第2回 イギリスやヨーロッパで通訳者になる方法

通訳者通信fromロンドン2017.02.08

大学の通訳科を出ていないと通訳者になれない?

私は日本で10年近く通訳歴がありましたが、渡英を機にフリーランスになりました。イギリスに移ってエージェントに登録し始めたところ、登録フォームに空欄のまま埋められない箇所がありました。それも、1つや2つ、質問に答えられないのではなく、いくつかセクション単位で空欄があったので、提出したフォームを見た担当者が “How come you’re in the business?” と訊いてきました。

どういうことかというと、私は大学の修士課程通訳科を卒業しておらず、言語学など関連学科を専攻していたわけでもなく、また、通訳や翻訳の職業団体にも属していない。それにも関わらず、通訳者として働いている。職歴には社内通訳や単発のフリーランスの案件などが並んでいたので「通訳者としての資格・学位がないのに、一体どうしてこの仕事(専門職)に就くことができたのか」ということだったようです。

日本では大学や大学院というより、通訳学校(つまり職業訓練校)で技術を習得し、通訳者になるルートが一般的だと思います。私も一時期日本の通訳学校に通っていましたが、資格が授与されるわけではないので、登録フォームの資格の欄に記入するものがありませんでした。

最終学歴を見れば大学院は卒業してはいるものの、専攻は通訳とは関係なし。業界団体への所属もなし。一体どういうわけでこの人は通訳の仕事をしているのだろうと、担当者が不思議に思ったのも無理はありません。

イギリスなどヨーロッパの通訳者は、大学院の通訳科で学位を取るのが普通なのです。それならば私もいっそのこと大学院に行って資格を取ってしまったほうが早い。このような事情から、再び大学に入って勉強し直すことにしました。

NHS(国営)の病院。イギリスの大学の通訳の授業ではPSI(公共サービス通訳)についても学ぶ。

NHS(国営)の病院。イギリスの大学の通訳の授業ではPSI(公共サービス通訳)についても学ぶ。

イギリスの外国語教育と日本語教育

イギリスの学生は、どのような道をたどって大学院で通訳コースに進学するのでしょうか。

イギリスでは、中学・高校で第一外国語として多くはフランス語などを勉強し、大学ではModern Languages(Classics=古典語に対しての現代語)学部・学科で勉強、そのあと入学レベル(通訳科に入れるレベル)に達していれば修士課程で通訳科を専攻することになります。

外国語の選択肢としては、フランス語だけではありません。ドイツ語や、最近はスペイン語も人気です。日本語も、GCSE(一般中等教育修了試験)やAレベル(高校卒業程度に相当)の試験では日本語を選択することもできます。ただし、ここ数年政府は外国語教育をあまり重視しない傾向にあり、聞くところによると日本語は2018年を最後にAレベルの試験は廃止されることになっているそうです。

一方、大陸欧州の通訳志望者の学生は、国によっては低学年のころから、外国語を重視したコースに身を置くこともできるようです。イタリア人の友人の話ですが、第一言語(母語あるいはもっとも自由に操れる言語)のほかに、英語、フランス語の2言語は必修で、学年が上がってきたら、その他に第三外国語(あるいは第四言語)として、それまでの言語からは遠い言語(例えばロシア語など)を選択するという人もいるようです。

ページ: 1 2