第29回 通訳ガイドの就活のワザ

通訳ガイド行脚2009.11.16

「士」のつく職業は資格を取れば安泰ではなく
顧客開拓が大変

今年も通訳案内士の国家試験が終了し、あとは天に運をまかせて合格発表の日を待つのみという人が全国にいらっしゃる時期となりました。試験から発表までに2ヶ月近くあるので、合格された方の中には「結果を待っている間にそれまでにつめこんだ知識や情報が頭から抜けちゃいました」とおっしゃる方が毎年見られます。せっかく詰め込んだ知識を忘れ去ってはもったいないので、発表待ちのこの間にいつでもチラッと見れば思い出せるような現場で見やすいトラの巻づくりができるといいですね。

合格したら、まずはNPOのGICSS研究会他で開催されている新人実務研修を受けて、知識を自分のガイド技術に反映できる訓練を積みましょう。そして自信を得てから営業に出るわけですが、その時のヒントをご紹介したいと思います。「エッ?合格したら半自動的にお仕事がどこかから紹介されるんじゃないんですか?」という方がいますが、とんでもありません。物事そう楽ではないのです。実際、税理士さんでも弁護士さんでも、とかく「士」という文字のつく職業は、資格を取ればすぐにフルタイムで就業できる人ばかりではなく、仕事を獲得するのがむしろ難しいのが現実です。安定すればラッキー、お客さんをみつけるのに努力と時間が要るのです。

履歴書、実務経歴書では通訳ガイド的に
プラス志向でプレゼンするのも一つの方法

通訳案内士の場合、営業に必要なものは履歴書、実務経歴書などです。私も立場上多くの履歴書を目にしてきましたが、まず驚くのは未記入の欄があるまま提出する人が多いことです。たとえば書類に記入した日付、捺印なしのもの、写真が貼付されていないものなどは全体の30%くらいに及びます! それだけでいくらかいい加減な性格であるような印象を与えかねません。加えて、写真がないと採用担当者の記憶に残りにくいですから大きなデメリットになります。くれぐれも自身が「商品」なのだということを忘れないようにしましょう。商品の外観を確認せずに買ってくれるお客さまがいたとしたら、無頓着なのかよほど切羽詰まった状況なのでは?と思ってしまいます。

履歴書や実務経歴書は、それをどんな相手に提出するのかによって書き方を変えて良いのです。正式に雇用契約や所属契約を結ぶような場合にはその人の実情を把握していただく必要があるので、学歴もすべて固有名詞を使い、生年月日も実務経験も正しく記載する必要があるでしょう。しかし、個人情報を保護するご時世では、単に「ガイドさんのプロフィールが知りたい」という顧客に対しては正直にすべてをさらけ出す必要はありません。

たとえば、住所は「京都市内在住」でOK。ガイドの自宅からお客様の滞在するホテルまでの時間や交通費を気にする相手ならば「東京都練馬区在住」程度の記載で十分です。学歴は最終学歴だけでよいし、知名度の高さをアピールしたい場合を除いては「昭和○○年、○○○大学○○学部卒業」と書かなくても、「東京都内の私立大学文学部を卒業」という表現法でもかまいません。年齢も実際よりも若く見える人も多い昨今、具体的に実年齢を伝える必要はなく、たとえば「40代」にしておく。派遣会社などが通訳や通訳ガイドさんを旅行会社やお客さまに紹介する場合には、「落ち着いた年齢です」とか、それに加えて「落ち着いた年齢の(人生経験の)ベテランです」といったプラス志向になる表現を加えます。自分で自分のことを売り込むのはやりにくい時も多いですが、参考にしてみてください。

履歴書形式でリストアップするよりも、全体を数行で簡単にまとめて「大学卒業後、約○○年の精密機械メーカー企業勤務を経て、その後通訳ガイドとして活躍中…」などの大ざっぱな表記で通用する場合もおおいにあります。通訳の実務経験数が少ない方の場合は、細かく書き過ぎないほうが良いかも。例えば、「少人数の個人客からパッケージツアーの団体、また自動車業界のインセンティブツアーを○年間やってきました」といった大雑把な書き方です。新人のガイドさんはボランティアでガイドした経験もカウントに入れましょう(ボランティアか有償業務かは大きなポイントではなく、クライアントはそれよりも経験量が知りたいのです)。

中に派遣会社などが入っている場合は、その人材をいかにうまく売り込むかという意味で上手に情報をまとめて顧客に伝えているはずです。ですから、顧客から直接「履歴書をください」といわれた場合には情報が食い違わないように、中に入った会社から情報提供をしてもらうにしたほうが賢明であることを覚えておいて下さい。

ザッと背景がわかって、にこやかな明るい表情の顔写真がついていればそれが一番。そして今の気持ち、「ご希望を伺いながら誠心誠意ベストを尽くして、お客様に十分楽しんでいただきたいと思っています!」などのコメントが入っていたら、私がクライアントなら是非お仕事を依頼してみたくなりそうです。