第61回 IMF世界銀行年次総会の裏で活躍した通訳ガイドたち

通訳ガイド行脚2012.11.16

今年の秋、日本では48年ぶり、世界最大級の国際会議と言われるIMF世界銀行年次総会が10月に東京で開催されました。多くの通訳者や、通訳案内士、ボランティア、旅行関係者が様々な形で陰で日向で活躍をすることとなりました。開催期間中の東京の中心部は、世界からの金融の分野での大臣級の要人が訪れるということで、主要なホテルはすべて満室、厳戒態勢で会場となるホテルや東京国際フォーラムでは、IDカードがないと敷地に立ち入ることもできない、近隣地域では車両の通行も規制されるという異常事態。一般の観光客は「できればこの時期の首都圏への来訪は見合わせてください」とまで言われる側面もあったようです。

大きな国際会議は貴重な経験と実績に
競争が激しいので応募はすばやく!

さて、私のところにスタッフ派遣の要請が来たのは8月に入ってからのことでした。忙しい秋のピークシーズンにこのイベントの為にスケジュールがあけられる人、それも国が絡む公のお仕事なので報酬予算も厳しいため、まさに国の事業に“ご協力くださる人”を80名、10日間で確保するのは大変でした。

まずGICSS研究会など、信頼できる通訳案内士組織や観光ガイドボランティア組織に協力を要請することになりました。情報収集という点ではやはり何らかの組織に属しているということが重要です。
応募者から提出された履歴書、経歴書を見て人選が進みます。
そんな時に必要なことは:
●データで履歴書や実務経歴書がパッと送信できること
●応募用に添付送信する顔写真のjpgファイルが用意されている、または急遽撮影した写真をパソコンで読み込んで送信できること

募集記事はメールで届きます。見たら即、遅くても3日以内に募集事務局に書類が届いているといいですね。早くからすべての書類を揃えてパッと応募してきた人の印象は強く残るものです。もちろん郵送でも良いのですが、“仕事のできる人は常時、応募できる体制ができているんだなあ”と感じたことです。

面接時、最初に全員で説明を聞くときには是非、明るい表情で、聞いたことには、「うん、うん」とうなずくような感じで反応をすると良い印象が残ります。案外、待ち時間にどんな表情でいるのかと、その態度を選考者は見ているものです。

採用不採用の結果を見ると、イベントの主要日程、そしてその近辺の土日(土日に観光エクスカーションに出かけたりすることが多い)に就業できない人は不採用となる確率がぐっと高いようです。結構、一ヶ月前ぐらいまで採用不採用の決定通知が来ないことがあるので、予定が立たず、じっと我慢の人たちも多かったはずです。

大きな会議は、その仕事をしたというだけで経歴に意義ある実績となりますから希望者も殺到。首都圏しか交通費が出ないとわかっていても、交通費や滞在費は自己負担で愛知、栃木、関西、広島などからも応募がありました。日当がほとんど手元に残らないぐらいの覚悟で来られても、引き換えにピカピカの実績と就業体験から得た自信を土産に出身地に戻られた方も多いはず。そこまでの意欲は安定と安心感をもたらし、採用の確率も高いかもしれません。

●宿泊施設は自分で探すこと
●収入よりも業務体験を優先する意向を伝える
会議通訳者とはことなる一般業務では、こんなことも評価を高めるポイントになりそ うだという印象を受けました。

国際会議の周辺で必要とされたさまざまな業務
では、実際にどのような業務を依頼されたのでしょう:

・会場やホテル内でのエクスカーション受付デスクスタッフ
—パソコンや貸与される携帯電話の扱いに戸惑ったりすると不合格。テキパキとした動きが期待されました。

・観光(スカイツリーや都内の庭園、着物やお茶の文化紹介、デパ地下巡りほか)のツアー添乗業務、各スポットでの誘導業務
—添乗業務については旅程管理主任者資格を持っている必要があります。一般の観光ツアーと異なり、主催者関連組織の担当者が同行監督されるので、気を使う現場となりました。でも各国からのお客様達はとても理性的な方々で、日本は素晴らしいと、喜んでくださいます。その笑顔を見て「今まで生きてきて良かった」と呟いた旅行会社の社員の方がいましたよ。

・空港、駐車場、シャトルバス担当
—早朝から深夜まで超長時間の作業となった現場もありました。ホテルに泊まり込んでの作業ですが、待ち時間にどう体を休めるか、そして交通渋滞などの予測不可能な部分にどう対応するかの判断力が問われるところです。チームワークで乗り切れました。

・銀行関係要人の移動のサポート
—会議や夜のレセプションなど参加予定は、その時にならないとわからないというVIP待遇客に合わせてハイヤーを手配し、乗せこんだり、同乗してエスコートをします。高級ホテルでの仕事なので焦らず優雅に、しかも難題を解決してゆくセクレタリーのような一面もありますね。大変な仕事ですがお客様に気に入ってもらい、最後には花束までもらったという人もいましたよ。

現場の舞台裏は怒涛の日々でしたが、終了したら皆さん充実感でいっぱい。お客様が日本について良い印象を持って帰国の途につかれたことが何よりです。通訳案内士、そしてそれを目指す方々には、観光のガイドだけではなく、PCの技術や現場知識を重ねて幅広く活躍の場を広げていただけると良いなあと思います。