第36回 伝統芸能「歌舞伎」に興味をわかせるガイディングのポイント

通訳ガイド行脚2010.09.16

新たに注目を浴びる歌舞伎
121年の歴史ある東京の歌舞伎座が今年の4月末で休館となり、2013年春の新館完成が待たれることとなりました。国の重要無形文化財、ユネスコの世界無形遺産である歌舞伎の愛好家には名残惜しいところでしたが、それがきっかけともなって歌舞伎はあらたに脚光を浴びている昨今です。

外国でも上演されるようになり、歌舞伎は予備知識のある外国人客も多くなりました。Kabuki is the highly stylized classical Japanese dance-drama. The individual kanji characters, from left to right, mean sing (歌), dance (舞), and skill (伎). Kabuki is therefore sometimes translated as “the art of singing and dancing.” 
から始まってさらに興味をわかせるガイディングにするにはどうしたら良いのでしょう?

歌舞伎を英語で説明したサイトも増えましたが、最近始まった松竹の “The kabuki Web <http://www.kabuki-bito.jp/eng/top.html>” にまとめられた6つの特徴ポイントはわかりやすくて参考になりました。ガイド自身が興味を惹かれる項目を選んでそれについて深く語れるといいですね。

歌舞伎をガイドする際の6つのポイント
①Broad range of acting styles
大げさな化粧や振りのワイルドなインパクトあるものから、控え目な日常の場面、また優雅な舞踊まで、演出が幅広く見る者を飽きさせません。

②Variety of Moving Stories
ストーリーが感動的で世代を超えた人気につながるのです。侍にまつわる話、愛情、復讐、家族の絆を扱ったものなど。そこに流れるのは忠誠心と勧善懲悪の心です。スーパーマンが時代のヒーローとなったのと同じく広いファン層の心を掴みます。

③All male actors
役者がすべて男性。女性よりも伝統的な女らしいと評判な「女形」という女役を演じる技術は日常からの長年の訓練のなせる技です。(female impersonated role)

④Costumes, makeup & wigs
衣装は庶民の憧れの豪華絢爛さ、「赤」は血気溢れた若い善エネルギーを表し、「青」は暗さの漂う悪者を意味すという独特のメーキャップ。それに加えて美しい鬘などには浮世絵の再現のようで目を奪われます。

⑤Dynamic stage sets
役者はどこから現れるかわかりません。舞台の下からせり上がってきたり客席後方から花道(walkway)を歩いて来たり、宙に飛ぶことだってあるのです。からくりや廻り舞台を駆使して本物の滝が現れたり、屋根が崩れ落ちて別のセットが出てきたり。娯楽に徹したサービス精神に溢れています。

⑥live music
伝統的な楽器を用いて、ストーリーの背景音が表現され、太鼓や笛を使って雷音や雪の降る様子、幽霊の動きまでも伝えます。

女歌舞伎から若衆歌舞伎、
そして野郎歌舞伎へと発展

男が女を演じるという③については、けして日本固有のものでなく、ギリシャ悲劇や中国の京劇、インド、そして英国のシェークスピア劇でも同様の例があります。

歴史的に歌舞伎は「出雲の阿国」による阿国歌舞伎とよばれる女歌舞伎の発祥時から若衆歌舞伎という少年役者だけの時代を経て、野郎歌舞伎と呼ばれる成年男子によるものに発展してきました。女性役者や少年役者の時代では “prostitution became available” という風俗的問題が派生したので幕府がそれを禁止したということになっています。が、それだけではなく、生涯かけて演技の成熟度が追求されるようになった結果でもあったのではないかと思われます。

女性のほうが女性に近い訳ですが、もともと違う者がそのギャップを乗り越えようとする技術が、見る者の期待に応える満足度を高める作品となります。宗教的に男性と女性の両性を備えていた神の存在への憧憬の意識の表れにも関係があるのではないかと、女形役者の玉三郎さんは言っておられます。

さあ皆さんはどう考えられますか?