第4回 フリーランスで働く覚悟

1回から3回までは、通訳者として働く形は事業会社や組織に直接雇用される社員としての通訳者、派遣会社から事業会社などに派遣される通訳者についてコメントしてきましたが、今回は雇用ではなく、案件ごとに業務委託の形で通訳を受けるフリーランスとしての働き方について説明します。

会議通訳者は個人事業主

「将来通訳者になりたいのですが」と相談に来る方のほとんどは、国際会議の同時通訳ブースに入る会議通訳者をイメージされてきます。この会議通訳者は個人事業主であり、基本的にはフリーランスで働いています。
社員や派遣社員と比べて良い点は、案件ごとに自分で仕事を選択できるということです。仕事量の調節も休みも自分で決められます。実力と実績の世界ですので、年齢性別に関係なく報酬が決められます。指名の多い通訳者は、かなり高い年収を得ることも可能です。

ただし通常は、複数のエージェントに登録して仕事を受ける個人事業主となりますので、社会保険関連はもとより、税金は自分で確定申告をして納める形です。報酬は時給ではなく、案件ごとにエージェントから提示された条件となります。
フリーランス通訳者として働くうえでの特徴や重要な点は以下の通りです。

1.事前勉強が必要

フリーランスはなぜ時給ではないのでしょうか。その答えは、社員や派遣社員にはマンパワーとして報酬が支払われますが、業務委託される立場であるフリーランスには、その成果であるパフォーマンスに報酬が支払われるからです。言うなれば、準備勉強も含めて期待される成果を出すことに報酬をいただいているということになります。

したがって、期待されるパフォーマンスを出すために必要な準備は、通訳者本人の責任においてしなければなりません。エージェント経由であればエージェントにその案件固有の資料であるプログラムや原稿関連は要求して入手していくわけですが、分野の基礎知識に関する文献や専門用語辞書などは自分で調達する必要があります。また社内会議の場合であれば、その会社の基本的な知識についてはホームページから習得しておくことも必須です。

2.スケジューリングが難しい

案件は日程の早いものから順番に打診が来るわけではありません。数ヶ月先の案件が先に来ることも稀ではありません。その案件を受諾したあとに、日程が重複した案件の打診があることは日常茶飯事です。後から来た案件のほうがやりたかったということがあっても、一度受諾したものをお断りするのは信用問題となります。どんな理由をつけてもエージェント側にはわかってしまいます。
さらに毎日、通訳する場所も時間帯も異なりますので、前後の移動手段や時間、準備勉強時間も念頭に、自分のスケジュールを組んでいかなくてはなりません。案件を受けるときには十分な注意が必要です。加えて時間やスケジュールの変更もよくあり、その度に確認と調整が必要になります。

3.チームワークが大切

随行や短い時間の逐次通訳は1名で対応することが多いですが、対応時間の長いものや同時通訳は複数名で対応します。フリーランスなので、自分の分担だけしっかりやれば責任は果たしているので関係ないと思う方が多いと思いますが、それは違います。
クライアントは案件の成功に繋がる全体の成果を求めています。現場は自分の実力を評価してもらうコンテストの場ではなく、全体のパフォーマンスを満足してもらう場であることを心しなくてはなりません。02056e4b116ab293a03588b27e61f09a_m
詳しくは次回以降の、プロとしての振る舞いについて説明する部分で述べたいと思いますが、チームメンバーとなった通訳者をお互いにリスペクトし、それぞれが実力を発揮できるような環境や雰囲気を作る努力をすることが重要です。
同時通訳の現場ではそれぞれの能力の足し算の総和ではなく、チームワークで+αの成果を上げることもあり、逆に総和からマイナスの成果になってしまうこともありますので、ぜひ心に留めておいて下さい。

以上、フリーランス通訳としての主な留意点を上げましたが、大きな相違点は仕事の選択権があり報酬は高いが、個人事業主として自己責任の範囲が大きいということです。受けた仕事は責任をもって完了しなくてはなりません。病気やプライベートなアクシデントで簡単に休むことができないという覚悟が必要です。
次回はエージェントやクライアントとの付き合い方を含めてプロとしての振る舞いについて説明したいと思います。