第6回 新人通訳ガイドのデビュー

通訳ガイド行脚2007.09.17

今春は直前のガイド依頼が続出
これって ”Visit Japan Campaign”のお陰?

2007年は、政府のVisit Japan Campaignも効を奏してか例年になくインバウンドの外国人訪日旅行客数が伸び、業界全体に活気があるように感じられます。秋には隔年恒例のモーターショーも開催されるとあって、追い風のエネルギーが吹いているとすれば嬉しいことです(中国語や韓国語のガイドさん達は、無資格ガイド横行の問題もあって、「そうだといいね~」と首をかしげる人達も多い側面があるのも事実ですが…)。

とにかく観光旅行は平和産業なので、地震や洪水など自然災害はもちろん、戦争やテロ事件があったり、SARSのような伝染病が社会問題になると、予約がパタッと止まり、キャンセル続出。通訳ガイド達は仕事の保証もなく食い上げの悲劇となってしまうのです。そういう意味ではサッカーのワールドカップ時は猫の手も借りたい状態でしたし、東京オリンピックなどの平和イベントが実現すればゴールデンタイムの再来?となるやも…。

通常、インバウンド業界のピークは3月の半~5月が春のシーズン、9月の後半~11月初頭が秋のシーズンと言われていますが、今年は4月の初頭から20日までの3週間はガイド不足に悩まされ、やっとの思いで憧れの日本に到着した外国人客達が、あわや世話するガイドがいなくて路頭に迷う寸前の事態もありました(年間にまんべんなく来てくれればいいのに、どうしても桜の季節に集中するのでした)。国土交通省届出の通訳ガイド組織として、NPO法人ジックスGICSS(通訳ガイド&コミュニケーション・スキル)研究会では就業稼動の後押しサポートとして、各界から依頼される業務に会員のガイドさんを紹介し派遣しているのですが、今年の春の業務依頼のされ方は特別でした。

まずは、どこから我々のことを聞きつけたのか、初めての会社からの問合せが続出。そして依頼の日付けが直前のものばかり。「明後日からスタートする14日間のツアーに全期間通しでできる通訳ガイドさんが欲しいのですが…」ピーク時に1週間空いている人がいたとしたら、それはたまたま入っていたツアーがドタキャンになったガイドさんか、あまり頻繁に稼動しないガイドさん(普段は他の仕事を主体としている)か、あるいは、新人ガイドさんぐらいしかいません。でも業務未経験の新人ガイドさんは、ご本人は他の予定をすべてキャンセルしてでもやりたいと思っても、やはり「適切な経験」がなければ泊まりの仕事が何日も続く30名の団体は扱えるはずがありません。たとえ経験があっても関東地区だけしか経験がなければ、後半3日間の関西地区のガイディングはおぼつきません。下見に出かけて勉強する時間もなし。反対に全国の観光地に通じていても、個人客しかアテンド経験がなければ、やはり大人数グループ・ツアーの添乗業務が不安です。

そういう時に限って”ベテランのツアコンがベルギーから同行してくる” (=ガイドの良し悪しの質にうるさそう)のです。経験のあるガイドさんでないと無理な話です。やむなく、14日間のツアーは、訪問地別に最初の4日、次の6日、最後の5日間という3分割で3名のガイドさんによってリレー式に担当されることになりました。初日に担当したガイドさんは「なぜ貴方が最終日迄できないの!」と頭からツアコンに3分割を契約違反だと責められました。通訳ガイドだって急病もあり得るわけなので何とか理解をしてもらい、皆さんの協力で急をしのぎ、最終的にはお客様もツアコンも大ハッピーで帰国の途につかれた由。ホッと胸をなで下ろすと同時に、現場での通訳ガイドさん達の実力発揮と忍耐の奮闘ぶりに頭が下がる思いでした。

お客様のことを思うと、無理な依頼にも
「何とかせねば」と深夜に手配の電話をかけ続けることも

他の旅行会社のガイド仕入れ担当者からは、夜の8時、時には9時10時になってから電話がかかり、「明日の朝、京都でガイドさんが必要なんですう…」と悲痛のSOSコールを何度も受けました。まさか今から!?とは思うものの、ガイドを待ち続けて戸惑うお客の姿を想像すると放っておけず、「研修さえ受けていれば、まっさらの新人さんでもいいから」のお墨付きの言葉に勇気を得て、電話をかけまくります。深夜にやっと調整がついて、実際のツアーの打合せを旅行会社の担当者と行なうのは、もうシンデレラタイムです。それでもガイドさんが見つかれば良いのであって、見つからない場合…この時期の担当者達には朝の2時3時までの必死の緊迫作業がしばらく続くのです。

舞台裏で頑張るオペレーションの黒子作業に支えられて、通訳ガイドはニコニコとお客様の前でスポットライトを浴びるのが仕事です。ピークシーズンは突然なことが多くて戸惑うのですが、新人にとっては勇気を出してデビューするチャンスでもあるのです。秋のシーズンを前に、仲間の無事故の活躍を祈る心境です。