第3回「派遣」社員としての通訳

通訳者のキャリア形成2017.12.15

前回は事業会社に直接雇用される社内通訳としてのキャリアスタートについて説明しましたが、今回は派遣会社から一定期間、事業会社に派遣されるケースについてご説明しましょう。

直接雇用と異なり配置転換は無いが契約終了も

毎日同じ会社に決められた時間に出勤する形が比較的多く、派遣先の指揮命令で業務を行いますので、一見、直接雇用されている社内通訳者と同じように思われるかもしれませんが、いくつか相違点があります。

まず、業務内容について直接雇用の場合は聞きにくいことも、派遣会社を通じて条件を含め確認できることができます。また社員と異なり契約がありますので、事業会社の都合で業務内容を変更されたり、配置転換もありません。

一方、契約期間であってもパフォーマンスが契約時点の要求水準と認められない場合や、勤務態度によっては一定の制約はあるものの契約終了という可能性もあることや、プロジェクトベースで派遣契約が交わされる場合は、プロジェクトの進捗状況に左右されることもあり、直接雇用の社内通訳者に比べると、地位や収入が安定しないということがあります。

派遣がおすすめのワケ・実績ができる

では今回、選択肢として「派遣」を勧める理由について説明したいと思います。
まず、海外の大学含めて大学や大学院で通訳の勉強をされた方や民間の通訳学校を修了した方々が、いざ通訳としてのキャリアをスタートさせようと思ったときに立ちはだかる壁が「通訳実績」です。

何故か、それはクライアントがスキルを客観的に判断できる物差しがないために、ほとんどが前回の「経験者」を希望するからです。その案件が初回であれば、同様内容の通訳実績のある通訳者を希望します。クライアントはスクール実績ではなく、具体的な通訳実績を重視し、実績を明示した書類なしに業務を依頼してくれることは稀になっています。

それではいつまでたってもデビューできないではないか、ということになりますが、すでに社会人経験があるのであれば、派遣という形で就業し、社内会議などの通訳実績を積みつつ、その合間に単発の仕事にチャレンジするという形をおすすめします。

業務内容は幅があるので事前によく確認を

一方派遣において留意しなくてはならないのは、いろいろな意味で幅があるということでしょうか。
3業務内容も通訳専業から翻訳が入るもの、秘書業務も付加されるものなど多様です。
派遣先によっては、社員も含めた通訳翻訳チームが編成されていて、その中で仕事をする場合もあります。その場合はチームワークが重要になり、社員との関係性で気遣いも要求されるでしょう。また社員と混合チームの場合は、社員同様、過酷な条件で通訳業務をする環境になるかもしれません。契約を盾に都度交渉を入れたり、断ると契約更新が難しくなったり、またチームなので仕事がやりにくくなるのではないかということも、あるかもしれません。

さらに、派遣が長く同じ会社で更新を続けていると、前回で説明した社内通訳者と同じスキル上の課題が生じるということがあります。業務に精通すればするほど1名で対応する時間も長くなり、外国人役員付の場合は片方向にスキルが偏るケースもあります。

また長期になればなるほど居心地もよくなり、フリーランスへのモチベーションが低くなるリスクもあります。もちろんフリーランスになることだけがキャリアではなりませんので、自分でどのようなキャリアを積みたい、どんな通訳者になりたいという目標があり、それに沿って努力できる状況ならばどんな形態でも良いと思います。

大切なのは、「自分がどのようにキャリアを積んで行きたいのか」ということです。フリーランスとして将来活躍したいのであれば、実績作りや勉強と割り切って数社経験を積むこと、さらに数業種トライすることはその後の仕事の幅を広げるために良いことです。
昨今、派遣とはいえ、クライアントの要求水準は高いものもあり、派遣でも通訳実績を求めるような場合も多くあります。数社経験後、さらに挑戦していくと、大きな会議やイベントの通訳の経験を積めることもあります。

最後に付け加えたいことですが、エージェントによっては派遣も業務委託も提供しているところがあり、その案件が派遣なのか業務委託なのか、確認して自分で納得した上で受諾することが必要です。それはクライアント自身がその差を明確に理解していないことも多く、就業してからのトラブルを避けるためです。

次回はその差も含めてフリーランスの業務委託で働くことに焦点をあてて説明します。