先進的な指導メソッドときめ細かな個別フォローで
プロの映像翻訳者を育てる

naruhon2019_honyaku_JVTA_zyugyou

多様化する映像翻訳市場の最新ニーズに応えるべく、未経験からでもプロになれる効率的なカリキュラムで、オールラウンドに活躍できる人材を育成している。就業支援部門「メディア・トランスレーション・センター(MTC)」の一体運営により、修了生のプロデビューまでを徹底フォロー。OJTを軸とする手厚いサポートも大きな特徴である。

訪問クラス 英日映像翻訳科「総合コース・Ⅰ」

ドキュメンタリーの字幕を作成し映像に載せて検証

英日映像翻訳科「総合コース・Ⅰ」は、映画やドラマ、ドキュメンタリーなどを素材に、字幕や吹替などの多様な映像翻訳手法を楽しく学ぶビギナー向けのコースだ。全16回のバラエティに富んだ講義を受講することで、プロとして求められるスキルを基礎から身につけることができる。今回は、映像翻訳者・杉田洋子先生による「字幕翻訳の演習①」の授業をレポートしよう。

受講生はすでに、「字幕翻訳のルール」「字幕翻訳の基礎」などの講義で字幕翻訳について学んでいる。この日の課題は、それらの基礎知識を踏まえて、動物に関するドキュメンタリーの冒頭約3分の字幕を作るというものだ。課題は講義の2日前までに提出することになっているので、当日は、受講生が作った字幕を実際の映像に載せて視聴することができる。「映像と字幕を同期させると、より客観的に見られるようになります。映像に載せて初めて違和感に気づくこともありますから、その点も注意して見ていきましょう」との杉田先生の言葉を合図に、全38枚の字幕を6つのパートに区切って具体的に確認していくことになった。

教室のモニターで映像が流され、画面には受講生が訳した原稿が字幕になって現れる。1パート分の長さは時間にして30秒程度で、決して長くはないのだが、字幕制作には「1秒4文字」「横16文字×2行」など特有のルールがあり、ビギナーにとっては楽しくも挑みがいのある課題となったようだ。

推敲の際の観点を身につける

授業は、1パートにつき2~3人の字幕を流し、重要な情報が選択できているか、訳は適切か、スタイルは守れているか、字幕と映像がマッチしているか、などの観点で検証する形で進む。映像を見た後、字幕を作成した受講生が感想や疑問、字幕を作るにあたって悩んだ点などを述べ、それに対して杉田先生から適切かつ丁寧なフィードバックがある。

ほとんどの受講生に共通しているのが、どこまで原文に忠実に訳すべきか、という悩みだ。読みやすさ、聞きやすさが重視される映像翻訳では、自然な日本語にするために意訳することがあるが、そのさじ加減が難しい。杉田先生はこの点について、「原文に忠実であることと、視聴者に伝わる訳であることは、同じくらい大切な柱です。ただし、一言一句、忠実に訳すことで生じるデメリットが、メリットを上回る場合は、伝えることを優先して大胆に意訳する勇気も必要」とし、原文の意図を汲んだ意訳であれば挑戦してみるよう助言した。

続いて杉田先生は、人称代名詞について解説を加える。原文で動物に対して〝he〟を使っていたため、訳語に「彼」と訳した受講生が多かったが、通常、このようなドキュメンタリーでは、動物に対して人称代名詞は使わないとのこと。「人間の代名詞を動物に使うことに違和感を抱く視聴者もいますし、どちらを指しているのか紛らわしくなります。動物を擬人化しすぎないように気をつけましょう」と注意を促した。

このように、クラス全体に向けてアドバイスを送る一方で、杉田先生は個々の受講生の字幕についても要点を押さえたコメントをしていく。男性のセリフを女性のセリフと勘違いして、語尾に「よ」をつけた受講生には、「聴き取りにくい場面では、特に音声をよく聴いて、誰が発言したのか確認するようにしましょう」。一つの文章を2枚の字幕に分けた受講生には、「1枚目と2枚目の間が5秒も空くので、待たされている感じがします。一文を2枚の字幕に分ける場合、字幕と字幕の間は1秒程度が限度。できるだけ文章を分けないで、1枚で言い切ったほうがいいですね」。

訳文の講評にとどまらず、杉田先生は折にふれて字幕のレイアウトや書体、記号の使い方などについても実践的な解説を行う。字幕翻訳の基礎を学ぶ講座ではあるが、現役の映像翻訳者から直接指導が受けられるので、受講生には「プロの仕事」を体験できる貴重な時間になったようだ。

「なんとなく字幕を見直して推敲を重ねても、同じミスを繰り返してしまいます。今日は、自身の処方箋となるような観点を一つでも多く持って帰ってください」と締めくくった杉田先生。本講義を通じて受講生は、視聴者に伝わる字幕を作るための、たくさんの観点を身につけたことだろう。

講師コメント

英日映像翻訳科「総合コース・Ⅰ」
杉田洋子先生
すぎた・ようこ

JVTA修了後、フリーランスの映像翻訳者に。同校の就業支援部門・MTCのディレクター時代は主にドキュメンタリー番組を担当。現在はドキュメンタリーの吹替版制作やスペイン語の翻訳を中心に活躍している。手がけた字幕作品は、長編映画「笑う故郷」「シュガー・ブルース 家族で砂糖をやめたわけ」など。

自分の字幕を客観的に評価するための観点を身につけましょう

英日映像翻訳科「総合コース・Ⅰ」では、映像翻訳に携わる現役プロが、さまざまなテーマで講義を行い、映像翻訳の基礎知識と翻訳スキルをお伝えします。全16回のうち私が担当する「字幕翻訳の演習①」は、演習を通じて字幕翻訳のルールをすべてクリアにすること、そして、自分の原稿を客観的に評価できる目を養うことを目的にしています。自宅で推敲を重ねて提出した原稿も、改めて大画面で見ると、改善すべき点がハッキリしてきます。自分の訳のどこが問題なのか、その原因は何なのか、どうすれば解決するのか、ということを具体的に考えられるようになるためにも、講義の中でできるだけ多くの観点を身につけていただきたいと思います。

字数制限など特殊なルールがあり、また、時として大胆な意訳が必要になる映像翻訳は、プロを目指すのであればスクールで学ぶことが一番です。勉強すればするほど、翻訳の難しさも調べものの重要性もわかり、一文を訳すのにも時間がかかるようになるものです。スクールで学ぶことによって、かつて何気なく翻訳していた時より時間がかかるようになったら、それは成長した証です。

動画配信のコンテンツが増えるに伴い、映像翻訳者が活躍できる場は確実に広がっています。私自身、スペイン語の映像翻訳者を目指して当アカデミーで学び、スペイン語と英語の映像翻訳者になりました。チャンスはたくさんありますから、英語の方も他言語の方も、興味のある方はぜひ日本映像翻訳アカデミーに来てください。私たちと一緒に映像翻訳を学びましょう。