第42回 震災を通して見えてくる通訳ガイドの仕事 [2011年4月]

通訳ガイド行脚2011.04.16

日本人の真価が問われる事態
絆を深めて復興をめざそう

歴史的な震災により日本は世界中の注目を浴びる被災地となってしまいました。被災された方々には心よりお見舞いを申し上げます。

その時、あなたはどこで何をしていましたか?
皆様のご無事をお祈りしつつ、プロとしてはこの歴史的な体験も後日、経験談としてガイドトークに加えられるほどの客観眼を持つべきだと思います。地震、津波、原発、リスクマネジメント、そのすべてが来年以降のツアー現場で語られる重要な話題の一つとなるでしょう。映画の一場面化のような帰宅難民で溢れた首都圏、サッカー戦やかつてのジョンレノン博物館がメイントピックだったさいたまアリーナは、避難所として活用されたという歴史が刻まれました。買占めパニックで日本中の流通が影響を受け、諸外国からの救援隊、救援犬の来日や救援物資や励ましのメッセージは私たちの心に響きました。日々起こっている事象そのものが体験者だからこそ語れる真の声として、聞く者にはインパクトが出るはずなのです。窮地における日本の真価が問われる事態ですが、人々がどんな苦労を乗り越えてそこから復興したのか、伝統の美だけでなく、現代の日本人の力や素晴らしさが将来語れるようになりたいものですね。世界の人々に「勇気を与える観光力」に発展してもらいたいです。

その時ツアー中で外国人を引率していた通訳ガイドはどんなに大変だったことでしょうか。地震が起きるのがあと一週間遅かったら春のシーズンに突入して、おそらく倍近い数の外国人観光客が旅行中だったかもしれません。
原発事故や余震の続く震災は終結のめどがつかず、在日外国人達が一斉に日本から離れてゆき、海外からの来日予定はほとんどがキャンセルという異常事態になりました。ビジネスの通訳業務でさえも、企業の取引先が来日を見合わせ、延期…などでこの2、3週間はバタバタしています。国際会議やイベントがキャンセルになれば自動的に通訳も通訳ガイドもキャンセル、しかもこういう場合はキャンセル料はもらえないのが慣例です。

今までも世界的テロや戦争や、伝染病などが派生するたびに旅行業界は打撃を受け、「旅行は平和産業だ」を実感してきました。が、日本が大震災事故の現場となって風評影響もふくめてここまで壊滅的なことはありませんでした。通訳ガイド達は、突然に仕事を失って戸惑いの気持ちを隠せませんが、復興を遂げた暁には今までの倍の観光客が戻ってくると信じて頑張りましょう。さまざまな意味で日本人が評価され、注目の的となっていることをバネにして今までよりももっと素晴らしく輝く観光地に蘇らせなくてはいけませんね。

こんな時には、無事であることを感謝し、たくましく、不断できない自己研鑽や下見などをする機会としましょう。一人だけだと意識も弱くなりがち。所属するガイド組織や仲間達との絆を強めて共に勉強したり練習を継続できるといいですね。反対に未知の世界に首を突っ込んで視野を広めたりする絶好の機会でもあります。

一丸となった通訳ボランティアの派遣体制が実現
通訳ガイドとしてできること

ところで、震災後4日間で、全国通訳案内士団体「東北地方太平洋沖地震」対策チームが結成されました。声明文も発表され、JNTOのHPなどに掲載されています。海外から来日する救援隊に対してや、空港や案内所などの要所で、外国人向けに情報発信の通訳ボランティアを派遣する体制で、全国15の通訳案内士組織によって結成されました。ガイド組織が統合した形で活動することは今まで何かと難しかったのですが、この非常事態には即刻一丸となった初体制実現が驚きでも有り、意義ある嬉しいニュースでした。遠隔地派遣費用にあてる費用の募金活動も始まりました。最初は中国語や韓国語、そしてロシア語などのニーズがありましたが、外国人が急に見当たらなくなってちょっと拍子抜け状態という事実もあります。しかし長期化が見込まれるので、この体制はきっと様々に活きてゆくことでしょう。

地震直後から通訳ガイド達のもとには、過去にお世話をしたお客様達から多くのメールが届きました。

”You’ve done a lot to us while we were in Japan. It’s our turn to help you. Just tell us whatever we can do to support Japan.”
“We’re always with you. You are our family member and I am so worried. Hope you and your family, friends are all safe and alright.”
“Tell us the best place to send money to. We have collected a small fund from all the members who joined your tour last year.”

こんなにも私たちのことを覚えていてくれたのか!胸が熱くなる瞬間です。政治や経済だけではなく、観光を通じて世界の人々との心がこうやってつながってゆくのが素晴らしい通訳案内士の世界です。

次回は、観光立国日本復興の日を目指して、有料でもボランティアでも活用できる観光地でのガイド実践売り込み作戦必勝法をご紹介したいと思います。