第97回 クレームも成長の糧に

通訳ガイド行脚2016.10.06

クレームは珍しくない
「クレームが来ちゃった!」顔を曇らせ、しょんぼりがっくり気落ちするガイドさんが、最近続出しました。すべてのクレームがガイド本人にまで知らされているとは限りませんが、お客様からのクレームをうけるのは、珍しいことではありません。

特に新人時代は、未熟さを抱えたまま現場に臨むことが多いので、つねに“大丈夫だっただろうか?”という不安を抱え、“最後に客様から笑顔でハグされたので、きっと大丈夫だったと思う”と、胸をなでおろす状態がふつうです。しかし、今回のクレーム・シリーズは大ベテラン、そして3年目の慣れた通訳ガイドのケースだったので仕事仲間として驚きましたし、事実として重く受け止める必要がありました。

中堅ガイドにも思わぬクレームが…
信頼がおけると定評の中堅通訳ガイドAさんにも、最近クレームが来てしまいました。世界各国からのお客様が参加するパッケージ定期ツアーでのことです。ツアー終了後、予約を入れた海外のエージェントを通してクレームが来てしまいました。「ガイドの英語が下手」「知識が乏しく不親切」「集合時間に厳しくて、何度も“時間通りに来なかったらおいてゆくぞ”と母親のような横柄な口ぶりだった」etc.

しかし、クレームの英文自体がボロボロで、お客の英語力も怪しげです。このお客様の場合は、Aさんにも自覚がありました。客はツアー中に後方席に座り、おしゃべりをしてガイドの話をよく聞いていない、質問を投げかけてくるときには異様に長くしつこく食い下がるので、他のお客の手前もあるので不公平感のないように長い質問対応は適度に切り上げて次に進んだりしたことがあった、というものです。その後、気になったのでできるだけ気を遣って対応し、「最後は笑顔で帰っていったのに・・・」

ガイドが優秀であってもクレーマー体質のお客様にあたれば、クレームは事故に出会ったように捉えるしかない場合もあります。でもガイドは通常、真っ青になって謝り反省し、(しなければ逆に問題)ガックリやる気をなくす人、反発して怒る人、リベンジに燃える人などさまざまですが、精神的に落ち込む姿は気の毒なくらいです。

でも、そんな時は落ち込みすぎないことも大切。なぜかというとクレームは成長へのチャンスにつながる宝物だからです。そう捉えなければ損です。クレームは氷山の一角で、一番問題視すべきはクレームをしないで不満を抱えたまま去ってゆくSilent Gone! のSilent customerのお客です。ほとんどの客は衝突を避けるために諦めて苦情を言いません。何も言わずに約半数が二度と戻ってきません。逆に声をあげてクレームを言ってくれるお客様は、ガイドに改善・成長するチャンスをくれたのだと捉えましょう。

クレームを乗り越えよう
不満が出るのは、①信頼や期待を裏切られたとき、②対応の基本ができていないと感じたとき、③大切にされていないと感じたとき、④問題提起に対して十分な対応がされないとき、⑤技術や知識が不確かだと感じたとき、と言われます。

ひょっとしたら、Aさんはこのクレームによって、仕事に慣れて無意識に少し緩んでいた気持ちを、初心に帰って引き締めることができたかもしれません。集合時間厳守の言い方も、知らず知らずのうちにキツイ言葉使いになってしまっていたことを知り、英語が完璧でないお客には、もっとわかりやすい表現が必要だったことも学べました。良かれと思ってとった行動が素直に受け止められないお客様もいるのだと気づかせてくれた教師だったと考えたら、気持ちが楽になるのではないでしょうか。

クレームもたくましく乗り越えて、一段階さらに熟練した通訳ガイドに育ってゆくのだなあと実感です。頑張れ~!

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