第16回 初対面のお客様に呼びかける英語表現

通訳ガイド行脚2008.10.16

ちょっとした言葉づかいが通訳ガイドの品位を表す
観光ガイドをする日、外国人のお客様をホテルに迎えに行く時は、今日のお客さまは一体どんな人なんだろうと、慣れたガイドでも初対面の相手の姿を見つけるまではちょっとドキドキ緊張したりします。ホテルのロビー周辺をグル~っと見渡して「アッ!あの人達かな?」と思った時、あなたはどのように彼等に声をかけるでしょうか? “Hello!”,  “Hi!” …とっさにそう言ってしまいたくなる方も多いのでは?

“Hello!” や “Hi!” は気さくな呼びかけの言葉。友達同士や良く知っている間柄でその親しさを強調したい場合に持ってこいです。ツアーも2日目からならぴったりですね。でも見知らぬお客様に突然Hi! では、相手も少し戸惑ってしまうかもしれません。あくまでもサービス提供者としては、まずは失礼のないように、
“Excuse me, sir (ma’am).” あるいは “Good morning, sir.”
などと丁寧に話しかけると安心です。決して後方から呼びかけたりせず、相手の視界に入ってから、「私はツアーガイド(または会社名など)の~だが、あなたは~(名前またはmember of XYZ tourなど)ですね?」と、優しく明るい笑顔(←これが大事)で、ソフトにアプローチすると相手に与える印象も大変良いです。空港に到着したお客様を迎える際には、“Welcome to Japan!” の一言も忘れずに。

たくさんのお客様を目の前に、“Hi, everybody!” と呼びかけたい気持ちはわかりますが、これも親しげなモードに入ってから。初対面では”Ladies and gentlemen.” が大切なお客様には適切です。そんなちょっとした言葉遣いがガイドの品位を感じさせます。ちなみに女性客が一人だけで後は全員男性だったら”Lady and gentlemen.”となります。

日本では「~さん」と呼ぶと日本の習慣を伝えておいて
「Dick-san」と呼びかける方法

きちんとした形で個人的に呼び掛ける時、Ph.D.の肩書がある人には Doctor XYZ となりますが、通常男性にはMr.、女性にはMrs. かMissをつけるのは今更言うまでもありません。Ms.は正式にはレターの書面など文書で使う便利な表現でした。では既婚か未婚か不明な時にはどうするのでしょうか? 相手に尋ねにくい部分ですから、そんなときはMissもMrs.もまずは忘れてフルネームで呼びかけたり、人に紹介したりする方法もあります。観光中は正式なビジネスシーンとは違う打ち解けたムードが歓迎される場ですから、名前を入れずにMissとかMadamだけの略式でちょっと呼びかけたり、ファーストネームで呼び合うようになることも多いですね。

よく使う手は「日本は合理的で便利ですよ、どんな相手でも“サン”づけで呼べば問題ないのですから」などと事前に日本文化を紹介しておき、Dick-sanなどと日本式を体験してもらうのは便利でもあり、効果的な演出でもあります。日本ではファーストネームを呼び捨てにすると、「夫婦や恋人など特別な関係か?」と思われるやもしれません。”I’m normally called XXX ?san here and I feel the most comfortable that way …” などと言及するとお客様も興味深い眼差しをし始めます。

単純なことですが意外に気がつかないのが日本人の氏名や観光地などの固有名詞を言う時の配慮です。その部分だけ普段の1.5倍ぐらいゆっくりしたスピードで強調すると、外国人が聞きなれない音でもわかりやすくなり、ぐっと親切になります。

ところで、丁寧といってもHow do you do? はいただけません。英会話本の決まり文句のような表現として覚えた人も多いかもしれませんが、実際には形式ばった堅い表現で遠い距離感を与え、場をしらけさせてしまうようです。私は以前、最初それを口に出した時になぜ相手がキョトンと「何を言っているの?」的な表情を浮かべ、言葉を失ってしまうのか理解できませんでした。次第に「ああ、こりゃ使っちゃまずいな」とわかってきたのでした。

初め良ければ終わり良し? ガイド業務での第一声、初対面での呼びかけの英語表現がスムーズなスタートにつながるといいですね。