第57回 客観的な視点でガイドされてみる~台湾でのガイド研修

通訳ガイド行脚2012.07.16

通訳ガイドの技術をグレードアップさせるために、様々な研修が開催されています。しかし、目から鱗が落ちるようなインパクトある方法のひとつに、ご自身がガイドとは逆の客の立場となり、ガイドサービスを受けてみる方法があります。それも国内ではなく、観光業界で世界の競合相手である外国で、評判の高い観光ガイドさんとは一体どのようなサービスを提供しているのかを知ることは大きな効果が期待できます。

台湾のカリスマ通訳ガイドの
ツアーを体験

国際観光に近年とても活気のある台湾で、地元のカリスマ通訳ガイドさん2名のサービスを体験してきました。
荘さんは、70代とはとても見えないほど颯爽とした動きで、機敏。かつどんな時にも的確な判断でお客様を誘導し、ほぼ完璧で明確な語りでお客様の心を捉える女性の日本語ガイドさん。政府から優秀人材として表彰を受けています。もう一人は、HarrisonLeeという英語名を持つ楽しい男性英語ガイドのLeeさんです。彼は、全国の即興スピーチコンテストで優勝した時のパフォーマンスがYou Tubeにもアップされている有名なガイドさんです。

荘さんの日本語はすばらしく、ほぼ日本人と同等な話しぶりです。敬語は一般の日本人よりも丁寧ではないかと思わせるほどの完璧さ。そして日本人観光客を案内するのに慣れているのでしょう、私達の文化をよく心得ていて私達の頭にふと浮かぶ疑問点について質問をされる前に次々と説明をしてゆきます。時に流行のギャグ的な表現も入っているので、そういう勉強熱心さが伝わってきた時に、新鮮な感動を覚えます。

そうです、窓外の景色を楽しむのと同時に、ガイドさんの人となりそのものに客のアテンションが向けられることがわかりました。客の心理には、「自分のガイドは素晴らしい人であって欲しいが、さてどうだろうか?」という潜在的な不安と期待がありますが、不安や心配がかき消され、希望がどんどん叶えられてゆくことに大きな満足感を得るプロセスを実感したのです。到着の飛行機が1時間も遅れてその後の予定に影響が出たときも、スケジュールや各種手配をテキパキと調整してこなす姿には安心感を覚えます。最初の1~2時間でガイドさんのおおよその評価が出てくるようです。
翌日はLeeさんの英語ガイドを堪能しました。英語ガイドの場合には日本でも、お客様に親しみやすい英語のニックネームをprofessional nameとして使用するガイドが少なくありません。私はたまたまYokoという名前が単純でわかりやすく、またYoko Onoのお陰で全世界的に馴染みやすい名前なのでそのまま使っていますが、それでも時にYokieなんて呼ばれてしまうことがあります。カズエさんの場合はCathyとか、健太郎さんはKenとか名前の呼び方ひとつについても文化に合わせて工夫が必要ですね。

Leeさんも英語はほぼ母国語レベルの素晴らしさです。そしてまさにエンタテナーそのもので、トークはポイントが明確でわかりやすくドラマを見ているかのような表現豊かさで聞く者をひきつけてゆきます。相手に合わせたジョーク頻発で、笑い声が絶えません。英語のジョークで成功するのは難しいという定説もありますが、彼のジョークは恐らくお客様から学んだネタも蓄積されていたことでしょう。日本で私がアメリカ人のお客様から聞いたことがある同じジョークが出てきた時には思わず、「おお!同業者!」という喜びで心の中で笑ってしまいました。
郊外の山の中に見えてきた豪華な建物を指差して、
“That’s a hotel, a religious hotel.”
“・・・?”
“Guests say, oh, my God, it’s so beautiful. And when checking out at the cashier they say, Jesus Christ, it’s so expensive!”
こんな単純なジョークで一瞬にしてバスの中が爆笑の渦です。いろいろ応用が利きそうですね。もう一つご紹介しましょう。バラエティに富んだ食材についての説明をした後で、
“Yes, we eat anything. Everything with four feet except tables and chairs, everything that flies in the air except airplanes, and everything in the water except submarines.”
たくさんのジョークを引き出しに持っていて、話題ごとにジョークをふりかけ、ガイド料理にスパイスを効かせて仕上げます。

サービスマインドは海外でも共通
荘さん、Leeさんの二人に共通していたのは、語学はすべて自国内で学んだということです。日本語は男女別の表現があるから女性らしい文章になるようにと注意してくれた、日本留学経験のあるお兄様から日本語を学んだ荘さん。何度も何度も繰返しテープを聞き返して台湾の歴史なども英語で暗記して覚えたLeeさん。
お二人の姿を見ると「もう年だから」や「留学経験がないから」は理由にならないと思いました。

音の出る鳴り物の小物を使ったり、静寂が必要な場面では羽根の付いた派手な色の扇を振りかざしてグループのメンバーを集合させるなど、楽しそうに工夫してツアーを運営してゆく姿は、日本でも海外でもガイド達は同じような知恵を出して頑張っているなあと共感を覚えるところでもありました。

外国ではなくても、国内各地で有償無償のガイドサービスがあります。夏休みの旅行で試してみるのはいかがでしょうか。客観的な視点でガイドされてみることを是非お薦めしたいと思います。