第5回 夏休み異文化交流プログラム

通訳ガイド行脚2007.08.17

外国人高校生に対するプログラムは
日本に対するイメージを決定づける重要な分岐点となる

夏休みになると、異文化交流プログラムで来日する高校生グループが目白押しです。外国の若者達にとっては通訳ガイドこそ、「日本人とは?」という問いかけに対してまっさきに思い描かれる人物像のひとりでしょうし、将来、彼等が成人して日本に対するイメージが形成されてゆく際の基盤ナビゲーターそのものです。国際交流、ひいては世界平和に貢献する最前線にいることに業務の意義深さと楽しさの両方を実感します。

では滞在中にはどのようなプログラムが含まれているのでしょうか。一般的に学生のツアーは、観光とホームステイなどがミックスされたものが多いのですが、ここには内容がリッチだと定評のある2週間コースの例を御紹介してみましょう

【異文化交流プログラム 2週間コース例】
日本到着

東京都内観光(都庁、浅草、明治神宮、アニメ制作の見学、学校訪問など)、
富士山登山トレッキング、箱根観光
自然と触れあうイベント(茶摘みなど)
高山または長崎(古都)観光(民芸、せんべい焼き体験ほか)
そして、異文化体験の極地であるツアーのハイライト、ホームステイ
鵜飼見学(川岸から)
京都観光(ニ条城、三十三間堂、お茶、習字などの日本文化体験)
広島・宮島(厳島神社ほか)

帰国

観光と、教育視察的な訪問、文化体験系プログラムなどが組み込まれ、私達日本人でさえも興味津々になってしまいます。ワーワー、キャーキャー反応する若者達にわかりやすく説明をし、まとめて誘導してゆくことは結構、体力勝負。人混みの東京、山手線に乗って移動する時には、40名もの若者を短時間の停車時間に乗り降りさせなければならないのでヒヤヒヤのしどうしです。グループを作ってみんなで責任を持ちながら誰もはぐれないようにさせる等、添乗技術の見せどころです。気を若く持って半ば彼等に同化して一緒に楽しむことができれば、この種のお仕事には向いているかもしれませんね。さまざまなハプニングを乗り越えて、最終日には空港でまさに涙、涙のお別れです。持ち帰りきれないほどのプレゼントをもらい、キスとハグ攻めにあって、「やって良かった」と思う劇的な瞬間がやってきます。

こうしたプログラムでは参加者の若さゆえに
さまざまなトラブルを抱えることも

でも良いことづくめではありません。学生旅行は費用を押さえなければならないため、列車よりもほとんどがバス移動、そして宿泊施設やレストランも青少年向けの施設が選ばれます。ちょっと困るのがそういった施設での共同浴場です。ベソをかきながら”Can’t I wear a towel in the bathtub? I can’t be naked in front of other people, no way” 夏の暑い盛りだからシャワーや風呂を使用しないわけにもゆかず、結局は時間で区切って入浴させている間に、通訳ガイドさん自身が入浴できるのは深夜12時を廻ってしまうことも。。。

大人の旅行と違って注意が必要なのは、体調を崩したり、ホームシックになったりするメンバーも多いことです。夜中にノックされ、明け方まで話を聞いて慰めたり、救急病院に運んだりも珍しいことではありません。

実はこの夏、16才の男子生徒がツアーの最終日に死亡するという事件がありました。前日には元気で富士山登山を楽しんでいたのに、その日突然具合が悪くなったのです。朝から観光を休んでホテルで休んでいたのですが、夕方には救急車で運ばれ、翌日の夜には母国からかけつけた両親の前で残念な結果となってしまいました。実は彼には糖尿病の持病がありましたが、楽しく興奮度の高い友人達との毎日に、ついインシュリン注射を怠ってしまったのでは?という疑問が持たれました。若さゆえに純真で、ツアーの感動も大きい反面、心身共に自己管理がしきれない不安材料も想定内なのです。

担当した若い通訳ガイドさんにとって、生涯忘れられない辛い日となってしまったのが気の毒でした。人を扱うサービス業に携わるプロとして、彼女はこの貴重な体験を活かしてベテランに育ってゆくのでしょう。