第一線で活躍中の翻訳者やディレクターらが徹底指導
映像翻訳のプロを多数輩出する東北新社の映像翻訳スクール

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映像テクノアカデミアは日本語版制作の老舗・東北新社が運営する映像翻訳スクール。活性化する映像翻訳ニーズに応えるべく、一線級の翻訳者や制作スタッフがプロ必須のノウハウを実践指導している。講義や演習に加え、「アフレコ実習」「SST-G1を使った字幕講評」などの特別授業も実施。東北新社が行う翻訳者採用試験を経て、多数の修了生がプロデビューしている。

訪問クラス 映像翻訳科・Basic Class

ハコ割りのやり方を
現役翻訳者が細かく実演
 映像翻訳科本科は、Basic Class(半年)、Intermediate Class(半年)、Advanced Class(1年)からなる2年間のコース。字幕・吹替・ボイスオーバーのスキルやプロ必須の知識を習得し、Advanced Classを修了すれば東北新社のトライアルを受験できるという。では実際にどんな授業が行われているのか、今回は起点となるBasic Classを見学した。

 今期はすでに字幕の基本をさまざまな観点から学んでおり、この日のテーマは「ハコ割り」。講師を務めるのは、東北新社社内で字幕・吹替を手がける川又勝利先生だ。

 先生はまず、配布資料をもとに字幕制作全体の流れを解説。その中で翻訳者が担う工程、特に「ハコ割り」について、より踏み込んで説明していく。
「スクリプトを見ながら音声を聞き、台詞のどこからどこまでを1枚の字幕にするかを決める作業です。具体的には、ブレスや意味の切れ目に斜線を引き、番号をふります。字幕の枚数は120分の映画なら1500枚前後と思ってください」

 演習に使う教材は、2000年代を代表する名作映画の冒頭シーン。字幕なしの映像を見た後、スクリプトで内容を確認すると、先生は書画カメラを使って手元のスクリプトを大型モニタに映し出した。そして右手に鉛筆を持ち、ハコ割りを実演していく。
「斜線は台詞のお尻ではなく頭に入れますから、まず最初の台詞の頭に斜線を入れて①と字幕番号を振ります。実際に音声を聞いてみると、最初の台詞はここでちょっと切れるので、また斜線を入れて②と番号を振る。頭で切って頭に番号を振るというのがポイントです」

 こういった感じで、2つに区切ったものを1つに結合したくなったらどうするか、逆に分割したくなったらどう訂正するかなど、さまざまなケースでのハコ割りの仕方をその場で見せていく。百聞は一見にしかず。とてもわかりやすい。

ハコ割りに秒数計測
翻訳までを実践練習

 頭で理解したら、いよいよ実践練習。映像がもう一度流され、受講生たちは集中した様子でスクリプトに斜線を入れていく。

 ハコ割りが終わると、次は各ハコの秒数計測。先生は「100分の1秒まで測ること。出だしはどうしても遅れるので、最後の音をしっかり聞き終えてからストップウォッチを止めるように」と注意し、最初の台詞だけを計測させる。一人ひとり結果を訊ねていくと、4秒台前半が大多数。先生は「私の計測では4.72が適性数値。みなさん、止めるタイミングがちょっと早いようですね」とコメントし、再トライさせる。すると軒並み、数字が改善。一度やったことで、コツがつかめたようだ。

 その後、映像が繰り返し流されるなか、残るすべての秒数を計測する。全員が終えると、先生は「1秒=4文字、以降0.25秒毎にプラス1文字」「1秒以下ならアウト(字幕にしない)に、逆に6秒を超える場合は2つに分ける」などと助言し、字数を算出して翻訳するよう指示した(翻訳は専用の原稿用紙を使用)。

 シャープペンのコツコツ音が鳴り止んだころ、先生は参考訳を配布。1枚目の字幕から順に「ここは最初は2つに分けたが、訳しにくいので1つに戻した」「顔が映らない台詞だし、音もかぶるのでアウトにした」「ここはブレスがあるが、切ってしまうと次の台詞を作りづらい」などと説明していく。プロがどんな意図のもとにハコ割りをし、翻訳したか。その思考プロセスをたどるようで、とても参考になる。実際に自分でハコを割り、翻訳した受講生たちにとっては、ただ聞くよりも何倍も理解が深まったに違いない。最後にハコ割りに関するポイントを再確認し、2時間10分の授業は終了した。

 次回以降は、林完治氏や岡田壯平氏らベテラン翻訳者による字幕演習が続き、川又先生が再登壇して字幕の基本を総復習。その後、吹替翻訳の勉強に入っていく。この日の授業も含め、一線級のプロから教わったこと、体で覚えたことは、受講生たちの確かな財産となることだろう。

講師コメント

映像翻訳科・Basic Class
川又勝利先生
(かわまた・かつとし)

上智大学外国語学部英語学科卒。映像テクノアカデミアに学び、2001年(株)東北新社に入社。演出部字幕課を経て、現在は同社翻訳室の翻訳者として字幕・吹替を手がける。代表作に「ウエストワールド」「ゲーム・オブ・スローンズ」(TVシリーズ)、「GODZILLA ゴジラ」「キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー」(劇場公開映画)など。

大事なのは自分を信じて続けること
力があればチャンスにめぐり会える学校です
 「Basic Class」で字幕の授業を2コマ担当しています。初学者の方はそれぞれに期待や希望を抱いて勉強を始められますので、「字幕はこんな作業をする」というのをお教えし、皆さんにも実際にやっていただいて、楽しみながら基本的なスキルを身につけてもらえればと思っています。私も含め、翻訳者やディレクターらが入れ替わりで教壇に立ちますので、聞きたいことがあれば何でも質問してください。

 プロになりたいのなら、自分を信じて勉強を続けることが大事。その点、学校に通っていれば志を同じくする仲間がいるので、モチベーションを持続させることができます。ほかの人の訳にふれて様々なアプローチを学べるし、横のつながりもできる。当校の場合はさらに、東北新社が修了生だけを対象としたトライアルを行っており、いい成績を収めれば仕事をもらえるようになります。かつて私もそこに安心感を覚えて入学し、こうしてプロになりました。制作の現場では常に「いい翻訳者」を探していますから、焦らず着実に実力をつけていけば、いずれチャンスがめぐってくるはずです。

 映像翻訳者になって10年以上になりますが、今なお「難しい」というのが正直なところ。でもだからおもしろいし、続ける価値が大きいのだと思います。「なれるかどうか…」と二の足を踏んでいる人も多いと思いますが、体験授業を受けるなり、まずは学校をのぞいてみましょう。それで「おもしろい」と思えたなら、またひとつ進んで「Basic Class」を受けてみる。あまり気負わずに始めてみることをお勧めします。