 上智大学外国語学部ロシア語学科に学ぶ。国際交流や国際政策に関わる仕事を経て、サイマル・アカデミーで通訳を学び、会議通訳者に。政治・経済・文化・科学技術など、幅広い分野で活躍中。

通訳者養成コース
「会議通訳Ⅰ」
池内尚郎先生
いけうち・ひさお

上智大学外国語学部ロシア語学科に学ぶ。国際交流や国際政策に関わる仕事を経て、サイマル・アカデミーで通訳を学び、会議通訳者に。政治・経済・文化・科学技術など、幅広い分野で活躍中。

通訳は「知力」が求められる仕事
焦らずたゆまず、学び続けることが大切です
「会議通訳Ⅰ」の目標は、「聞きながら訳し続ける」という同時通訳の基本スキルの習得にあります。とても難しく「慣れ」が必要な技術であるため、逐次通訳をした後に同時通訳を行うところからスタートし、段階的に難度を高め、同時通訳できるレベルに引き上げていきます。同時通訳の訓練に移行した後も、速すぎない教材で十分に演習を重ね、速さへの対応力もしっかり養います。

通訳者を目指すことは容易な道ではありません。ですが、サイマルには効果的で実践的なトレーニング法が用意され、現役通訳者が長い経験の中で培ったノウハウを教授しています。大変であることに変わりはありませんが、効率よく必要な通訳技能を高めていくことができるでしょう。

会議通訳者には、瞬時に理解する力と簡潔に表現する力が求められます。プロは日々の仕事を通してこれらを鍛えていますが、どんなに経験を積んでも、常に100点満点の通訳ができるわけではありません。難しい仕事ですが、だからこそやりがいがあるのです。

通訳は「国際コミュニケーションのインフラ」ですが、個人的には知的な刺激を得られる点におもしろさを感じます。とはいえ、各界の専門家であるスピーカーの言葉を訳すには、相当な知力が必要。いろいろなことに興味を持ち、焦らずたゆまず、コツコツ勉強していく姿勢が求められます。

私の敬愛するある英文学者は、翻訳について「生涯、孜々(しし)として勉強を続けること」が大事だと述べています。これは通訳も同じです。理想的な通訳を追い求めて、やむことなく研さんを重ねていってほしいと思います。