Vol.16 双子のバイリンガル教育(前編)
/通訳者 平松里英さん

同じ環境でも双子で違いが浮き彫りに

わが家の子どもは日本で生まれました。男女の二卵性双生児で、所謂「ゆとり世代」のど真ん中です。できるだけ英語で生活する場を設けようと、毎週、国際結婚した妻たちや夫の関係で日本に駐在している外国人のママたちとが集まって、当番制で子どもたちに英語で読み聞かせをしたり、遊ばせたりするプレイグループに出入りしていました。

保育園に入るまでは、家庭では英語で話しかけ、外では日本語、と両言語が飛び交う環境でしたから、「多言語環境の子どもは発語が遅い」と言われるとおり、2人ともことばを発するのはやや遅めでした。2人のうちでは、娘のほうが先でした。反省点として、読み聞かせでは失敗しました。男女の双子だったからでしょうが、2人で同時に全く異なる本を選んできて、自分の順番が先でないとむくれてしまうのでうまくいかなかったのです。親としての力不足を思い知らされました。もっと効果的なやり方もあったもあったのでしょうが…。

元夫の故郷である北アイルランドには毎年夏になると里帰りしていて、受動的な英語力はそれなりに備わっていたように思います。子供たちが4歳の頃、私の留学に帯同して渡愛。1年弱をアイルランドで過ごしました。幼かったため2人とも数ヶ月すると、お互いに英語で話しかけて遊んでいました。しかし、大変残念ながら、留学が終わり日本に帰ると、帰国後半年ほどですっかり英語を忘れてしまいました。けれども、無意識レベルでは脳が覚えていたのか、小学校を卒業して渡英したら、新しい環境に早く溶け込むために最初の1年でメキメキと覚え直していました。

英語教育と社会性を育むことのはざまで

父親は子どもたちがほんの幼い頃は英語で話しかけていたものの、離れて暮らすようになってからは、日本語でした。自分にとって英語は母語であるけれども、たまに会って話しても英語では通じ合わないため、あきらめてしまったようでした。

小学校に入ってからは、以前に増して人前で英語で会話することを嫌がるようになりました。それもあって、子どもたちの祖母(私の母)は、英語で話しかけるように何度も促してくれましたが、私としては周りがみんな日本語なのに隠語のように英語を使うことに抵抗があり、また母語である日本語での意思疎通を大事にしたい気持ちもありました。

悩んだ結果、小学校を卒業したら海外に移住をすることに決め、それまでは、公文と英検に向けた勉強で英語力を鍛えることにしました。なぜ小学校卒業のタイミングにしたのか。もっと早く、5年生の時に渡英することも考えましたが、「卒業式」という日本での節目を体験させたかったから。イギリスでは、教育における大きな節目は大学卒業で、盛大です。それまでの小さな節目には日本のようなセレモニーはありませんから。

なぜ家庭で英語を話さなかったかと言うと、英語が母語の家族がいなくなってしまった場所で、敢えて英語を話すこと、これは不自然なことですから、日本語よりも英語の方が大切と潜在的に本人たちが捉えてしまいはしないか、都合の悪いことはコソコソと英語で自分たちのあいだだけで話すようになってしまいはしないか…。英語を身に付ける代わりに社会性が犠牲になるような気がしたからです。

そんな中、普段使っている日本語のほうが話しやすいため、息子は次第に英語を使うのが億劫になり、嫌いになっていきました。娘のほうは、小学4年で英検3級、5年生で準2級に合格。進度という意味では順調だったのですが、毎日夜9時過ぎまで勉強させていましたから、本人も母親の私も、心身ともに辛かった。これについては、今思うと、少々厳し過ぎたかな、もっとゆったりと子育てはできなかったものかと、反省しています。

小学校低学年。日本にて。

 

渡英前。小学校高学年。