第47回 団体客ガイド時に心得ておきたいマナー意識

通訳ガイド行脚2011.09.16

通訳ガイド研修での一例
大震災で外国人観光客の足が途絶え、業界は低迷ムード。歴史的に捉えればこれは一過性のものでしょうが、なかなかすぐに復活というわけにもゆきません。そんな厳しい情勢の中で多くの通訳案内士達は、“今は自己研鑽の時期、今のうちにできるだけ勉強をしておこう”と考え、数多くの各種研修が開催されています。

都内の一流デパート内でこんなことがありました。日本人の団体が筆記用具を片手に店内を歩きまわり、リーダーによる声高の説明を聞いてメモを取り写真を撮ったり、陳列してある商品を手に取ったりしていたのです。店内は込み合った時間帯ではなかったので他の一般客に迷惑がかかったわけではありません。しかし、逆にその団体の存在や行動は異様に映って目立ちました。それに気づいたデパート側は、即座に担当者がかけつけてその団体に事情を尋ねる事態となりました。それは某研修会のプログラムの一部として、著名一流店の現場を訪れながら研究するグループだったのです。研修責任者がかけつけて対応し、事なきを得たのでした。 事前に現場の担当者に許可を得た上での現場研修の行動であれば問題はなかったはずですが、主催者やプログラムを企画して実施する講師のマナー意識に問題があった事例です。

観光客に求められる行動を説明できるように
通訳ガイドは団体客を引率する立場になることが多いのですが、私たちは一流店舗や格式のある施設内に出入りする場合のマナーをきちんと心得ているでしょうか。「カーペットの敷いてある場所では走ってはいけない」と通訳ガイドの先輩から教えられたことがありますが、カーペットの有無に拘らず、ホテルでもレストランでも一般店舗でも、高級なムードが漂う場所では団体行動というのは必ずしも歓迎されないことを知っておくべきです。大声で騒がない、他の客の迷惑にならぬよう粛々と、その場所を占領するようなことのないようお客様の誘導をしたいものです。買い物や食事など通常の動き以外に特別の活動予定がある時には一言その場の責任者に事前説明をしておくことでリスクは回避できます。お客様の前で通訳ガイドが注意を受けるような無様なことにならないように注意しましょう。

主要な神社の拝殿などで係員から「写真を撮ってはいけません」「大声で話してはいけません」「もっと縁のほうによって中心の場所をあけてください」などと団体の観光ガイドさんや添乗員さん達が注意をうける場面にしばしば遭遇します。これは一流高級という意味合いではなく、もちろん拝殿の宗教的、敬虔な気持ちが尊ばれる理由で期待されている言動です。

その場を訪れる観光客にはどんな行動が期待されているのか、その場で働く人々の気持ちを知った上で、単に「静かにしてください」とか「そこに腰掛けないで下さい」ではなく、なぜそこでは静寂が必要なのか、なぜ腰掛けてはいけないのか…などを説明することが、日本の心を伝える、ガイドするということになると思います。つまり「ここは教会の中にいるのと同じなのだ」と。理解できれば自然とその場にふさわしい行動になるのではないでしょうか。観光客でごったがえす京都の金閣寺でもワイワイ大騒ぎする客よりは、ほんとうは静かに自然美を愛で、真摯な宗教心で拝観する人々で賑わって欲しいと感じているのではないかと思います。

現場の人々にも配慮を
築地魚市場などはプロ達の真剣勝負の仕事場です。機材が行き来するので危険な場面もあり得ます。なので物見遊山感覚の観光客の姿を見る現場関係者の中には、築地に見学者を入場させるのは反対という声もあがります。ハイヒール着用、幼児をベビーカーに乗せて来場、それらは現場の仕事人の気持ちからしたら排除したいのもわかります。ついつい見学者に対して不愛想になったとしても一概にしかたがないかなあと感じてしまいます。

通訳ガイドとして、特に団体客のお客様を引率する場合には、個人客の時にない別の配慮を心がけましょう。他の一般客の迷惑にならないように動いているか?現場の方々の好意で見学させてもらっているのだという意識を持つ。それでも「注意したのに迷惑がかかってしまった」という時には、dual performance という異文化間コミュニケーションのスキルを発揮して乗り切りましょう。お客様に 対しては笑顔でテキパキと適切に注意を促して誘導を行い、迷惑そうなその場の担当 者に対しては、いかにも、“申し訳ない、すみませ~ん”という意思を表情やしぐさ で伝え伝えるのです。そう、文化の溝を埋めるのが通訳ガイドの役目です。