第21回 英語表現にも注意しよう!優しい口調が突然女王様調になってしまうことも

通訳ガイド行脚2009.03.16

ベテランガイドも犯す場違いな英語の使い方
油の乗ったベテラン通訳ガイドさんのガイド現場を見るチャンスがありました。都内を大型観光バスでガイドする様子はさすがに手慣れたもので、お客様も楽しげに窓外の景色を眺めていました。

その時、ふと私の目が彼女に釘付けになってしまった瞬間がありました。
“… as I told you before, we attach ‘san’ sound after our names and …”
As I told you ~ という表現が強くてその場に似つかわしくない言葉だったのでギョッとしてしまったのです。「~前にも言ったように」という文言が、「前にあなたがたに申しつけたように~」と、威圧的な雰囲気を漂わせるように聞こえてしまったのです。彼女が突然、上司か高校の先生、自分たちが彼女の部下か高校生にでもなったような気分でした。

もちろん彼女は単に、「前に説明した通り、日本では名前を『さん付け』で呼ぶのが一般的なので、運転士に対しても、『運転手 – san』と呼んで大丈夫なんですよ…と、軽い気持ちで口にした表現でした。口調にもよるのでしょうが、たまたま彼女の英語が大変流暢であったがために、かえってtellの命令的意味合いが前面に出てしまったわけです。
恐らくあの場面では、As I have mentioned before, / As I said before, / As I’ve explained yesterday, などの表現がぴったりだったのでしょう。

I’d like to tell you about the restaurant in your hotel.  
新人ガイドさんが言いがちな表現ですが、これも「あなたの滞在しているホテルのレストランについてちょっとお伝えしておきたいことがあるんですよ…」(ん? ちょっとあらたまって何かな? お薦めの特別な店とか、反対に絶対に行かないほうが良い店とかがあるのかな?)というムードが見え隠れしてしまうことがあるかもしれません。

ただ単に「今からチェックインするお客様のホテルのレストラン情報についてお知らせしましょう。ホテル内には洋食、和食、中華の3種類のレストランがあって、最終オーダーは夜の10時です…」ぐらいの一般案内ガイドトークならば、As for the restaurants, there are … と言ってみたり、Let me give you some information on …でもいいし、サラリとmention も使えそうです。

英語がスラスラと話せるようになったとき
訪れがちな誤用の危険

通じるから良いレベルの英語ならば、どんな単語を使っても外国人客はガイドさんが言いたいことを察してくれるので、たとえ表現方法を少しぐらい間違えたところで気分を悪くすることもないし、せいぜい笑って聞き流すことでしょう。「そういう時には~~~って言うのよ」と、反対にお客様が即席英語教師になってくれてしまったりすれば大ラッキー。落とし穴はそのステージを通り越してスラスラと話せるようになった人のミスです。ある程度流暢だと「君は英語が上手いね」と褒めてはくれるのですが、よほどのことがない限りミスを直してくれたりすることはあまりありません。相手に失礼と思うのかもしれませんね。言葉のニュアンスもすべて理解した上で話していると思われてしまいます。あの優しくて丁寧な通訳ガイドさんが、突然 “I have told you…” と女王様に豹変してしまう口調には目をパチクリしてしまうのです。

とある通訳の場面で、こんな戸惑いを覚えたことがありました。私が商談通訳するテーブルに同席する関係者の中に、日本滞在15年という大変日本語のお上手なアメリカ人男性がいました。彼の日本語があまりに上手だったので、私は素直な感想として「○○さん、ほんとに日本語がお上手ですねえ!」と賛辞を囁きました。すると彼はちょっと照れながらも「いや、ランデルさんに言われたくないよ」という返答が。。。あれ? 彼は私が彼の欠点か、皮肉を述べたと思ったのかな!?「~さんに言われたくない」と冗談ぽく言うのは、何か欠点を指摘された時に使うんじゃなかったっけ?

あらあ~? 更なる言語のグレードアップは難しい。いつも頭の中が霧中に包まれることの繰り返しです。