第66回 行ったことのない場所のガイドをすることになったら?

通訳ガイド行脚2013.04.16

通訳ガイドの仕事では、突然、自分が行ったことのない訪問地をガイドすることになって慌てる場面に出くわすことがあります。焦ってパニックになってはプロのガイドとして務まりません。そんな時にはどうしたら良いのでしょうか?

通常は事前に観光ルートが知らされるので、旅程に初めての場所が含まれていればできる限り下見に行ったり、インターネットや雑誌などからしっかり情報を得て現場に臨みます。

しかし、突然大雨が降って来たり、交通の渋滞に巻き込まれてスケジュールが狂ったり、逆に時間が余ったり、気まぐれなお客様の希望によって…ツアーは想定外のことがたくさん起こると思った方が良いでしょう。私も若い頃、初めての北陸ツアーの現地で、急遽山代温泉付近のお寺に立ち寄ることとなり、超焦ったことがありました。幸いバス2台口だったのでもう一台のバスを担当する先輩ガイドに半分泣きそうになりつつ、その場で2~3分のアドバイスをお願いしたことがありました。

ざっと情報を仕入れて腹をくくる
「行ったことがありません」
は、特殊な場所を除いてはお客様に対しては言わないほうが良いです。(依頼を受ける旅行会社やエージェントに対しては正直に申告した方が良いですが)
「訪れるのはすごく久しぶりです」
ぐらいがせいぜい。そしてお客様の目を盗んで、ネットで調べるなりして急にゆくことになった訪問地の情報を検索しましょう。
ざっと理解できたら、あとは腹をくくります。何十年か日本の文化で育ってきた自分の良識・常識に自信を持ち、わかる範囲内で堂々と説明をします。

行き先が寺や神社ならば、そんなに難しいことはありません。その場所の一番のセールスポイントだけを頭に入れましょう。バスの運転士さんなどにこっそり尋ねてみることもできますね。「蓮如が袈裟掛けをした有名な松がある寺」だったら、“○○世紀に、仏教の著名な僧侶が立ち寄ったために有名になった寺で、素晴らしい松の木があります”と、最低限これだけは伝え、どれがその松なのか(これは行けばだいたい表示があるのでわかる)を見せてあげましょう。到着する前に、あるいは境内を歩きながら、禅寺なのか密教なのかなど宗派の概要を説明したり、山門や仏像の話、庭園の話、仏教建築の話、瓦の話、おみくじや線香、香炉など、その場で目に触れるものについて(自分が知っていることについて)どんどん話をしてゆきます。

神社ならば、その神社の由来はもちろんですが、基本的な鳥居の話や、手水者、拝殿、賽銭箱などこれも目に触れるものを取り上げて一般的な話でつなぎます。基本論はどこのお寺でも神社でも同じだからです。基本情報はガイドを始めるための必須事項ですから、これは日頃から練習を重ねておかねばなりませんね。

もう一つ気になるのは中に入ってからのルートです。不安な場合には、拝観券や入場券を買う場所の付近、あるいは自動販売機のある駐車場などお客様がばらけず時間がつぶせる適当な場外の場所を見つけ、
「ちょっと拝観券の確認などがありますので、皆さんここで待っていて下さい。5分で戻ります」
と、お客様に待っていてもらう方法もあります。お客様の視野から出たらガイドさんはピューッと一目散、5分間以内で中を一周して下見に走ります。ざっと雰囲気がわかればお客様のところに走り戻り、余裕たっぷり、いかにもよく知っているよと言わんばかりに
「お待たせして、ごめんなさい。では、さあ行きましょう」
と先導します。お客様は、一瞬アレ? と思っても自信あふれた案内ぶりを見れば安心されるでしょう。

まあ、これは万が一そういう突発なことがあった場合の応急対処法です。頻繁にあっては困りますね(笑)

通訳ガイドは誰もがヒヤヒヤを何度か経験して逞しく育っていきます。