第19回 通訳ガイドの手練(てだれ)不景気対策

通訳ガイド行脚2009.01.16

不況への緊張感と共存する覚悟が
通訳案内士には必要

「最近は比較的都内の道路がすいてますね。ガソリン代が高くなって自動車運転を控える傾向になったことも原因でしょうか…」

などと話していたのはつい最近のことなのに、もうガソリンは100円を切るとか、光熱費も下がりそうだなどと想定外の物価乱気流状態。突然の世界の金融大不況の影響で、どちらの業界も戦々恐々の毎日です。派遣社員が首切られる、学生の就職内定が取り消されると大騒ぎで、もちろん通訳ガイド業でも、「来年は厳しい年になりそうだ」と心引き締めムードいっぱいです。

でも私たちフリーで働く通訳案内士(通訳ガイド)にとっては、不景気の辛さは何も今に始まったことではありません。戦争だ、テロだと、事あるごとに「仕事がどんどんキャンセルされる~!」なんて平和産業の厳しさを味わってきました。そもそも通訳ガイドは春と秋のピークシーズンは忙しい思いをしても、オフシーズンには仕事がなくて戸惑う季節労働者特有の思いを毎年味わう人が多いのです。年間通して仕事が確保されている一般サラリーマンに比べると自由がある反面、常にジョブ・レスのリスクを負って働いています。クレジットカードで買物をした時「ボーナス払いにしますか?」なんて店員に尋ねられると「いえ、いいです(ボーナスなんかありゃせんわい!)」と澄ました顔で答える不快さにも慣れ、そういう意味で普段から不況に対するパニック度にはある程度の免疫ができているのかもしれません。仕事の確保に対する緊張感は常に抱え持って、それと一緒に生きてゆく覚悟がフリーの事業者には必要なのだと思います。

おおかたの通訳ガイドが年間契約ではなく単発業務で働いているのですが、そんなフリーランス業者に望ましいことといったら、まず日当はサラリーマンの2~3倍の額を稼ぐことを目標とせよ、と若いころ先輩から聞かされたことを思い出します(いつ仕事がなくなるかもわからず、退職金も社会保険も十分ではない不安定さがあるので、「稼げるときに稼げ」という先輩からの教えでした)。通訳ガイドも、30~40年前まではまさにカッコいい稼ぎ頭の仲間入りをしていま した。が、現代社会の実情では程遠い侘しさもあります、トホホ。

通訳案内士の経済力を支える副業
どんなことでも通訳ガイドにとって無駄になることはない

そして副業をもって経済苦境をしのげるようにしておくのが賢明な判断です。何と言っても生活できなきゃイザという時に良い仕事ができません。研究費用の投資も必要です。ちなみに二期作の地域は別として、日本の農業はほとんどが兼業の歴史だったことを思いだします。米作の閑散期に野菜や果物、花を作る。大工をする、漆を塗る、染物をする、出稼ぎをする…。米作に忙しい時期は大工作業はできないので家を建てるのには年月がかかりました。でもその間に材木資材は適度に乾燥し、組み立てた部分がよく馴染んでしっかりした家を建てることができたと聞いています。できれば本業に関連した業務で、副業をやることによって本業技術のブラッシュアップにつながるのが理想的ですね。

通訳案内士の中には、通訳や翻訳、語学講師をはじめとして、旅程管理の資格を取得して添乗員として日本全国や全世界を飛び回る人もいます。旅行会社で手配業務のサポートをするケースもあります。旅行の業界であればツアーの成り立ちや側面を知ることにもなり、役に立つ知識や実績が積み重ねられますね。看護の仕事をする人も、ボランティアをする人もいます。「何が自分にできるだろう?」と自問して、潜在的な才能を掘り起こすチャンスかもしれません。要は、何をやっても結局は自分のキャリアの栄養になれば良いのです。やることが無駄になるかどうかは本人の意識次第。期間を限定するなど自分の進むべき本筋さえ見失わなければ、普段とはまったく違う業界・世界で観察眼をもって過ごすのも、視野が広がって良いというプラス思考をしたいですね。

そして、なによりも健康第一、体が資本。ちょっとやそっとでは現場を離れない覚悟が必要かもです。病気で欠勤することになっても、一般の社員ならば会社で他に仕事をカバーしてくれる人がいるでしょう。でも通訳案内士の現場では、あなた一人しかいません。あなたが倒れたら外国人客は動けずに途方にくれてしまいます。ツアー業務開始の前に具合が悪くなったら早めに連絡をして代理の人をたててもらうわけですが、代理ガイドによる仕事が大成功すると、次回からは自分にはその仕事は回ってこなくなる可能性だってあります。

仕事の当日、突然仕事現場に行けなくなった時、大げさにいえばそれは救急車で運ばれるぐらいの大事態でないと許されないかもしれません。熱もそう、38度以下ならば頑張る。骨折もひびが入ったくらいなら、代わりのガイドが見つかるまでは頑張ってしまうかもしれません(ヒエ~!?)。厳しいけれど実際に箱根でバスの急停車のために肋骨にひびが入る怪我をしても、翌々日小田原に出るまで一人で頑張ったプロ根性のすごい先輩通訳ガイドさんがいました。30名の外国人客を山中に放っておくわけにはいかなかったのですね(逞しい!)。

日頃から安全と体調管理に留意し、トラブル時は早目の連絡でとにかく迷惑を最小に食い止める!仕事中の怪我・病気の保険は自分でかけておかねばなりません。常備薬は常時携帯。栄養ドリンク剤をツアーの荷物に入れておくことも。

閑散期は修行の時。通訳案内士にとっては、勉強をしたり、普段できない場所への下見をしたり、自分磨きに精を出す。そして何よりも、体力作りの時でもあるのです。