第67回 春のツアー現場レポート~京都の観光ツアーに参加

通訳ガイド行脚2013.05.16

外国人観光客で賑わう春、京都で大手旅行会社による外国人向けのパッケージ観光ツアーに乗る機会がありました。半日で平安神宮、三十三間堂、そして清水寺を廻ります。集合してからバスに乗るまで「今日はどんなガイドさんが案内してくれるのだろう?」という、ワクワク感を覚えました。そうか、お客様からのこんな期待感に応えることになるのか!あらためて新鮮な認識です。

エピソードを交えて魅力的に紹介
バスの入り口では、物腰の優しい感じの男性ガイドさんが名前と座席番号の確認をしていました。にっこり笑顔に安心感が広がります。いざ、決められたバスの座席につくと、その日は連休中ということもあるのか満席の盛況でした。

男性ガイドKさんは、自己紹介から始まって最初の訪問地に着くまで密度の濃い京都案内のガイディングをされ、私たちは次から次へとお話に引き込まれてゆきました。西本願寺の前を通ると、浄土真宗を開いた親鸞は仏教のそれまでのしきたりを破って結婚をしたり、菜食主義ではなく肉食をしたユニークな僧侶であったなど興味深い紹介がありました。そういったエピソード側面の紹介はガイディングをカラフルに色づける効果がありますね。

宗教は押しつけないよう注意!
「南無阿弥陀仏」と唱えるだけで死後、阿弥陀の楽園に導かれて救われるという教えを説明したとこまでは良かったのですが、「さあ、皆さんも一緒に言ってみましょう。“な・む・あ・み・だ・ぶ・つ”…」とレッスン?が始まった段にはちょっと抵抗を感じてしまいました。平均的日本人としての仏教徒の私でさえそうだったので、他宗教のお客様にそれを言わせるのは敬遠される危険性があります。神社やお寺で拝殿の建物の中に入る際でも「私は別の宗教を信じているので私の神が許してくれない」と、遠慮される場合があるくらいだからです。面白かったな、という印象でとどまればそれも印象に残って良しかもしれませんね。

ガイドが必ず話さねばならない天皇と将軍の違いの説明については、Kさんの明快なガイディングが素晴らしかったのでした。天皇が住まわれた京都御所、将軍が建築した二条城は京都市内で必ず目にする観光地です。歴史的な推移をご説明したあとで、Kさんはこんなふうにしめくくりました。
「天皇と将軍は、いわば日本の典型的な夫婦の形と似ています。つまり日本では夫がトップ、妻は夫をたてて3歩下がって歩きます。でも日常生活の実権は妻が握っているのです。」
なんとわかりやすいコメントでしょう。そして、同時に日本の家庭生活や夫婦のあり方をも垣間見させる手法に大笑いしてしまいました。外国人のお客様達もニンマリ表情です。これはいただき!ですね。

そして訪問地に着いて駐車場でバスを降りる時に、Kさんは「同じようなバスがたくさん止まっているので、必ず間違わずにこのバスに戻って欲しい」と案内をしました。
“This bus is painted in red and white. The combination of red color and white color represents a happy celebration. So, this is a happy bus and I am a happy guide.”
ここでも紅白の意味する日本文化情報がユーモラスに提供されました。私はハッピーガイドです、というセリフにはバス内が大笑いで包まれました。それまでのガイドさんに対する好感度が一気に溢れ出たようです。その時点で楽しいツアーの成功が感じられました。

英語については、日本人のガイドさんは真面目さゆえでしょうが、たとえばat, in , onなどの前置詞や、bookedなどの過去形の最後の [kt] の音を強調して発音してしまいがちな方が多いようです(Kさんがそうだったというのではなく)。終日聞いていると案外そんな発音部分が耳障りになってしまったりしていないかな?と感じることもよくありました。けして英米英語が至上でジャパニーズイングリッシュが悪いという考えはありません。それぞれの国の英語カラーがあっても良いのです。でも全体として、誰にも伝わりやすくスムーズに伝わる標準言語に近いガイディングであると見違える上質さになるなあと思います。春のツアー現場からのレポートでした。