第7回 ティ・アイ・ピー

通訳ガイド行脚2007.10.17

日本にだってあるんです。心付けの習慣
会社の名前ではありません。業界用語で英語のTIP(心付け)を意味します。

“You can feel free from tipping in Japan”

などとよく外国人に説明されていますが、ほんとかしら? 実は日本にもしっかり心付けの慣習は存在していて、貸切りバスの乗務員さんや、旅館や料亭の仲居さん、時にはホテルのスタッフにもgratuities とかtipを旅行会社からの業務指示で準備することがあります。そんな心付けの打ち合わせ時に「チップはいくら支払いましょうか?」などと口にするのが何となく憚れて(いかにも日本的な発想ですが)「ティ・アイ・ピー」と、周囲の人に聞かれても何のことやらすぐにはわからないようにする工夫をしているのです。

ともすればtipが、通訳ガイド料金よりも多いという夢物語も現実だった時代が日本でもありました。そんな昔に比べればtipなんて無縁に近くなって久しくなりましたが、もちろん通訳ガイドさんも案内した外国人のお客様からtipをもらえると嬉しいものです。これはあくまでお客様の気持ち次第であって、我々は最初から期待しているものではありません(大型客船で港からツアーに参加するお客様の場合は、世界中の港を廻るので、「一人1日~ドルのtipがお勧めです」のような事前案内があります。それが日本の港でも適用されてガイドさんにはラッキー・デーになることも多いようです)。

通訳ガイドもグローバル化に対応しなくては
最近、珍しいケースに出会いました。通訳ガイドの仕事を頼んできた旅行会社は中国系の日本法人で、ガイド料金が普通よりもかなり低いのです。びっくりすると「実際はお客様一人に対して1日500円の目安でガイドに心付けを渡すように話してあるから、人数が多ければちょっとまとまった金額になりますよ」とは、日本語がとっても流暢な担当者の弁。今回は20名だから1日1万円の上乗せか~、それならいい話かもしれない。

がんばって迎えたツアーの最終日、しかしバタバタと空港送りの作業をしてフト気がつけば、あれ?tipのtの字もなく税関に入っちゃったではありませんか!? やっぱり自分のサービスが至らなかったのかなあ・・・。と諦めて経費の精算に担当者に報告すると、「いや、お客さんからはとても好評でしたよ貴方は。Tipは請求しましたか? 言わなきゃもらえませんよ」

「えっ、請求するのですか?」そこで思い出したのです。そういえば外国に行った時、ホテルのベルマンが部屋に荷物を運んでくれたり案内してくれたりした時に、ちっとも部屋から出ずに何となくウロウロッとしたりして、”Are you satisfied with my service?”なんて言われて、慌ててチップを多めに出しちゃったりしたことを。レストランのウエイトレスも、“Are you all right?”ってよく尋ねるし、チェックを持ってくるときにはニコニコ笑顔。日本では「ちょっとちょっと、これは我々からのお礼の気持ちですが」と、お客様のほうから歩み寄って渡してくれる図に馴染みがあるので、自分から要求する行動に出られなかったのだと思います。授業料の高い学習事件でした。

日本の会社から依頼されて日本のやり方で仕事をするだけではなく、グローバル化は私たちの仕事現場でもしっかり意識せねばならない時代です。

それにしても、あの時、お客様個人個人はtipを用意したはず。それをシンガポールから同行して来た聡明そうな添乗員がとりまとめていたはずなのですが、どうなったのかしら? 真実は闇の中。