第12回 迷子を出さないための秘訣

通訳ガイド行脚2008.06.16

ガイドにとっての鬼門、
お祭りの日の観光

浅草寺の三社祭り、日光の千人武者行列の祭りなど観光日が祭りの日に当たれば外国人のお客様はラッキー!と大喜びです。そんな時、実は通訳ガイドの気は重く、迷子が出ないことをひたすら祈って気苦労が耐えません。観光客でごったがえす中、通常ならば45分でこなす行程を牛蛇の人込みをかき分け進み、2時間近くも費やしてしまうこともあります。「あ~、どうしよう。交通規制もあるだろうし、どのくらい時間がかかるかわからないし、普段と違う特別なことがありそうで不安だなあ」と、心の内で叫びたくなってしまうことも。実際に慣れたガイドさんが安心だからと、お祭りの日の観光のガイドに心細げな新人ガイドさんからベテランに交代した事例もあります。

すわっつ! 女性客が一人集合時間に戻らない!!
その日、祭りなどない普通の日でしたが、ガイドのAさんは、横浜の桟橋から大型の国際客船クルーズ客を東京都内観光にお連れしていました。数台のバスに分乗して明治神宮や東京タワーなどをまわり、最後の訪問地が浅草、そして18:00の船の出港にあわせて遅くとも17:30までには横浜の船にもどらねばならないというスケジュールでした。そこで15:30を浅草からの出発予定にして、その前にちょっと自由時間を楽しんでもらうことになりました。

ところが集合時間になっても女性客がひとり戻ってこないのです。Aさんは浅草寺の境内から裏道を走り回ってその女性客を探しましたが見つかりません。そのお客様はお連れの方がおらず単独での参加だったのでまったく行方がわからないのです。出発は30分遅れました。これ以上待っては、他の30名のお客様も船に乗り遅れかねません。絶対に間に合わせて戻らねば・・・! 真っ青になったAさんに、一緒に動いていた他のバスのガイドさんたちも総動員で協力しました。

まず、警察に電話する、そして周辺の病院に電話をかけまくる、手分けしてなんども探しまくりました。それでも見つからず、とうとう諦めてバスは一路横浜の桟橋に向かったのでした。落ち込んだAさんの気持ちはいかばかりだったでしょう。

結局、バスが船に戻ったのは17:40分。そして、なんとそこには行方不明だった女性客が、一人タクシー浅草から横浜にもどり17:00には船に到着して待っていたのでした。迷子になった彼女は浅草近辺のホテルを探し、そこで事情を説明してタクシー帰還を手配してもらったとのことでした。ホテルならば英語を話す人がいるだろうと思っての行動です。重大な事故ではなかったので全員胸をなでおろした一件でしたが、日本出発日の迷子はなんとも寿命の縮むケースです。

ユーモアを交え、集合時間をぴっしっと伝えましょう
多国籍のグループでお客様もお互い初対面の人が多いというケースでは、ガイドの話す言語がどれだけお客様に理解してもらえているのかわかりません。ひょっとして英語が伝わっていなかったのか? 集合時間を聞いていなかったのか? 勘違いか?(中には時計を持っていないという外国人もいます)あらゆる想定をして、迷子対策はくどいほど行いましょう。集合時間は、three ten, ten minutes after three o’clck, 15:10 等々、時には時間を大きな紙に書いてみせる場合もあります。

迷子が危ぶまれる場所では事前に、「集合時間に現れなかったら、ここが気に入って長期滞在することにしたのだと理解し、遅れた人はお待ちしませんよ。その場合はご自分でホテルに帰って下さいね。地下鉄ならば3回乗り換えて、タクシーならば4,000円」と、トラブル時の責任の所在を明確にするために必ず言っておきます。ちょっと大げさに言うこともあります。

「ここは有名なAsakusa バミューダ・トライアングルで横道にそれるとよく人が消えてしまうのですよ。私もここでは時々お客様をなくしているので今日は、昨日いなくなったお客様に会えるかも(笑)」

コツはユーモアを含めてピシッと伝えることです。ガイドは必死に最後まで迷子を探そうとするのですが、案外、外国人のお客様は、自分のことをそれほど探してくれるようなことはないだろうとドライに割り切って、途中で勝手に別行動をされてしまうこともあります。Aさんはその一件後、不安なときにはお客様全員に自分の携帯番号をかいた小さなメモを渡すことにしたそうです。

どっきり、ヒヤリはつきもののお仕事です。リスクマネジメントも知恵を絞らねば、ですね。