第26回 通訳ガイドイベントで気づいた日本を案内する様々な視点

通訳ガイド行脚2009.08.16

9月6日開催のコンベンションの速報レポート
2009年9月6日、通訳ガイド業界では初めての画期的イベント「通訳ガイドコンベンション」が開催されました。主催はNPO法人GICSS通訳ガイド&コミュニケーション・スキル研究会です。約250名の定員を上回る参加希望があったということで皆様の関心が強くなっていることを伺わせます。参加者は現役通訳ガイド、国家資格受験勉強中の方、学生、旅行会社社員、ホテルスタッフ、政府関係者などさまざまでしたが、朝から夕方までの一日を有意義に楽しく過ごされた様子でした。

講演、ワークショップ、トークショー、クイズ形式の情報知識蓄積コーナーなど様々なプログラムが同時進行で開催され、参加者はその間自由に各分科会場を出入りできるというものでした。私も渡り鳥形式であちらこちらの会場を覗きましたが、「あ、これは覚えておくといいなあ」「心打たれるなあ」と感じたポイントがたくさんありました。その一部を速報レポート、順不同でご紹介したいと思います。

物事の伝え方の例です
「罪をおかした自分の父親までも警察に通告する正直さ」というのもあれば、「家族が罪を犯してしまったならば、それを隠そうとするのも正直な人間の気持ち」という孔子の弁があるそうです。どちらの正直さをもってでも、“その文化をほんとうに愛しているからこそ出てくるガイディングの言葉”で外国人をご案内したいものです(――教育責任者、NHKトラッドジャパン出演の江口裕之講師の講演から)。良いことも悪いことも事実としてどのように文化を紹介するか、悩ましい場面にも遭遇するガイド業ですが、これは納得できる回答だと感心しました。

西欧人には、頭から数字や物事の詳細情報を浴びせないこと
(――YOKOSO JAPAN大使、ジャーナリストの桐谷エリザべスさんの講演から)
「日本人はファジー感覚な説明が多いけれど、欧米人に対しては具体的な数字を紹介するのがわかりやすくて信頼が得られやすい」と、多くのガイドが信じてきました。特に新人ガイド時代は建物が建造された年や仏像の長さや重さなどを必死に覚えます。でもほんとうは、数字よりもストーリーが大切。たとえば有名温泉地を紹介しようとしたら、湯元の数や、湯の温度のリストよりも、まず昔からの言い伝えに興味をひかれるそうです。「昔、傷ついた白い鶴がこの地で傷を癒したことがきっかけで…」というアレです。

お風呂の紹介
温泉地に行く時など、ガイドは大浴場の使い方などを事細かく説明しますが、その背景となる風呂文化についても是非述べてほしい(—桐谷エリザベスさん講演から)。そもそも中世のヨーロッパでは入浴は危険なこととされ、年に一度か二度しか入浴はせず、温泉の利用はもっぱら病気の治癒目的だったそうです。そんな文化背景が伝統としてあった人々からすると、毎日の入浴や温泉について語るガイドの言葉から、「日本はそんなにsick peopleだらけなのか?」という疑問がまず頭に引っかかるのです。清潔好きな国民性、近所付き合いや家族の絆を育む重要な社交の場とも言える風呂文化を語り、日本に恵まれた豊富な温泉資源は、大都市でも体験できるbath emporiumとも言えるスーパー温泉を含めて、日本ならではのユニークな魅力としてもっと紹介されるべきだという提案がありました。

徹底したカスタマーサービスについて
自分が落ち込んだ時にはデパートに朝10時に出かける。たとえそこで2~3分待っても、一斉ににこやかな笑顔と丁寧なお辞儀で自分を出迎えてくれる店員の列は感動そのものである、というのです。確かにそう、その場を立ち去る時にも丁寧に頭を下げて送りだしてもらえるのは快感ではありませんか! 落とし所は“自分の気持ちが落ち込んだ時に利用する”という言い方です。物事は紹介や導入のしかたが大切ですが、いつもユーモアに溢れて楽しげな雰囲気が出るといいですね。

ときどきクイズと洒落はいかが?
クイズで、「日光東照宮の手前でかかった神橋の下を流れる川の名前は何でしょう?」という設問がありました。答えは4択の回答方式でしたが、その中に「シンジュ川」というのがあって大笑い。正解は大谷(ダイヤ)川ですが、真珠じゃなくてダイヤモンドね、という覚え方がおもしろかったです。ああ、これはお客様にガイドする時にも使えそうかも。「pearlじゃなくてdiamond river、ア、ちがった!Dia Riverです~」なんて言ってしまいそうです。

関西や中部はもとより、九州や宮城、四国…と、全国から集まって下さった皆様のおかげでもりあがった通訳コンベンション。また収穫をご紹介したいと思っています。