第一線で活躍中の翻訳者やディレクターらが徹底指導
映像翻訳のプロを多数輩出する東北新社の映像翻訳スクール

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海外映像コンテンツの日本語版制作で業界随一のシェアと歴史を誇る「東北新社」が、人材育成を目的に設立したスクール。ここでは現場と直結した知識・技術を段階的に学習し、即戦力としての人材育成を目指している。東北新社グループの強力なバックアップもあり、学習面、就職面ともに本気でプロになりたい人には恵まれた環境だ。

訪問クラス 映像翻訳科「Basic Class」

個々のセリフにとらわれず根底にあるテーマを探る

映像翻訳とは、映画、ドラマ、ドキュメンタリーやDVDの特典映像など、海外で作られた作品やメディアに日本語字幕や吹替を入れること。Basic Class は、この映像翻訳のスキルを基礎から学べる入門コースだ。今回の授業は林完治先生による字幕翻訳演習。数々の劇場字幕を手がけている林先生の授業は、知識や技術指導はもとより、自身の体験や現場の実情など、まさに生きた情報に触れられる絶好の機会でもある。

この日の教材は、アメリカ有名監督のミステリー系ドラマの映画。林先生が映画についての概要や周辺知識を簡単に説明してから、まずは全員で年配の男性二人がメジャーリーグの話をしている冒頭およそ40秒の映像を鑑賞する。

この男性二人の会話の字幕を作るのが今回の課題だが、会話の後ろで本編とは直接関係のないラジオの音も流れている。本来、英文スクリプト(台本)がなければ字幕は入れない。だが、吹替の場合は台本がなくても、そういう音声も「それっぽく」訳さないといけないため、作品の年代や地域、文化などの基本的な情報は常に理解しておく必要があるという。
「例えば、アメリカ映画なら、メジャーリーグ、ホッケー、アメフト、バスケットボールの4大スポーツは避けて通れませんね。舞台の背景として出てくる場合が多いんですよ」と林先生。映画のバックボーンがわからなければ、いかに本編のセリフをうまく訳しても作品の根底にあるテーマは伝わらない。
「ですから、翻訳者は好奇心が旺盛で引き出しが多くないと務まりません。言葉に対する興味もその一つ。私もテレビを観る時はいつも国語辞典をそばに置いて、簡単な単語でも使われ方に疑問を持ったらすぐに辞書をひくようにしています」。

日本語が母国語の人に向けて書くものだからこそ、標準以上の日本語が求められるのだ。

受講生が作った字幕を映像に載せて視聴

次に台本の台詞一つひとつを映像と照らし合わせて確認する。林先生はその都度、日本語訳の注意点やコツを解説。例えば、単位はどこまで日本語に訳すか(ドルは円に直さない場合が多いが、そのほかの通貨は日本円に直すケースが多い)、数字はどこまで正確に記載するか(作品上、台詞の数字を正確に字幕に載せるべきかどうか)など。

ここまで1時間かけて字幕作りのヒントをレクチャーしたところで、いよいよ受講生が字幕に挑戦。制限時間は30分。先着1名には、教材映像に自身の字幕を載せて講評を受けられる特典つきだ。ルールは台本に記された日本語の字数制限と、林先生から出された「マスト語句」(今回は会話に出てくる野球選手の名前など)を入れて作ること。そうして締切時間となったところで、一番に課題を終えた受講生による字幕を観ながら添削指導が始まった。

今回のシークエンスは野球ファンの男性が今夜の試合について話すくだりで、ひいきチームの豪腕投手が登板するとわかった後、「Goddamn Cuban!(6)」(カッコ内は日本語の指定字数)という一文があった。直訳すれば「キューバ人が!」という具合だが、これだと人種差別的な発言ともとられかねない。では、どうするか。

映像に載った受講生の訳は「あの怪物め!」。これはいい、商品的にもこのへんに落ち着くのでは? と林先生。また、ほかの受講生による「キューバの神!」は、「意味はいいけれどセリフ的にはボツだね」。「キューバ万歳!」「ビバ キューバ!」には「工夫は感じられるが採用はされない」など。いろいろな解釈があるのは良しとしながら、採用されるかどうかの見極めのコツを受講生や自身の例を出して説明した。

こうして13枚の字幕例を受講生全員とともに作ったところで授業は終了。最後に、字幕の心得として林先生はこう結んだ。
「限られた文字数の中でどこをとるかは訳者が決めることです。翻訳はオリジナルを効率良く伝える手段ですが、〝too much〟はダメ、一歩控えめがちょうどいい。そして何より、場当たり的に訳すのではなく、テーマに集約された一体感のある訳を目指してほしいですね」

講師コメント

映像翻訳科「Basic Class」
林完治先生
(はやし・かんじ)

大学時代より菊地浩司氏のもとで字幕制作および翻訳の仕事に携わる。その後、渡米。2年間のアメリカ遊学を経て30歳の時に字幕翻訳者として独立。代表作は(劇場字幕)「マイティ・ソー バトルロイヤル」「スパイダーマン:ホームカミング」「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」「24」シーズン3~ファイナルなど多数。

さまざまな映像作品に触れて引き出しを増やし、
映像翻訳独特の文化を学んでください
映像翻訳のプロを目指す方はもちろん、とりあえずやってみようという方もたくさんいるので、楽しい授業にしようと心がけています。また、Basic Classは映像翻訳を学ぶ最初のクラスですから、自分がこの仕事に向いているかどうかを見極める機会にしていただきたいと思っています。例えば、字幕翻訳には1秒4文字というルールがありますが、「字数がこれで、英語がこれだからこの訳文にする」といったことだけにとらわれると訳がブレてしまいがちです。それは、本質的にその作品を理解していないから。すべての訳が作品のテーマにつながるように意識していれば、あとは字数を調整する技術を磨くだけ。その、訳さなければならない台詞を、指定の字数に収める技術をここで学んでいただくわけです。

映像翻訳者になるために最も大切なことは「映像が好き」であることにほかなりません。映画の字幕翻訳者を目指す人なら、できるだけ多くの作品を映画館で観てほしいですね。映画の字幕は本来、スクリーンの大きさを意識して作られているものですから。

当校は映像が好きなすべての方に門戸が開かれているので、チャンスをつかむためにはとてもいいスクールだと思います。ただし、逆にいえばたくさんの人が入ってくることで競争は激しくなっていますから、映像作品を観る、知識の引き出しを増やす、日本語にアンテナを常に張る、など日々の努力をどれだけ積み重ねられるかが大切です。ぜひ頑張っていただきたいですね。