第5回 海外のエージェントについて

通訳者通信fromロンドン2017.07.31

4.相手の信用をどう調べるか、情報の入手方法

一番大切なのは、きちんと支払いをしてくれるかどうかでしょう。そこで、どう調べたらいいか。手っ取り早い情報源としてProzのBlue Board (http://www.proz.com/blueboard)というデータベース上のレーティングを調べるという手があります。こちらは私の場合は参考までにチラ見することはあっても、これだけで判断することはありません。

これ以外の方法としては、通訳職業団体に相談して調べてもらう(有料)、不払いの報告が集められているオンラインサービスを利用する(無料、有料の両方あります)、ブラックリストのようなデータベースがあるので、そこを見てみるなど。

ただし、インターネット上の情報の性として玉石混交であることは否めませんので、二つか三つ、複数の方法を複合的に組み合わせるといいと思います。デューデリジェンスですね。こうしてリサーチを繰り返しているうちに、どこの情報が信頼できるか、勘も養われていくことでしょう。

イベントスペースとは別部屋の仮設ブース。

イベントスペースとは別部屋の仮設ブース。

そもそも、そこまで手間をかける価値があるのか、と言われればそれまでですが(笑)案件によってはそこまでする価値があるものもありますよね。それに、初めてのエージェントであれば用心に越したことはないと思います。

現地の日本語通訳者・翻訳者はもちろん、他言語の同業者たちは当たり前のこととして、こういったリスクアセスメントおよびリスクマネージメントをしていますので、海外のエージェントに対して免疫を付けておくこと、自分なりに精査する術を身につけたり、習慣化することは、むしろ当たり前のことではないでしょうか。

*無料のデータベースの一例 「Translation Payments」 ※イギリスに限らず
*筆者も登録している有料のサービス「Payment Practices」 ※イギリスに限らず
*UKにある企業に関して調べられる「Experian Business Express」
英国翻訳通訳協会(The Institute of Translation & Interpreting(ITI))
UK以外の地域でも会員であれば個別に対応してくれる(有料:会費とは別途費用)
*ITIの会報過去記事に掲載されているBad Payer に関する一例

5.料金について

寄せられた質問の中に「大手のエージェントと、中小または個人エージェントだと料金に差があるか」「物価の高いイギリス、通訳料も高いのか」というものがありました。結論から言うと何とも言えません。

海外では、料金をエージェントから提示することはあまりなく、通訳者が料金を提示するからです。海外のエージェントの場合、私の経験では「あなたの通訳料金はいくらですか?」と訊かれることが圧倒的に多いわけです。あくまで通訳者からの提示ありきのようで、過去にこちらから「予算はいくら」と試しに訊いてみたことがあります。その時も「いやいや、あなたの料金はいくらか教えてくれ」と言われました。

金額に関しては、すぐに折り合える時もあれば、ほとんど交渉の余地がない場合もありますが、いずれにせよ、折り合えない場合はどうやって折り合いをつけるのか、はたまた決裂するのか。決裂するにしてもどういう着地の仕方をするのか、けんか別れするのか、ソフトランディングか、牛歩作戦か…。(忖度はこちらではあり得ません)

ネゴ中の態度や表現、タイミングなどに、その人らしさが必ず出ます。交渉力が重要になる所以です。例えば、時間当たりいくらと訊かれたら、正直に時間当たりの料金を提案するのか、時間当たりでは請け負いませんと断るのか、など。この辺りは奥が深いのですが、そういった駆け引きのなかで相手もこちらの経験や通訳以外のスキルを見極めようとしているということです。

ただ、エージェント側の交渉の仕方には会社によって色が出ます。アメリカの会社で米ドル建てでしか支払いをしないというスタンスのところもあります。また、アメリカのエージェントと契約するときにはW-8BENフォームという書類を書かされました。これは「Certified of Foreign Status of Beneficial Owner for United States Tax Withholding」という支払いを受ける本人が外国籍(外国にいる)ことを証明するもの。源泉徴収に関するもので、アメリカの歳入庁に提出される書類です。(アメリカの源泉徴収率は高いです!)

簡易ブースの中で通訳の合間に。筆者。

簡易ブースの中で通訳の合間に。筆者。

イギリスのエージェントで必ず(!)支払いが遅れるところもありました。報告では安定しているように見受けられましたので、払えないのではなく金利を稼ぐためにわざと遅らせているのかとさえ受け取れるような性悪なところでした。ただ、このような悪質なケースは多いわけではありません。私の経験では多少支払いが遅れることはあっても(残念ながら日本のエージェントのようにきっちりしていないところが多い)ちゃんと最初に精査してから取引を開始しさえすれば、最終的にはちゃんと払ってくれるところがほとんどですので安心してください。

次号もこの話題が続きます。お楽しみに!

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