実績豊富な現役翻訳者がプロに必要なノウハウを教授
グループ会社との連携により充実したキャリアサポートを提供する

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語学のプロフェッショナル人材を多数輩出し続けるサイマル・アカデミー。翻訳者養成コースでは英日クラスと日英クラスを設置し、経験豊かな現役翻訳者が実践的なスキルとノウハウを丁寧に指導している。グループ会社と密に連携したサポート体制も充実。市場ニーズに応える優秀な人材の育成に力を入れている。

訪問クラス 翻訳者養成コース「産業翻訳 日英プロ科〈行政・経営〉」

英語ネイティブ講師が“日本語の読み方”を説く

訪問した「産業翻訳日英プロ科〈行政・経営〉」は、行政の刊行物や企業のIRレポートなどを課題に、日本語特有の表現を的確に英語で表現する翻訳力を養うクラス。英語ネイティブの翻訳者が講師を務め、授業は英語で行われる。この日は、行政関連の翻訳で豊富な実績を持つピーター・ダーフィー先生のクラスを見学した。

始業時間の午後7時、さっそく前回提出した課題の講評が始まる。原文は製薬企業の株主通信。ダーフィー先生は受講生たちの訳文を踏まえ、桁が大きかったり小数点を含んだりする数字を英語にする際の注意点、パーセントとポイントの違い、「ニーズ」というカタカナ語の訳し方などについて、丁寧に解説していく。

また、株主通信のような企業のレポートを訳す場合、その企業のほかのレポートの英訳版を参照し、そこで使われている訳語を流用すると間違いがないとアドバイス。現場での経験に裏打ちされた実践テクニックを教えてもらえる点も、プロの手ほどきを受ける大きなメリットだ。

続いては、この日提出する課題についての討議。原文は、リニア中央新幹線の開業について説明した自治体の行政計画資料。ダーフィー先生は「本県は東京圏に隣接し」という文言に着目し、「『東京圏』とはどこですか?」と疑問を投げかける。なぜ東京「都」ではなく「圏」なのか、「都心への通勤圏」の意味ではないかなど、日本人なら何の引っかかりも感じない1語をめぐり、ひとしきり議論が続いた。

Tokyo areaと訳しただけでは、日本をよく知らない外国人に「東京圏」の意味するところは伝わらないだろう。英日翻訳なら読み手の立場になって訳すことは比較的容易だが、日英翻訳はそうはいかない。だからこそ、読み手の気持ちがわかるネイティブ講師に学ぶ意味がある。

多彩なアクティビティで伝わる英訳力を養成

このクラスでは、英文記事を読んで英語でサマリーを書く宿題も課されており、授業では課題記事の疑問点を話し合う。この日の課題は、巨大IT企業をめぐる論説。this had unleashed unprecedented surveillance possibilities という箇所について、ある受講生が「このunleashedはincreasedの意味ですか」と尋ねると、ダーフィー先生は「ここはmade it possibleの意味。unleashには『危険なものを自由にする』というニュアンスがあり、書き手ががわざわざunleashを使ったのは……」と掘り下げて説明していく。辞書やネットを調べたところで、こうしたかゆいところに手が届く説明が見つかるはずもなく、受講生たちは非常に恵まれた学びの空間にいるのだと感じた。

授業の後半には、初見の原文をその場で翻訳するクラスワークも行われた。課題は、教職員の長時間労働の実態を伝えるレポート。指名された受講生が2文程度を口頭で訳し、ダーフィー先生の指摘を参考に訳文を修正していく。

ポイントになったのは、やはり「外国人が読んで理解できるか」という点。teachers at elementary, junor high, and high school(「小中高で働く教職員」)という受講生の訳を受けて、ダーフィー先生はまず英米での学校制度や学年の呼び方が日本とは違うことを説明。そのうえで「この訳でも伝わりますが、teachers in grades 1-12とするとスッキリするし、わかりやすい」とアドバイスした。

訳語をめぐる指導も多々あり、「『対応』をresponseとすると、相手からのアクションに対する反応に限定されてしまいますが、dealing withならあらゆる対応をカバーできます」などと指摘。また「国の議論」という文言について「governmental discussion, discussion in the National Diet, discussion within the Health Ministry など、いろいろな訳が考えられます」とし、曖昧な日本語の真意を見抜くことの大切さを説く一幕もあった。

2時間の授業中、受講生たちは積極的に発言していた。おそらくそれは、講師への信頼の表れ。ダーフィー先生から多くを学んでいるに違いない。

講師コメント

翻訳者養成コース 「産業翻訳 日英プロ科〈行政・経営〉」ピーター・ダーフィー先生 高校時代を日本で過ごす。米カリフォルニア大学バークレー校卒業(日本語専攻)。1996年に海外向け刊行物を扱う出版社に入社し、外交・政治・経済分野の英訳を手がける。現在はウェブサイト「Nippon.com」で日英翻訳・編集に従事している。

翻訳者養成コース
「産業翻訳 日英プロ科
〈行政・経営〉」
ピーター・ダーフィー先生

高校時代を日本で過ごす。米カリフォルニア大学バークレー校卒業(日本語専攻)。1996年に海外向け刊行物を扱う出版社に入社し、外交・政治・経済分野の英訳を手がける。現在はウェブサイト「Nippon.com」で日英翻訳・編集に従事している。


改善の方向性をフィードバックし一緒に考えていくのが私の指導スタイルです

産業翻訳日英クラスでは、現役翻訳者である英語ネイティブ講師が指導にあたります。目標は、優秀な日英翻訳者の育成。日英翻訳は旺盛な需要がありながら人材が不足しているため、本コースの優秀な修了生をサイマル・インターナショナルに推薦し、実務未経験でも登録できるチャンスを提供しています。

本科では行政と企業それぞれ1つの刊行物を取り上げ、翻訳演習を行います。政府機関には政府機関の好む英文があるので、そういったポイントもお教えします。「こう訳しなさい」といった押しつけの指導はしません。もっと簡潔に表現できないか、もっとスムーズな文章に改められないかなど、改善のための方向性をフィードバックし、一緒により良い訳文に仕上げていくのが私のスタイル。そのほうが、生徒さんの力を効果的に伸ばせると考えています。

翻訳者は、原文の書き手以上に言葉を深く考えなければなりません。「指摘されている」とあったら、誰が指摘しているのかを考える。政府関係の文書であれば、調べていけば必ず省庁などの「指摘した主体」に行き当たります。曖昧になりがちな日本語の意味を考えることはパズルを解くのに似ており、それが日英翻訳のおもしろさであり、難しさでもあります。

AI翻訳が進化していますが、書き手の意図を考え、読み手に応じて言葉づかいや文体を変えて翻訳することができれば、機械翻訳に仕事を奪われることはありません。英語や言葉が好きであれば翻訳に適性がありますので、ぜひチャレンジしてほしいと思います。