医師の医学講義と通訳演習の2部構成

多数の会議通訳者を輩出するインタースクール。同校では医療通訳者(医療通訳士)の育成にも力を入れており、本格的な専門コースを開講している。

カリキュラムは、国内有数の国際外来を持つ医療機関が監修。医療現場のノウハウと、同校が長年培ってきた通訳者養成のノウハウとを組み合わせることで、きわめて実践的な医療通訳者養成プログラムになっている。

コースの中核をなす「医療通訳コース」では、医療現場で求められる通訳スキルと医学知識を1 年間で習得する。授業は、医師が各診療科目について解説するビデオ講義と、現役通訳者が指導にあたる通訳演習との2部構成。解剖生理学の基礎をまんべんなく学習すると同時に、医師と患者のやりとりを再現したスキットを通じて通訳演習に取り組む。「知識の習得」と「スキルの鍛錬」を並行して進めていくため、医療現場に即対応できる確かな実力を養うことができる。

成績優秀な修了生にはOJTや仕事のチャンスも

言語については、英語コースと中国語コースを設置する。どちらも前述した「医療通訳コース」に加え、ロールプレイ中心の上級講座「医療通訳Workshop」を開講。また英語コースにおいては、英語力強化に重点を置いた「医療英語コース」を用意し、英語力に自信のない人でも学習を始めやすいコース体系となっている。

受講者の内訳は、医師、看護師、薬剤師といった医療従事者や、医療分野を目指す現役通訳者、医療通訳に関心のある会社員や主婦など。毎期テーマが変わる「医療通訳Workshop」の場合、リピート受講をする人も少なくない。

成績優秀な修了生に対しては、母体の㈱インターグループと連携して積極的にサポート。2015 年に実施した病院でのOJT は参加者に大好評。今後も継続していくという。また、同グループの登録試験に合格した修了生には、医療通訳者として活躍できるさまざまな場を紹介している。

医療通訳のニーズは高まるばかり。医療通訳者の育成に力を入れるインタースクールは、医療現場からも「通訳者」からも注目されるスクールである。

講師インタビュー

通学講座医療通訳コース・医療通訳Workshop 長尾幸子(ながお・さちこ)先生 上智大学卒。インタースクール在学中から通訳の仕事を始め、1993年よりフリーランスに。現在、インタースクール東京校にて医療通訳コース、会議通訳コースの講師を務める。

通学講座医療通訳コース・医療通訳Workshop
長尾幸子(ながお・さちこ)先生

上智大学卒。インタースクール在学中から通訳の仕事を始め、1993年よりフリーランスに。現在、インタースクール東京校にて医療通訳コース、会議通訳コースの講師を務める。

医療の背景知識をしっかり学ぶ点が特徴です

医療通訳コースでは、通訳演習はもちろんのこと、通訳に欠かせない背景知識として医学・医療に関する知識も取り上げます。医師が監修した教材を用い、体の構造や各臓器の機能、病気だけでなく解剖、生理、病理にいたるまで学習できる通訳講座となっています。そのぶん、覚えることがたくさんありますので、動画やイラストなども用い、わかりやすく楽しく学べる授業を心がけています。

医師の言葉を理解するには、生理学や病理学、薬理学の基本知識が必要です。でも患者さんに通訳するときには専門用語は使えません。例えば、血栓が「移動する」ならtravel、「止まる」ならlodge。その状況を表すのに適した「一般的な動詞」を使い分ける英語力が問われます。こうした中学で習った動詞を使いこなせるかが、医療通訳の1つのポイント。もちろん知らなくて当然なので、とにかく「お手本」を真似しましょう。それが英語の表現力を身につける最善の方法です。

専門知識や単語については、何度も復習して覚える以外にありません。でも「忘れては覚え直し」を繰り返しているうちに頭に定着し、アクティブ・ボキャブラリーへと変わっていきます。

医療通訳のニーズは年々高まっています。制度はまだまだ未整備ですが、スキルさえ身につけておけば、整備されたときにすぐ第一線で活躍することができます。通訳者の方であれば、その知識をすぐ医薬関連の現場で生かすことができるでしょう。

「医療」というととても難しそうですが、「体や病気のこと」と捉えれば、いたって身近な問題です。ウイルス感染に細菌感染、高血圧などの身近な病気や、免疫の仕組みなどヒトの体について、正しい知識を英語と共に身につけることができます。興味があるなら、臆することなくチャレンジしてほしいですね。医療通訳には、その価値が十分あると思います。

受講生インタビュー

医療通訳コース 奥田洸子(おくだ・こうこ)さん 4年制大学卒業後、外資系金融機関に入社。その後転職し、現在は外資系コンサルティングファームに勤務。2010年にインタースクール「会議通訳コース」を受講し、2015年4月より同「医療通訳コース」に在籍。

医療通訳コース
奥田洸子(おくだ・こうこ)さん

4年制大学卒業後、外資系金融機関に入社。その後転職し、現在は外資系コンサルティングファームに勤務。2010年にインタースクール「会議通訳コース」を受講し、2015年4月より同「医療通訳コース」に在籍。

診察や検査で役立つ英語表現を学んでいます

外資系企業に勤めながら医療通訳コースに通う奥田洸子さん。以前、インタースクールの会議通訳コースに通っていたことがあるが、2015年4月に復学する際に「医療通訳」を選んだ。

「たまたま医師の方とお話をする機会があり、自分があまりにも医学に無知であることに気づき、勉強したいと思いました。そのときにふとインタースクールの医療通訳コースのことが頭に浮かび、好きな英語や通訳を絡めたほうが学びやすいかなと思ったんです」

授業が始まった直後は、見慣れない専門用語に苦労したそう。それでも単語テストに備えて勉強しているうち、語尾が-itisなら「~炎」、-ectomyなら「切除」といった規則性に気づき、覚えるのがぐっと楽に。語彙力も徐々に増え、辞書を引かずに英文資料を読んでも大意が取れるようになった。

通訳演習では、診察や検査に特有の言いまわしを学習。動詞は意外にも中高生で習うレベルの英語で通じることにも気づき、授業に出るたびに「表現の幅がどんどん広がっている」そうだ。「先生の指導はとても丁寧。私たちの英語がおかしいときに正してくださるのはもちろん、より適切な表現や言い換えなどを教えてくださいます。とても勉強になります」

理解するのが難しい医学テーマについては、講師がわかりやすい補助教材を用意してくれ、医師や看護師であるクラスメートが助けてくれることも。
「だから素人の私でも、興味を持って勉強を続けられるのだと思います」。まだまだ知らないことは多いが、このコースを受講して医学のことを学ぶスタートラインに立てた。

「専門用語も知識もだいぶ定着し、英語の文献を読むのが楽しくなってきました。しかし文献に書いてあることの本質を理解するには医学の背景知識をもっと理解しなければなりません。これからも地道に勉強を続けていこうと思います」