第45回 外国人に圧倒的人気の「ninja」について知っていますか?

通訳ガイド行脚2011.07.16

案外知らない忍者の虚像と実像
インターネット検索で6,600万件、5,600万件と出るのはsushi、samuraiという国際語。そこで1億5000万件もヒットするというninjaは、映画やアニメなどで昨今知名度が急上昇しています。カラオケと並んで現代日本の代名詞になっているとも言われます。家族旅行で来日した外国人観光客の子供から“Tell me about Naruto.”と言われ、鳴門海峡の渦について熱弁した通訳ガイドさんが、客から怪訝な顔をされて焦ったことがあると聞きました。あ、私もヤバイかも?!ナルトとは忍者アニメ『NARUTO-ナルト-疾風伝』の主人公の名前です。外国人観光客から忍者について質問されたり話題があがっても、案外私達は忍者の虚像と実像を理解していないのではないでしょうか。忍者情報のアップデートが必要かも。

忍者の里といわれる三重県伊賀上野で、伊賀流忍者集団「黒党(くろんど)」代表の忍者研究家の黒井宏光さんから忍者の正しい姿についてお話を伺う機会がありました。解説によれば最初にしのび(志能便)忍者を雇用した記録があるのは何と聖徳太子の時代からです。

子供の頃からの訓練によって格闘術から、剣術、情報収集術、心理術、侵入術他に及ぶ超人的、エリートアスリート並みの身体能力やと薬学、火薬など当時の先端技術や情報知識を駆使した忍者は、時代によってその主たる役割が変化してゆきました。

最初は戦闘部隊としての活躍です。戦国時代の鉄砲部隊も火薬に詳しい忍者が携った例が多かったようです。本能寺の変の直後、信長と連盟を組んでいた徳川家康を東国へ逃がすサポートをしたのも忍者(伊賀越え)だったなどの史実を聞くと、歴史が変わった要所、要所にはどれほど忍者の存在が大きかったことかがわかってびっくりです。国のために名もなき影働きで歴史を動かした忍者の精神は崇高だと黒井さんはおっしゃいます。

そして時代が安定してゆくと忍者に期待されるのは情報収集で、人から怪しまれないような職業に身をやつして全国を廻りました。山伏修験者( monk who leads an ascetic life in the mountains)、虚無僧(mendicant Zen priest)、出家(priest)、商人(merchant)、猿楽師(trip entertainer)などです。どれも時代劇になくてはならない姿ですね。観阿弥、世阿弥、そしてあの松尾芭蕉までもが忍者だったかも?という説がありますが、道徳教育に基づいた武士道と比べると下賎な忍者のイメージのためでしょうか、現在は否定論が優勢です。

こんな身近なところにも忍者の名残が
忍者を管轄した服部半蔵の屋敷があったことから、皇居には半蔵門の名が残り、不忍池、四谷伊賀町、新宿百人町(百人とは幕府の鉄砲組の住居の意味)、甲賀坂などの忍者由来の地名が残っており、赤坂、青山の地名も実は江戸城下を整備した大名、藤堂高虎の領地が伊賀であったためと考えられているそうです。突然、親近感を覚えさせる事実の登場ですね。

忍術the art of the ninja / the art of concealment and espionageについては、虚像と実際のギャップが多くて興味深いところです。たとえば忍者とは切っても切り離せない手裏剣ninja star/ throwing knifeは実は大変重いので、常時携帯していたのではないなどを知るとちょっと戸惑いさえ感じます。是非、機会があったら勉強してみると面白い発見があると思います。ウソをガイドしちゃいけないな、と私も不勉強を反省。

ところで、ninjaは、007ほどはカッコ良くないし女性にももてない日本版!?とも言われますが、国の情報合戦でスパイに従事する者は現代の忍びの仕事人とも言えますね。イギリスのMI6、アメリカのCIA、旧ソ連のKGB、イスラエルのモザードなどに匹敵するのは、日本では約170名が特殊任務についている内閣情報調査室CIRO(サイロ、Cabinet Intelligence & Research Office)ではないでしょうか、、、と研究熱心な通訳ガイドのFさんが紹介してくれました。専門家の黒井さんによれば、「一番ninjaイメージに合っているのはアメリカ陸軍特殊部隊「グリンベレー(Green Berets)」なんです」とのこと。世界からのお客様に親近感を持っていただけそうなおもしろい比較情報でした。