第2回 こんなにも違う通訳、通訳ガイドの違い -現場編-

通訳ガイド行脚2007.03.17

前回は、通訳ガイド(通訳案内士)と一般通訳業務の違いを情報発信の視点から述べました。今回はそれに加えてもっと現実的な差異について補足してみましょう。

通訳ガイドはお客様の移動の手配や段取りをするのが仕事
通訳にとって移動の手伝いはヘルプ業務

通訳ガイドとして就業するのに必要な国家資格は国土交通省大臣が認めるものです。つまり通訳ガイドは観光旅行業界(ツアービジネス)の業務であって、国際会議やイベントを含む幅広い現場の中でも、旅行会社からの受注が主体となるお仕事なのです。

もちろん一般通訳でも随行通訳と言われる範疇では、外国人に同行して移動する場合にタクシーをつかまえたり、新幹線のホームに先導したりと、移動や旅行段取りのお手伝いをすることになります。けれどもそれはあくまでヘルプ・サポートのレベルです。一方、通訳ガイドの場合は、外国人客に付き添って案内するのが業務ですから、段取りを確認して、スムーズに移動させるのが主目的のひとつです。

たとえば屋外で移動中、雨が降って来たとしましょう。
「どうしましょう、タクシーでもひろいますか?」と、お客様と一緒に相談しながら一般常識レベルで対処すれば良いのが通訳だとしたら、通訳ガイドはまず雨模様を予測して事前に雨傘をホテルから借り、移動の貸切りバスや車に積み込んでおくところから配慮をします。列車の遅れやスケジュールの変更に伴って先手先手を打って次の移動手配の変更作業の連絡をする事も仕事のうちです。期待されるのは一般常識レベルではなく、旅行会社の社員並みの知識。そう、手っ取り早く言えば「添乗業務」「ツアーマネージング」の業務も通訳ガイドには含まれるのです。単なる外国語でのガイディングと添乗業務との1人2役でちょっと大変ですが、ガイドとしてのトークや気配りと共に、そんな添乗業務もできてしまうことはお客様にとっては重宝な貴重な存在なのです。

でも、そんな違いは一般の日本人企業のお客様や担当者は御存知ないことが多く、通訳も通訳ガイドも同じように捉えられて、時々おもしろい現象が業務現場で発生します。

私達通訳ガイドにとっては、ハイヤーのドライバーさんと打合わせをしておいたり、率先してタクシーをひろいに行ったりすることはごく普通のことですが、「まあ、気がききますねえ。通訳さんにそんなことまでしていただいて申し訳ありません!」などと、時々えらく恐縮されて、そのサービスぶりに感動されてしまうのです。「普通、通訳さんはお客様とご一緒でドンと構えていらっしゃいますよ」と、料亭の女将がおっしゃいます。
「通訳さん、そんなことまでしなくていいですから座っていてください」

お客様と同一行動が原則の通訳
ツアーのメンバーのリーダーが通訳ガイド

そう、一般的な通訳者はどんな瞬間もコミュニケーターとしてその場にいなければならないので、お客様と同一行動が原則です。会議通訳者にいたっては、外国人と移動も別で指定された会議時間中だけ業務に臨むので、会議現場を離れたらまったく個人行動で、外国人の移動のお世話とは無縁な場合が多いのです。

通訳ガイドは、外国人のお客の前ではガイドサービスを提供し、タイミングを見つけては裏で走り回り、電話をかけまくって次のスケジュールの段取りをします。レストランの予約の人数の変更連絡、レストランでの支払い、出発時刻の変更連絡などなど、忙しいのです。でも自らが全体の動きのリーダーとして、自主的に積極的に動くことができ、それによってお客様が喜ぶ姿に出会えるのも自分の腕次第です。この充実感を味わったらもうやめられない。一般通訳はあくまで常にお客様の耳と口の代りとして動きます。もちろんそれも客様からはかなり感謝される仕事で、しっかりやりがいを感じる仕事です。

一般通訳と通訳ガイドの違いのさらなる一面、イメージをつかんでいただけたでしょうか。