第3回 在イギリス 日英通訳者の出張事情 ロンドン編

通訳者通信fromロンドン2017.04.20

今回は、通訳の仕事に付き物の出張についてお話ししたいと思います。出張には国内と海外があり、また、国内でも宿泊を伴うこともあれば日帰りのこともあります。そして、海外出張にも、たった1日のために赴くこともあれば、一週間を超えるものや、複数の国にまたがることも珍しくありません。

そこで、出張については前編と後編に分け、国内編・海外編でご紹介します。今回は前編の国内編ということで、ロンドン市内とそれ以外へ移動する通訳の仕事や交通事情について、個人の経験からではありますが、ご紹介したいと思います。

ロンドンならではの通訳現場

遠方への出張もありますが、通訳者としてはロンドン市内のあちこちを巡ります。通訳の仕事をしていて魅力だと感じることの一つに、普段は決して入ることのできない建物の中に入れることがあります(イギリスに限ったことではありませんが…)。

ロンドンではどのような建物に入る機会があるかというと、例えば、普段はテレビのニュースでしか見ない首相官邸であるとか、財務省など各種官庁の入っている建物で、それらはどれもとても古く歴史のある荘厳な建物で、まるで博物館のようです。

ロンドンの市庁舎は現代的なロンドンを味わうことができ、由緒ある迎賓館やホテル、他にも教科書に出てくる有名な部署のあった部屋など、安全警備の厳しい場所・建物に出入りすることもあります。通訳の仕事をしていなければ、入る機会はまずない場所ばかりですので、貴重な経験となっています。

ロンドン警視庁 (New Scotland Yard) は2016年11月に移動。

ロンドン警視庁 (New Scotland Yard) は2016年11月に移動。

ロンドンの交通事情

通訳者は現場に決して遅れるわけにはいきませんが、問題となるのはロンドンの交通事情です。日本なら大問題になるであろうキャンセルや遅延ですが、ロンドンでは遅延はしょっちゅうで、キャンセルも日常茶飯事です。混雑が原因のこともありますが、実際は「運転手が来ない」とか「その日は運転手が足りない」とか、理由もそんなレベルで、失笑を買いそうですね。

突然バスから降ろされたり、地下鉄が止まったりすることがあるロンドンでは、住民の乗客は慣れていると見えて、降ろされてもすぐに代替ルートに向かって歩き出します。運行中、列車に不具合が起きたりして電車から降ろされたら、乗客は皆「またか…」とため息をつきながら「just get on with it」とばかりに、ちゃっちゃっと動く人がほとんどです。この切り替えの速さには感心させられます。駅員に文句を言っている人は、ほとんど見たことがありません。

日本のように遅延証明を出してもらうのにも、いちいち時間がかかりますし、手続きも面倒です。しょっちゅう遅延するので、申請をしていたらいくつあっても足りないし、証明書が手元に届くまでも、たらい回しに遭います。

こんな交通事情ですから、通訳の仕事のある日は出発時間や出張の移動日にはとても気を遣い、代替のルートまで入念にチェックします。また、ただでさえ頼りにならない地下鉄ですが、週末はさらに当てにならず、本数は平日より減り、路線工事もあります。空港へ向かおうにも到着時間が読めないので、余計に時間を見ておかなければなりません。ですから、移動日は、週末は避け、できるだけ平日にするようにしています。

どうしても週末に移動しなければならない場合は、地下鉄であれ、鉄道(Overground)であれ、平日よりかなり早い時間に家を出ることにしています。代わりのルートを頭に入れ、途中でルートを変えなくてはならなくなっても間に合う時間に出て、かかる線の運行状況も前もって調べ、常に状況が変わるので、さらに出かける直前にも運行状況をチェックします。

また、ヒースロー空港に行く必要がある時は、あえて遠回り、迂回ルートを通ります。私の場合、ヒースロー空港までは、自宅からパディントン駅に行き、パディントン駅からヒースローエクスプレス(空港行きの快速電車)に乗るのが、一番シンプルなルートです。

自宅の最寄り駅からパディントン駅まではCircle Line(地下鉄)で一本ですが、リスクが高いのでこのルートはまず使いません。パディントンまでは、地下鉄でも複数の路線が乗り入れているのですが、その中でも東京の山手線のように巡回しているCircle Lineは当てになりません。遠回りになっても、最寄り駅から逆方向に幾つか駅を「戻る」ようにしてBakerloo Line(地下鉄)に乗り換えてパディントン駅に行くことが多いです。
※ロンドンの地下鉄路線図はこちら

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