第38回 アサーティブ表現(Assertive Expression)で言いにくいこともスムーズに

通訳ガイド行脚2010.11.16

「私は」で始まる文章で話す
通訳ガイドのスキルのひとつとして、「お客様との双方向コミュニケーション」がお客様の満足度や価値を上げるのにとても有効だということで、前回はActive Listeningや Validation、の手法をご紹介致しました。

今回は、アサーティブ表現Assertive Expressionの観光通訳ガイド現場編ということで具体的な活用方法を考えてみましょう。

物事がうまく進んでいる時にはいいんです。でもクレームを受けたり、トラブルが発生して言いづらいことを言わねばならぬ時につい私たちは“相手の気持ちを気づつけないように”と配慮して曖昧な表現をしたり、下手するとそのまま本意が伝えられないまま終わってしまう、その結果、相手の言いなりになって双方が不満足な気まずい気分でツアーが継続する…などのケースがありがちです。

そんな時に威力を発揮する強い味方がアサーティブ表現(Assertive Expression)です。人間関係にダメージを与えずに、言いにくい事も伝える方法です。実はこの方法を覚えたら日常生活にもお役立ちです。

ポイントは、「私は」で始まる文章“I”sentenceで話し、相手を責めるスタンスにならずに、相手に改善行動を促すようにすることです。

例を挙げてみましょう。

*ケース1
集合時間にルーズなお客様達に困ることがあったら、「集合時間を守ってください」だけでは「時間を守らない貴方がたが悪い、時間厳守すべきです」と相手を責めているかのように聞こえてしまいがちです。(日本交通事情等を考えれば、時はビシッと強く伝える必要もあるのですが)

「集合時間を過ぎて10分、私は皆さんが迷子になったのではないかととても心配しました。次の場所では時間通りに出発しないと新幹線に乗り遅れるかもしれないので、集合時間を守るご協力をいただけたら(私は)とても嬉しいです・・・乗り遅れると皆さんは大きな問題をかかえることになり(私は)とても困ります。」

という感じで、相手に~しろ、という表現ではなく、「私は~」という自分の気持ち、希望を伝えるのです。そしてその理由は~と続けます。

*ケース2
列車の中でワイワイキャーキャーと大騒ぎの外国人観光客に、周囲の乗客からは顰蹙の視線が…。アテンドしている通訳ガイドは今にも叱責を受けそうな雰囲気です。静かにするように注意をせねばなりません。さて、貴方ならばどう言いますか?

「もっと静かにしてください」この一言につきますね。

でもそのままでは Will (you) be quiet? とI が主語になりません。
せめて 
“I’d be so happy if you could talk in a little softer voice as other passengers look uncomfortable with the noise.
とか、
“Excuse me, but may I ask you to ~?” 
のように、純然たる命令形ではなくお願いする形にすれば、それも“I”sentenceです。

英語の敬意表現に、「You格納」という手法がありますが、Youを主語にしない文章で表現するというものです。お店で注文を取るときなど、
Do you want anything else?
よりも
Is there anything else I can do for you?
What do you want? じゃなくて Can I help you? など、
主語になるのは物や自分です。
ちょっとアサーティブ表現に共通する面があると思います。

旅館での朝食に「コーヒーが出ないなんてあり得ない!」と怒りまくる外国人客に対して、あなたならどうやって答えるでしょうか?

翌日は日光観光の予定で手配が済んでいるのに、突然「京都に行きたい」と旅程変更を希望されたりしたら?

考えられるケースの答え方パターンをちょっと練習しておくと案外助かるかもしれません。

通訳ガイドの現場は文化と文化の狭間最前線。どうやってギャップを埋めるかがガイドの腕のみせどころ。板挟みの辛さに舞台裏で涙したことのあるガイドは少なくないのです。逞しく場数を踏んで乗切り術を育んでゆきましょう。