第20回 メインストーリーを演出するサイドストーリーの持ちネタの多さがガイドの腕を引きたてる

通訳ガイド行脚2009.02.16

表面的な事象説明にスパイシーな裏話を加えて
お客様の注目を引きましょう!

夏祭り、秋の収穫祭り、冬は寒くても身もひきしまる雪景色の中で、そして春は桜…四季の美しさにあわせて様々な年中行事が展開されていきます。そんな行事は外国からのお客様もとても喜ばれるのですが、説明のしかたによって興味のひかれ方や印象はとてもガラッと変わるものなのです。

京都の時代祭のイメージが私の中でモノクロから鮮やかなカラーの印象に変貌したのは、学生時代を京都で過ごした知人からアルバイトのエピソードを聞いた時でした。「馬術部と写真部の連中がみな駆り出されてね、去年は牛車をひいた、今年は足軽役だ、なんて面白がって昔の衣装をつけて、行列に参加したんだよ。待ち時間が長くて大変だけど、お姫様役を演じるスター芸妓さんからは学生の身分には豪華なご祝儀も出たし、結構いいアルバイトになって楽しみで面白い経験だったね」

へえ~、そうなんだ! 物事の表面的な事象説明だけでなく、側面を見せるとどんなことでも相手の興味をひき、注目をひきやすいものです。観光の案内も、歴史の説明もみな同じ。テレビドラマの時代劇なんてみなその側面ストーリーで構成されているようなものです。

日本最大級の長~い建物「三十三間堂」の紹介に
2,000名の若い男女が矢を遠投する「大的(おおまと)全国大会」
ネタを加えると 面白さ100倍

京都駅に近い三十三間堂は建物も仏像もユニークですが、その横長な建物ゆえに古の時代から通し矢の行事が有名でした。「柱と柱の間が33カ所もあるという、横幅が日本最大級の長~い建築物です云々」と本堂を見たあとの西側の庭で、「今でもここでは毎年、成人の日に弓道の大会があるのですよ~」とほとんどのガイドが通し矢の説明を加えます。

This open veranda was formerly used as an archery field. Archers competed on the basis of the number of arrows shot in a day at a distance of 125m(410ft). Wasa Daihachiro, a samurai of Kii Province is recorded as having shot 13,053 arrows one day in 1686, of which 8,133 went the full distance.
と、ガイドしただけでは「ふ~ん」という反応で右から左へ情報が通り過ぎてゆく感じです。が、それが現在でも1月に全日本弓道連盟の公式大会「大的(おおまと)全国大会」という形で引き継がれていて、実は知人のお嬢さんが参加されたのです。。。と続くと、そこでお客様の目がパッと輝きます。

参加者は称号者とその年に成人式を迎える初段以上の大学の弓道部の男女。全国から2000名近い男女が集まり朝8時過ぎの開会式、矢渡し(6段の方の模範演技)、成人女子のデモンストレーション(毎年この映像がニュースに流れる)に続いて奉射が始まるのだそうです。男性は練習着か紋付袴ですが、女性は振袖に袴、たすき掛けのいでたち。大人数のためにTVのニュースをみるだけでも目を見張る圧巻行事ですが、女性の場合は考えただけでも舞台裏が大変そうですね。実際、夜明けに起きてヘアセット、着付け…、気力、体力、懐のお財布具合にも手ごたえのある気合いが必要な行事かも? 女性の和服盛装時の水面下の努力…これは外国人の想像のつかない世界ですから是非、実情をお話したいものですね。話題としては特に女性向けに盛り上がることうけあいです。具体的な貸衣装の費用などもメモしておいてご紹介するともっとリアルです。

さて、的までの距離はお堂の約半分の長さ60mですが、通常の弓道場の長さは28mなのでこの遠的は難しいものなのだそうです。的の直径は、成人直径100cm、称号者は79cm。3人で一つの的を射る形、1人が2矢ずつでも全員が打ち終わるのに6時間以上!2矢とも的に当たって決勝に残れたのは新成人では32名の男女のみだったそうです!決勝の的はさらに小さく最初の1射をはずすせば脱落、2射目が的に最も近かった人が優勝です。

こんな話を聞くと歴史に残る“一日で120m先の的に13,000本の矢を射、うち8,000本余を通した”和佐大八郎18歳の体力、集中力のけた外れさ優秀さをあらためて感じます。

側面ストーリーをたくさん知っていると役立つ、ということは誰の話もどんな雑談もいつもガイドのネタとして活用できる可能性がある、メモ魔になりそう…ということですね。